第5話 甲斐性のない男と女

 巧は教室に入ると、弘が出迎える。


「巧、おはよう・・・・・・」


「弘、おはよう・・・・・・」 


「思っていたよりも元気そうだな」


「ああ・・・・・・」


 ぼっちになった寂しさを、開放感が圧倒的に上回っている。100:0の割合で、破局してよかったと思える女は珍しい。


 交際については、お預けにしようと思っている。一度の裏切りは耐えられても、二度はどうなるかわからない。 


 谷彦、ひとみは手をつないで教室に入ってくる。巧との関係はなかったといわんばかりである。無神経であるとは知っていたけど、ここまでとは思わなかった。


 弘は不愉快なのか、眉間に皺を寄せていた。


「あいつら・・・・・・・」


 巧は血の毛だっている、弘にストップをかける。


「もう終わったことだ。気にしていたら、身は持たなくなるぞ」


 ああいうのは放置すぎるに限る。まともに相手をしていたら、こっちの身が持たなくなりかねない。

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