第9話 休日に外出

 外出の準備をしていると、母の真優に声をかけられる。


「巧ちゃん、どこかに行くの?」


 高校生の息子に対して、「ちゃん」づけで呼ぶ母親。何度も呼び方を変えるようにいっているけど、一向に変える気配はなかった。


「ああ、ちょっと近くまで・・・・・・」


 真優は信じられなかったのか、目を大きく見開いていた。


「日曜日はナマケモノ生活を送っているのに、今日に限って外出するなんて。頭の中がおかしくなってしまったのかしら」


 日曜日の日課は昼寝、ゲームが主流。ナマケモノさながらの、省エネ生活を心がける。


「外出をすることだってあるよ」


「お守りを持ってくるから、ちょっとだけ待っていてね」


 休日の外出にお守りを持たせる母親。過保護すぎるのか、正常な判断をできなくなったのかはわからなかった。


 巧はすぐに出発したいけど、真優をじっくりと待つ。お守りを受け取っておかなければ、のちのちに無駄な時間を過ごすことになる。


「巧ちゃん、お守りだよ」 


 真優から渡されたのは、交通安全のお守りだった。ジョークでないところは、彼女らしいと思った。


 巧はお礼をいってから、靴を履いた。真優は本気で心配しているらしく、目を瞑りながら、手を合わせていた。

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