第5話 っあ……!
「まず腕の周辺を直していただければ、私も作業に参加できます」
「おう。どうすれば良い?」
「パズルのようなものです。正しいパーツを腕の近くにおいていただければ、自動修復システムにより故障が修正されます」
便利なものだなぁ……俺の知らないところで、機械はそこまで進化していたらしい。
それにしても腕……腕か……
「どれが腕なんだ?」
「現状私の視覚システムは50%ほどしか稼働していません。よって、判別は難しいです」
「……俺もわかんねぇ……」
大岩に押しつぶされて、彼女の体はボロボロなのだ。一応すべてのパーツは拾ったつもりだけれど、細かいものは見落としているかもしれない。
結局はしらみつぶしか……それしかないな。
そう思って破片の一つを握ったときだ。
「っあ……!」卑猥な声が聞こえてきた。「それはメインシステムパーツです。私の頭の上においてください」
「お、おう……」さっきの声は聞かなかったことにしよう。「こ、これで良いのか……?」
パーツを少女の頭の上に置くと……
「場合によってはグロテスクな絵面になります。苦手な場合は目をそらしてください」
言われたので、俺はとっさに目をそらす。グロテスクなのは大丈夫だが……さっきみたいな声を聞いてしまうと理性が危ない。だって10年も……アレだからな。
目をそらしていると、カチャカチャと音がする。おそらくだけれど……頭が割れている気がする。そしてそこから小さい触手みたいなのが出てきて、パーツを組み込んでいる。
「修復完了。次のパーツをお願いします」
そういうわけで続けてパーツを選別していく。
メインシステムに近いパーツを触れると反応してしまうようで、たまに色っぽい声が聞こえてきた。本人に自覚はないのだろうけど……俺としてはビックリするからやめてほしい。変な気分になりそうだ。
しばらくして、
「それが腕のパーツです」ようやく腕のパーツが見つかった。「ありがとうございます。残りの修復は私で完結します」
「そ、そうか……」
会話しながら、少女の腕がくっついていく。くっついたのは肩から先の少しの部分だけなのだが……彼女はその部分を器用に動かして体を移動させた。
「移動可能。ありがとうございます」頻繁にお礼を言ってくれる人だなぁ……「自己修復を開始します」
「おう……」
どうやらもう俺の手助けは必要ないらしい。
その後、少女は次々と自分の体を引っ付けていく。
なんとも高性能な機械だなぁ……とボーっと眺めていたら、とある事に気がついてしまった。
「ちょ、ちょっと待った……!」
「なんでしょう?」
「……服は……?」
少しずつ少女が人間の体になっていくのだが……服が見当たらない。よくよく考えればバラバラになっているのだから服なんか残っているはずもない。
「ありません」案の定、服はないようだ。「しかし問題はありません。私には――」
「もうそれは良いから」性処理機能はないってんだろう。「ちょっとまっててくれ」
俺は牢屋の中を移動して、適当な服を見繕う。
牢屋とはいえ、一応服は支給される。まぁ服というより、ただの布切れなんだが……ないよりはマシだ。
その服を持って少女のところに戻る。
「これを着てくれ」
「ありがとうございます」もう指まで復活しているようで、服を着るのに支障はなかった。「優しいんですね」
「どうだか」人生で初めて言われた言葉だったので、どう反応したら良いかわからない。「と、とにかく……早く治しちまえよ」
「承知しました」
その後も少女は小さく音を鳴らしながら修復を続けた。
しばらく時間が経過して、
「修復完了」完全に人間の姿を取り戻した少女が立っていた。「87%まで回復。自然修復により100%まで回復可能と判断します」
「……つまり……?」
「つまり、修復は問題なく完了します」それから少女は頭を下げて、「あなたのおかげです。ありがとうございます」
「お、おう……そうか」
お役に立てたなら良かった。
……
というかあれだな……この少女……すっげー美人だな。俺が思っていたよりも大人びている。童顔だけれど……20代前半くらいだろうか?
泥まみれでも美しい顔。短めの黒髪。長い手足。どれをとっても一級品で、直視できないレベルの美しさだった。
……
こいつ……何者なんだ……?
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