宇宙へ-5

 ガラミス第7方面宇宙軍、第2艦隊司令官のロメール提督は先程届いた指令書に首をかしげていた。

 新たに建造された新型戦艦3000隻を受け取る為に部下と共にガラミス本星にやってきた。

 3ヶ月余りを費やして艤装が終わり、これから一月あまりの習熟訓練に向かう為、近くの訓練宙域に向かおうとした時、新しい司令書が届いたのである。

 完全武装の上、おりひめ銀河方面に向かう事。途中友軍以外の艦隊に遭遇した場合、誰何する事なく殲滅する事となっている。

 また、航海途中に航路変更の指示があった場合はそれに従うようにとの追記がある。


 これでは訓練航海でなく、威力偵察ではないかと提督は思う。それなら期間も半年はみなければならない。

 ガラミスの新造戦艦3000隻と正面きって戦える武装勢力はバトランティス以外にあるとは思えない。

 そちらの方面にガトランティス艦隊がいるはずは無い。

 上が何と戦わせようとしているのかはわからないが、過剰戦力すぎるだろう。続く戦乱で国庫も疲弊している。無駄に金がかかる事はするべきでないと思うが、ガラミスでは上からの命令は絶対である。部下に指示を出し、出航の準備を始めるのであった。


 「上様、最近思うのですが、上様名はお人柄が変わられたように思われるのですが、最近何かございましたので?」


 「ふん!地震で死んで、生まれ変わった2度目の人生。世の中を良くしようと頑張って、それなりに楽しかったが最後はどこぞのジジイのせいで弥助のワキガの匂いにつつまれて圧死じゃ」

 「次はそのジジイの用意した舞台で踊って世界を良くしようとしたが、美味しいところはチャーチルに持ってゆかれて、最後は変態ジジイの無理心中に付き合って爆死」

 「此度も、死にかけて生き残ったら覚醒おめでとうとか言われてこのザマじゃ」

 「どう考えても碌な死に方はできんじゃろう。人柄くらいに変わるわい」

「だいたいガラミスが侵攻してきたのだって、お主の差し金だと言われればわしは信じるぞ」


 「辻を使って上様の覚醒を図ったらのは私めでございますが、ガラミスまでは私の力の及ぶはずもなく濡れ衣という物でございます」


 「どうだかな。重力波エンジンを積んだ200隻の戦艦がなんで用意されていたのか、聞いてみたいものじゃ」


 「それは、もっと早く上様が覚醒していれば、上様には美少年を集めた背徳の艦隊を組織していただいて、宇宙を堕ちるところまで堕ちてゆく……首を絞めるのはおやめくださいませ。上様、落ち着いてくだ……」


 アホな事をいいながら艦隊は通常航行でアンドロメダを目指す。

 次々とワープを繰り返せば直ぐにガラミスに着きそうなものだが、そうもいかない。

 重力波エンジンのおかげで、エネルギーは無尽蔵にあるものの、乗っている人間は連続ワープを繰り返すとワープ酔いで動けなくなる。

 ワープ酔いとは言うが、時間をおけば治るものでなく脳や神経系に回復不能なダメージを受けてしまうのだ。特定距離のワープを行った後は、通常航行を数日行わないといけない。

 そして銀河と銀河の間の星の少ない宇宙を掛け合い漫才をしながら平和にに航行する尾張以下197隻の織田艦隊は、ロメール提督率いるガラミス艦隊3000とトラファルガー星域にて会敵したのであった。


 「青っ面どもめ、たかが200足らずの艦隊に随分と手厚い歓迎をしてくれるではないか」


 「結構あれこれ壊して来ましたから、恨まれているのかもしれませんな。なぶり殺しにするつもりでございましょう」


 「歓迎してくれるなら、それを受けねば名折れというもの。歓迎の礼に、片っ端から青っ面の素っ首を刈り取ってくれよう」


 数で押すガラミス艦隊に大して、短距離ワープを繰り返し不意打ちの艦砲射撃とミサイルで戦う織田艦隊であった。だが、戦端が開かれて数時間後、喪失艦15隻でガラミス艦200を撃沈した織田艦隊も追い詰められ殲滅の危機にあった。


 「こうなれば奥の手を出すしかあるまい。

強装甲の戦艦薩摩を先頭に敵中正面突破でトンズラするぞ。者共遅れるで無いぞ」


 それはあり得ない戦いであった。追い詰められた敵の艦隊が正面から縦列で突っ込んでくる。こちらの艦にぶつかろうが、全く気にしない。遥か太古の時代、船が体当たりして戦っていた時代のようだ。

 あっけに取られていたロメール提督は敵の進行方向の艦に避難を名じ、艦隊を二つに分け間を通る敵艦隊を左右から攻撃するように命じた。

 だが結果的に開けた幅が狭く、敵を攻撃できるのは最も前にいた艦のみとなってしまい、数の優位性を生かしきれなかった。

 ガラミス艦隊を突破した艦は次々とワープして時空間に消えてゆき、最後の一隻になった時それは起こった。


 「殿、最後尾の出雲の池田少将から通信が入っております」


 「上様、戦国から太平洋、今回とお供をさせて頂きましたがこれまでにございます。敵の攻撃により重力波エンジンが暴走を始めました。我らはここに残り敵を食い止めます。ではお先に逝かせていただきます」


 惚れ惚れするような見事な敬礼に答礼する。

出雲は180度回転し敵艦隊に向かって突撃した。


 重力波エンジンの暴走した出雲が、後先考えない無茶な艦砲射撃により更に負荷をかけた結果エンジンはブラックホールとなった。

 ほぼ艦隊中央に出現したブラックホールは全てを吸い込み、そこから逃れ得た物な砂粒ひとつすらなかった。

 ロメール将軍も何が起こったのかもわからないまま超質量の粒子と化し消えたのであった。


 ワープから出て集合した織田艦隊は亜空間レーダーによりその結末を知ったのである。

彼等の希望は池田少将によってかろうじて切れずに繋がったのであった。


 「武人らしい見事な最期でありましたな。さすがは織田を支える柱石のひとり」


 「今回は運良く生き残ったが、我等もそう遠くなくあの世に御招待じゃ。池田には直ぐに会えよう」

 「さて、艦隊は修理が必要じゃ。ガラミス君と相談して適当な基地を襲わねばなるまい。艦長会議の準備をいたせ」


 かくして艦隊はアリアナ星系にあるガラミス艦隊の補給基地に向かうことになった。

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