私の人生のバイブル「スケバン刑事」
高瀬 八鳳
第1話
漫画好きの知人達と共に、近々「マンガナイト(仮)」なる、ほぼ身内だけで集うイベントを行うことになった。
ただただ好きな漫画について語り合う会だ。
今回のテーマは、人生に影響を与えた一冊。
それを聞いた時に、瞬時に頭に浮かんだのが、和田慎二先生の「スケバン刑事」だ。
最初に申し上げておく。ほとんどの方が勘違いをされているかと思うのだが、ドラマの「スケバン刑事」と、原作オリジナルの「スケバン刑事」は、まったくの別物だ。
まあ、ドラマについては言いたいことが色々あるがそれは省かせていただくとして、とにかく、漫画のスケバン刑事は私にとって、大切な人生のバイブル本のひとつだ。
私という人間の根幹を構成する、主要成分だと言っても過言ではない。
どこがそんなに素晴らしいのか、何が他の漫画と違うのか。
そう問われた時に、即座に返答できない自分に気がついた。きちんと整理・言語化できていないのだ。
スケバン刑事の魅力が、しっかり伝わるようなプレゼンをマンガナイト(仮)でするために、こちらで考えさせていただく。
一番最初に、この作品にであったのは、多分小学校の1年生だったと思う。
今はなき、近所の商店街の本屋で、1巻を立ち読みした。
(昔は、個別包装がされていなかったので、読むことができた)
読んだ内容は覚えていないが、とにかく大人用の怖い漫画だ、と感じた事を記憶している。
そして、小学生の3,4年生で、私は花とゆめの雑誌を通して、スケバン刑事と再会した。
ちなみに、当時の花とゆめは、素晴らしかった。
スケバン刑事をはじめ、下記の作品や先生方が活躍されていた。もっと他にも素晴らしい先生方が描かれていたと思うが、私のぼんくらな記憶によるものなので、ご容赦下さい。
ガラスの仮面
パタリロ
ブルーソネット
動物のお医者さん
川原泉先生
河惣益巳先生
高口里純先生
日渡早紀先生
愛田真夕美先生
那州雪絵先生
*わりと大人な内容の作品も連載されていた
スケバン刑事のオープニングにはまずこう書かれている。
「東京から遠くはなれた山奥に建つ第二高等少年院、それはまた、別名『地獄城』と呼ばれた。この物語はここから始まる」
『地獄城』である。
三千ボルトの電流が流れている高い壁、毒蛇やヒルがうようよいる延々と続く樹海のなかにある荒れた少年院である。
わりと純真無垢な小学生には、衝撃的な内容だ。
それでも読み勧めていくうちに、物語の世界観に慣れていくと、そのダークな雰囲気がたまらない魅力となる。
端的に言うと、複雑な生い立ちの逆境に生きる孤独な少女が、一度は悪の道に染まりながらも仲間となる人間達と出会い、正義の為に真の悪と戦う物語だ。
諸事情により、敵視していた警察の仕事を引き受ける。学生刑事として、大人が立ち入れない学校内・学生間の事件を調査したり、解決するのが任務だ。
その中で、人と出会い、戦い、仲間になり、裏切られ、別れが繰り広げられるダイナミックなアクションヒューマンドラマ。
サキさんは腕っぷしも強く、有名な武器・ヨーヨーを自由自在に操る。バイクにも勿論乗るし、拳銃も扱える。
バトル・スパイ要素だけでなく、笑いあり、人情話あり、世界を股にかけるエピソードあり。家族間の複雑な関係や、ちょっぴりラブ要素もありと盛りだくさんな物語。
サキさんは強くてアネゴ肌で最高にカッコいい。永遠の憧れの存在だ。
そして、脇役がまた、いいのだ。
私の好きなキャラクター(サキさん、神さん以外で)
美緒さん
沼さん
アグラ
ムウ・ミサ
火喰鳥
誰やねん、それ?という方、ぜひ一度読んでほしい。
私はこの作品ではじめて「孤高」という言葉に出会った。
愛情と信頼は別のものであることや、悪に年齢はないこと、人間というものは善だけでなく、醜悪な部分も併せ持つ存在だという事を教わった。
スケバン刑事の何が当時の私を虜にしたのかを考えてみたが、やはり一言ではいえない。
薄っぺらい正義ではなく、人間として弱いものを守る当たり前の姿勢、理不尽な権力に屈することなく戦うサキさんの勇気に、子供ながらに尊敬の念を覚え、共鳴したのだろうと思う。
それでも、一言でいうなら、この部分だろうか。
「自立した女性同士の友情の物語」
その頃、他の雑誌では恋愛モノが主流だったと思う。素敵な王子様、強面だけど実は優しい不良君、カッコいいヒーローと、ヒロインの女の子との恋物語。
それはそれで、すてきだ。ドキドキするし、読んでいて楽しい。ヒーローと手が触れるとか、キスするシーンで、読者はヒロインと一緒に夢のようなときめきを感じることが出来る。
でも、スケバン刑事には、そんなフワフワしたお花畑的ラブストーリーの要素はこれっぽっちもない。(神さんとの関係は、そんな甘いもんじゃないし)
現実的で、骨太で、人は死んでいくし、ヒロインも傷つきながら殺し合いの戦いをしている。
どちらかというと、読みながら虐げられた痛み、悲しみ、怒りといった感情を抱かされる。それが、いい。
そして、少年漫画では定番の『友情』。最初はケンカして、仲良くなり、いつの間にか背中を預けるくらい信頼する存在、そんな「友」が少年漫画にはよくいた。
そういう意味での友達は、当時の少女漫画ではあまり見ることがなかったように思う。(私の読んだ範囲内では)
でも、スケバン刑事には、女性同士のそんな「友情」が描かれていた。
皆、強くて、自立した存在だった。
男性に頼るか弱い存在でなく、対等で、自分の意思をもっていた。
己を持った女性達が、仲間として互いを認め、尊敬し、助け合うさまは、心を強く揺さぶられた。
男だけじゃない、女だって戦えるし、女同士でも友情や信頼関係は築けるし、そもそも、女と男は対等なんだ。
スケバン刑事は私にそう気づかせてくれた。
だからこそこの作品は、私の血肉となり、今もなお、私のバイブルであり続けるのだ。
まとめると、この作品のお陰で、私は下記についての気づきを得た。
・ 女も男も、人間は対等である
・ 女同士の友情は存在する
・ 大切な事は義侠心・勇気・拳の強さ
「あなたの作品への熱い思いはよくわかったが、もひとつ作品の良さはわからないなあ」と思われた方、まあ、とにかく一度お読みいただけると有難いです。
最後にちょこっとご紹介
● 一番好きなエピソード
梁山泊編
● 印象的なセリフ
サキさん
「ヨソものを排除してきたお前たちが、今度はあまりにも少数のヨソものになるんだ。ーー井戸から海にほうり出されたカエルがどうなるか、身をもって知っていただこう」
「あんたと同様……あたしも錯覚し続けている。敵同士であっても……友でありうると…」
「性根ってのはな、同じ立場にたった時に、どれだけがんばれるかを言うんだ」
美尾さん
「サキさんの信頼は、愛情よりも強いかもしれないわ」
麗巳
「あたしは今、人生に感謝している。一生に一度会う事があるかどうかという敵に、めぐり会わせてくれた人生に…」
神さん
「ふたりの少女はそれからも宿敵とし、死闘をくりひろげたが、ただひとつ共通していたことは、どちらも他人を頼まなかったことだ。あのふたりにあったのは、魂と魂のぶつかりあいだけだった。どちらの少女も、動かせる大きな力をもちながら、それによりかかったことはない。ふたりは宿命の敵でありながら、生まれながらの友だった」
巻末の和田先生のお言葉
「孤高のサキは戦うことで、友をみつけていく旅をしているんです」
「社会の歯車と合わない人間がいる。社会不適応者が普通に生きていくのは、すべてを投げ捨てたいくらい辛い…。ただ、どうしても捨てられないモノがあって、そのために走り続けるしかなかった。それが報われようと、報われることがなかろうと……走り続けた」
和田先生には心より感謝している。
結局、直接お礼を述べる機会は永遠に失われてしまったが。。。
和田先生、尊敬しています。スケバン刑事を描いて下さり本当にありがとうございます!!
ここまで読んで下さった皆様、ありがとうございます。
ぜひ、この素晴らしい作品が、一人でも多くの方々に読んでいただける事を願っております。
メディアファクトリー版 スケバン刑事全12巻 参照
(最初に購入した花とゆめのコミックスはシミにより処分しました)
私の人生のバイブル「スケバン刑事」 高瀬 八鳳 @yahotakase
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