第16話 口が滑った
ふゆきの弁当を食べるのがいっぱいいっぱいで、持参した弁当を余してしまった。
真優は弁当の残りを確認すると、不安そうな表情を向けてきた。息子の弁当が空とあっては、落ち着いてはいられないようだ。
「巧、どこか悪いところはないの?」
「これといって問題はないよ」
腹痛はするものの、他に問題は見当たらなかった。
巧はおなかを抑えたからか、真優はある場所に行こうと言い出してしまった。
「お医者さんに行こうか」
「問題ないから・・・・・・」
真優は弁当を指さす。
「弁当を一口も食べられないほどの腹痛だというなら、かあさんはとっても心配だよ」
自分の部屋で食べようとする前に、母に見つかる。それゆえ、弁当を処理する機会を失った。
「ガールフレンドが、お弁当を作ってくれたんだ。それを食べていたら、自分の分は食べられなくなって・・・・・・」
ふゆきの弁当は、あきらかなオーバーカロリー。胃袋が食べ物を処理できず、夕食まで何も食べられない可能性すら残されていた。
ガールフレンドという言葉に対して、真優は過剰に反応する。
「巧にガールフレンドができたの。一度でいいから会ってみたい」
真優は興味津々らしく、顔面を大いに近づけてきた。
「かあさん、顔が近いよ・・・・・・」
真優の口から思い付き発言が飛び出す。普段から深く考えていないのか、適当な言葉が多い。
「ガールフレンド記念で、焼き肉にしようかしら・・・・・・」
「かあさん、食費の管理はきっちりとしてね」
真優はずぼらな性格で、金銭管理を苦手とする。食品を半月ほどで使い果たし、父に迫るところを何度も見てきた。お金をせびられるたびに、父は不満そうにしていた。
「今日くらいは問題ないよ。焼き肉にしようよ」
「ガールフレンドの弁当が多すぎて、夜を食べられるのかどうかもわからない」
「ガールフレンドさんは、すごく太っている人なの?」
「ううん。とっても痩せているよ」
真優は悲鳴に近い声を出す。
「ええ~。そんなに食べているのに、ガリガリなの。おかあさん、信じられないんだけど・・・・・・」
小食でありながら、痩せる気配はまったくなかった。体質によるものなのかと思っている。
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