第12話 ふゆきと登校

 待ち合わせ場所にスタンバイしていると、肩をポンと叩かれた。


「巧さん、おはようございます」


「ふゆきさん、おはよう」


 私服姿も素敵だけど、制服姿も素晴らしかった。ふゆきはどんなものを着ても、魅力をアップさせられる。


「転校初日ということもあって、とっても緊張しています」 


 新しい学校に足を踏み入れるのは、ものすごく緊張する。転校した経験がなくとも、どんな心境なのかは伝わってくる。


「男の人と登校するのも初めてです」


「僕も異性と登校するのは初めてだ」


 ひとみと交際していたとき、一度も一緒に登校することはなかった。他の男との時間を確保するために、適当な理由をつけていたと思われる。


 ふゆきは頭を下げる。


「昨日はありがとうございました。おかげさまでいい思い出になりました」 


「それはよかった・・・・・・」


「ぬいぐるみのお礼として、お弁当を作ってきました。たくさん食べて、エネルギーをつけてくださいね」


 自分のために、女の子が弁当を作ってくれる。都合のいい夢を見ているのではないかと思ってしまった。


「ふゆきさんのお弁当が楽しみだよ」


 ふゆきはくすっと笑った。


「たくさん作ってきましたから、残さずに食べてくださいね」


「わかりました・・・・・・」


 どんな弁当を食べられるのか。昼になっていないにもかかわらず、期待に胸を膨らませていた。

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