第61話 他の転生者ばなし 八木 公太の場合



俺は会社を首になり嫁とも別れた、親は元々居なかった、いないわけはないと思うが記憶になかった。


施設で育ち高校にも行けず中卒だったが運よく施設を卒業した先輩が始めた町工場で働くことができた。


そして真面目に何年間か働いていた頃に事務員をしていた元妻と結婚することができた、嬉しかった孤児だった自分が普通の家庭を持つことができるとは思っていなかったから。


だが幸せは長くは続かなかった、痴漢の冤罪で捕まったのだ、だが証拠が無かったためすぐに釈放された。


だがその痴漢された女の子というのが取引先の娘さんで、証拠はないが完全に疑っておりそんなものが働いてる会社とは取引したくないと言ってきたのだ、だが長い付き合いだから俺を首にしたら考え直してもいいと言ってきたらしい。


先輩も悩んだみたいだが俺を信じ、何もしてない者を首にはできないと言おうとした、だがそれを俺が止めた、取引先が無くなると間違いなく会社は傾く他の社員も路頭に迷う事になるからだ。


そして先輩も泣く泣く私を首にした、妻は何とか会社に残せた。


そのお陰でなんとか生活もできた、俺の就職活動はなかなか上手くいかなかったが日雇いのバイトなどで食い繋いでいっていたがある日、家等に痴漢出ていけなどの張り紙がされるようになった。


どこから漏れたのかわからないが、その後は酷いものだ今までは普通に話していたご近所の人やバイト先の人達からも白い目で見られるようになった。


俺は意外と平気だった子供の頃、ろくな目に遭ってないからまたいつものことだと、だが妻が耐えられなかった自分も俺も悪くないのにと言い泣く日々が続いたこれ以上妻に迷惑はかけられないと離婚届を書いて机に置いて家を出た。


別の土地に移動しそこでホームレスをしていた空き缶を集めたり日雇いの労働をしたりで何とか生きては行けた、そしてもう誰も恨んではいなかった痴漢にあった娘も怖かったのだろう、その父親も娘の為にしたことだし、先輩や嫁はもちろん悪くない。


ご近所の人間には思うこともあるが、もう過去の事だ、俺は生まれたときからそういう星のもとに生まれただけなのだと諦めていただけなのかもしれないが。


そしてついには神のミスで死ぬことになった、最後まで不幸が続くと笑えてきたが、終わりではなかったみたいだ生まれ変われるみたいだった。


生まれ変わるといっても地球ではなくどこか別の世界にだそうだが、でもどうでもいい気もした、また向こうでも不幸な目に遭うだけだろうから。


「神の手により亡くなったからこそ記憶と力を持って生まれ変われるのだから不幸とばかりは言えない」


そう言ってきたのは運命の神と名乗る神である。

確かにそうとも言える。

まだ終わってないのなら最後に幸せになってればいいのかもしれない。


「運命など自分自身で作っていくものだ、お主はたまたま不運なことが続いたみたいだが」


そうならば向こうでは一生懸命生きてみよう、こっちで出来なかったことをしてみよう。


そして力をいくつか貰い向こうに飛ばされる寸前に元妻に少ないが貯めていたお金をあげることは出来ないか聞いてみたら神の名において責任を持って送ってくれると言ってくださった。


これで安心して向こうに行けた。


だがこの時、神もすでに元妻が亡くなってるとは知らなかったのだ。

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