第3話
二百年の歴史の中で初めて生まれた男に、村人達はこれこそ凶事と慄く。
だが、男の母たる娘の死に際、息子のことは一言たりとも口にしていない。
──ならこれは、どういうことなのか。
それでも一応は、娘の、牛未村の姫巫女が生んだ子供だからと、大事に大切に座敷牢にて育てられた。数えで五つになった頃──息子が凶事を口にすることはなく、その後十年の間、村人は視えない未来に怯え、役立たずの息子は粗末に扱われた。
時に重傷者を出し、時に死者を出しながら、息子が十五になる頃、牢に向かう女が二人。
息子には何も期待できないが、その娘ならまたもう一度未来を視てくれるかもしれないと、村の若く美しい娘が母体に選ばれ、友人でもあった村長の娘が彼女に付き添う。そしてまぐわいの果てに若い娘は死に、村長の娘はしかと聞く。
予言を。
それからの息子の待遇は良くなり、再び大事に大切に世話をされ、予言が一通り済んだら女を用意される。村の女だけだと滅ぶ可能性がある為、他所から女を招き、女を拐かし、息子の供物として捧げた。生き残った女はいない。これでは次の姫巫女へと繋げないと、再び村人達は怯えたが、数十年もすればその心配もなくなった。
息子は老いず、死ぬこともなく──百年の時をそのままの姿で生きていた。
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