宇宙へ-4
我らの艦隊はひたすらアンドロメダを目指す。銀河と銀河の間には何も無い訳ではない。
ガラミスの補給基地なども点在しており、そこで強制補給を受けながら我らは進む。
ガラミス君ズがいるおかげで、敵の位置もセキュリティも破り放題。味方として近づいて好き放題である。今、旗艦尾張のブリッジには旗竿が増設され髑髏マークの旗が揚げられている。海賊行為を行わない例の宇宙海賊に触発された奴等の希望による物である。
航海の途中、派手に電波を垂れ流している孤立太陽系を見つけた。ガミラス君によると、ガラミスと友好関係にある星だが、絶対に近づかないように命令されている星らしい。
カラスの友邦は袈裟であろうがマントであろうが真っ黒焦げであるからにして、戦闘準備状態で近づいて反応を見る。
星の代表者かららしい通信がはいる。
「私の名前はセイレーン。惑星セイレーンの8627代女王。我らは宇宙を旅する寂しき旅人を癒す宇宙のオアシス。歓待するので是非寄っていただきたく思います」
いくらなんでもこれは無い。歌○伎町あたりのぼったくりより更に怪しい。
怪しさのトップ・オブ・ザ・スペースである。
だが、海の漢たるもの女性の誘いを断るような事はできない。艦隊は惑星セイレーンに舵を切ったのであった。
私はセイレーン。惑星セイレーンの女王。この星には男はいない。私は太古の昔よりこの場所で近くを通る宇宙船の男どもを引き寄せて食い物にして生きている。
10年くらい前から、ガラミスの軍団をいくつかお得意様にしたけれど、いつのまにか彼等は来なくなってしまった。
私はこの星と共生する惑星生命体。私は私達で私達は私。星に降り立った男達は私の精神波で骨抜きにされ、私無しには生きて行けなくなり自滅してこの星の養分になってゆく。
脳が直接感じる快感は麻薬の比では無い。自分にとって最高の女だと感じる私を相手に男は精を吸い取られて死んでゆくのだ。
1年前、髑髏の旗をなびかせた黒い艦隊がやってきた。船員は男ばかり。私は腕によりをかけて歓待した。
今まで宇宙の様々な男達を見てきた私だが、あれ程下品で品性下劣な集団は見たことがない。
私達は精神的に凌辱の限りを尽くされ、最後は懇願し、手土産まで持たせて出立してもらったのだ。
そして今、私は死のうとしている。彼等は私に何をしたのだろう?今まで散々男を食い物にした報いだろうか?
私はセイレーン。今まさに死のうとしている惑星生命体だ。
「のう弾正。ぼったくりバーでもなんでもなくまさに宇宙のロンドン、男のオアシスであったのう」
「正に、見た目はちょっとアレでしたが、それを言えば我らもイケメンとは言えますまい。
まぁ、昔はモボだった悪オヤジといったところですからな」
「しかもあれだけ遊んで、タダ。土産付き。
ガラミスの奴らが秘密にしたがるのも当然じゃ」
我等は心身共にリフレッシュしてサイレーンを後にしたのであった。
タラバット星系とガラミス艦隊が消滅したという報告がルーベルト総統にもたらされる。
詳細は不明。それに伴いまだ抵抗を続けていた惑星オマールの数百万人も消滅している。
オマールに援軍が来たと言う話であるはずは無く、何かの事故か、次元断層の発生の様な自然現象により起きたものだという可能性もある。
だが気になるのはその直前、謎の艦隊が時空レーダーで一瞬だが捉えられたという情報がある事だ。
現在ガラミス帝国は4つの銀河を支配するバトランティス帝国と絶賛戦争中。多少優位にすすめているものの、予断は許されない。
軍をおりひめ銀河方面からどんどんバトランティス戦線に引き抜いている状態であり、とてもそちらの方面に力を割く余裕はない。
調査や報告も辺境からのものはどうしても遅れる。
しかもオマール人は数百万人も死んだが、ガラミス人の犠牲はごく僅かだった。
バトランティス方面の戦闘に関心を向けているルーベルト総統にとって、それは重要な問題でとは思えなかった。
ただ、この時エメラルド星域にあった基地を破壊された事を思い出さなかった事を後に悔やむ事になる。
ハル軍務大臣は報告を受けた時に、困った事になったと思った。
また例の艦隊が出現した。織田木瓜のマークをつけた歓待である。
敵であるのは間違いないが、敵の敵は味方という理論なら、彼らにとって味方であるはずの星系まで一緒に消滅させながらこちらに向かってきている。
総統には今回の事は全て伝えていない。
自然災害の可能性が否定できないと思い込みやすいような内容を強調して報告している。
宇宙は決して安定している訳ではない。過去にはこの様な自然災害は無数に起きている。
ルーベルト総統は天才戦略家だと言っても過言ではない。元々ガラミスは軍事国家でこの数千年間拡張路線を進め、星々をその支配下に置いてきた。
そしてルーベルトがガラミスを率いるようになって200年、ガラミスの版図は10倍にも膨れ上がっている。
彼は宇宙最高のカリスマ性と統率力を待ちガラミスの絶対君主として帝国を統治してきたが、歴代の総統と違い、逆らう者達に対しては一片の慈悲も与えず、種族を絶滅させてきたのだ。
それは部下に対しても同様で、諫言したり、無能と判断された場合は左遷や降格、粛清すら行われる。
謎の艦隊に2度までも完膚なきまでにガラミス艦隊がしてやられたなどと、どうして報告できよう。彼だけならともかく一族郎党強制収容所行きだろう。
ガラミス艦隊がやられたとは言っても、おりひめ銀河方面にいるのは、ガラミス人は上級将校だけで、後は植民地から集められた兵が主体の第2線級の艦隊である。艦も第一線から引いた古い物が多い。
優秀民族のガラミス人が指導しても、劣等人種は劣等人種だ。腰抜けの無能は変わらない。
ハル軍務大臣は、艤装を終え、バトランティス方面に配属される予定の最新戦艦3000隻を
訓練航海の為におりひめ銀河方面に行かせる事にした。
指揮官はロメール大将。ガラミス生え抜きの提督である。部下も数百年間彼の指揮下で戦っている優秀な純血ガラミス人達だ。
訓練のついでに200隻程度の敵艦隊を沈めてくる事など児戯にも等しいだろう。
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