【MV】異なる世界ノ。物語り
【粗筋・筋書・書始め他】
現実として存在する現代社会─それと交差するように存在するもう一つの世界。それを【
【陰理】世界の住人は、現実世界を【
陽狩を終えた命は陰理の底に沈み、澱池に漂う核に宿りて胤となる。
そして胤より目覚めた
或る者は他者より奪い、或る者は知恵で界より得て、何層にもなる界を昇っていく。
そうして、至光界まで辿り着いた仁は光粒となりて、再び陽狩へ還っていく。
それが、陰理の世界、だった。
澱池に浮遊する胤は、やがて浮上し底岸界へ辿り着く。
それと同時に左右に割れ開き、
ひとつ胤より生まれる二つの仁が“朋殻”と言われる所以──
─それは、陽狩にある梅木の種子に酷似しているから。仁はその種子の中の胚に相当する。
朋殻は二つで一つの存在、故に片方が亡くなればもう片方にもその影響が及ぶ。
同じ界、同じ時刻で亡くなれば、その身は光粒となって高みへ昇っていく。
仁達は、その生まれにより形が決められており、朋殻を持つ仁は皆…四つ足ケモノ…の
稀に朋殻を持たずに生まれてくる仁が存在するが、それらは特別な存在…
又、狗である仁の片方が亡くなり、もう片方が生き残った場合、その者が界を越えた時点で姿形を変えて…
無論、仁以外の存在…意思を持たぬ生物…も有り、それらは
界へ辿り着いた仁達は、その時刻より決められた期限迄に次の界へ昇らなければならない。
何故なら、期限までに越えられなければ、其処で腐り堕ち、消滅するからだ。
朋殻の片方が亡くなれば、残された時間も半減する。そして界を越えられなければ、亡くなった朋殻と共に界に呑まれて消滅するのだ。
界に漂う理気の多くは、そうやって亡くなり消えた仁達の命気である。
理気は仁達の命の源。理気によって仁の身体は維持される。
爪で引っ掻き、引き裂いて。牙で噛み付き、食い千切る。体当たりをし、圧し潰す。
唱の力で、咆哮し、吟歌し、息吹し、呪詞し、祝詠す。
そうして界に潜む理気を、仁達は集めていく。
それら全てが、陰理にまつわる
だが。ある時より後。変化が起きた。
陽狩と陰理の均衡が崩れ、至光界より下降の界で陽狩に繋がる抜穴が出来てしまった。
仁達の中には、その穴から陽狩へ抜けてしまった者もいる。
そういった者たちは記憶を失い、陽狩の世界で放浪していた。
運良く陰理に戻れたとしても、記憶が失われたまま、命を落とす者も多い。
そうして溢れ出す理気が暴走し、次第に歪みが生じていく。
事態を憂慮した巫により、秩序を正すべく
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【人物・その他設定】
●
共栄荘に住むフリーター。2年程前に八角堂の傍で倒れていたのを、近くの住人に助けられる。記憶が曖昧で、名前も当時助けた共栄荘の管理人が付けた。
●
颯太の朋殻。記憶喪失の颯太の前に要所要所で現れる。
●
共栄荘の管理人。仕事はフリーランスだが、管理人以外は何をやっているか教えてくれない。何でも出来る。陰理側では、管理者の役目を担う士鬼の一人。
●
颯太のバイト先の同僚。面倒見がよく、いっも颯太の面倒を見ている。
颯太の彼女ではない。
●
共栄荘のある地区の町内会長。御歳 81才。数年前に長年連れ添った奥さんをガンで亡くす。櫓との縁はその奥さんが繋いだもの。ちなみに一人息子が居たが、その息子も40才を目前に急逝した。櫓は何処となくその息子に面影が似ている。
●
●
=双子、ソウルメイト等、霊的に強い繋がりを持つ関係
●
=陰理界での生命。人と獣の姿を両有する存在。陽狩界では人か獣、どちらかの姿に偏る。
●
=鬼。一つ胤より一命で産まれる、稀有な存在。どちらの世界に在っても揺らぐ事のない強い御霊を宿している。
●
=神格を持つ存在。巫女や神主的な地位を持っている場合がある。名に「真」の字が使われているのですぐにわかる。
●
…四つ足ケモノ 朋殻を持つ仁
●
…朋殻を失って残された仁
●
…陰仁 朋殻を持たずに生まれた仁
●
稀に陰仁が陰理に流転することがある。その際流転した陰仁は、神薙となりて陰理を護る巫になる。
●
現実世界の中で、最も陰理に近い場所。ビル街の隙間に点在する、細い路地や小さな神社、又は祠塚などが境界として存在し、中でも
●キヨラ/清/聖羅
ニホンヤモリの狗。ホムラの朋殻。のちにホムラを失い、
●ホムラ/炎/焔/穂村
サンショウウオの狗。キヨラの朋殻。
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【参考文】
───【ゲームシナリオ 書き始め】────
『──い出せ、──レを──』
白いー影が蜃気楼の様に揺らぐ。街の雑踏に重なるよう、杜の木々が一瞬見えた。目を凝らしたが、人と車でごった返すビル街の真っ只中にそんな幻影を見るなんて、正直あり得ない。だが。
(あれは…キツネ?)
確かに、コンクリートレンガの舗道に跳ね返る眩光に紛れて、白い狐がこちらを見ていた。
『──思い出せ──ッ ─ハヤテ──!!』
「
「え、あ。」
どうしたの、と隣から覗き込む双眸に視線が揺らいで戸惑う。
「もう。すぐに颯太は(意識が)向こう側に行っちゃうもんね。」
「ええと。…(あれ?)」
「やだなぁ、私の名前も忘れちゃったの?」
そう、朗らかな笑い声で彼女は答えた。
「早紀よ。さ・き。
ああそうだ。バイト先の同僚、で、今はバイト帰り。そんなことを漠然と思い出す。
「あんまりボーとしてると、また迷子になるわよ。」
と軽く引き寄せられる。俺は彼女に連れられるままに人混みの街中を歩き進んだ。
此処、光理市は県内でも有数の大都市で、近年では彼方此方で再開発が行われている。だが、ビル街の隙間に細い路地や小さな神社や祠塚が点在する不思議な都市でもあった。そんな隙間の狭小地に建つ昔ながらの家も多く、新旧ごちゃまぜ感が魅力としてSNSではちょっとした話題に上がっている。
そういう色々な情報を再度彼女に教えてもらいながら、気付けば路地の入口に辿り着いていた。
じゃあね、と彼女は手を振り、それぞれの路に分かれていく。この先は八角形のこじんまりとした御堂らしき建物がある公園へと続いていた。そして、その手前にあるのが
「よぉ、おかえり。」
入口階段前の小さなスペースで屯している若者と年配者が、共に此方を見ている。その内の一人が声をかけてきた。若い方は共栄荘(ハイツ)の管理人で、年配の爺さんは町内会の会長だ。
俺は軽く会釈をして声を掛けてきた方─管理人に近づいた。
「ただいま。」
そう言うと、彼はほんの僅かに微笑んで手に持っていた小包を差し出した。
「君宛ての荷物だ。預かっておいた。」
「有難うございます。」
受け取って、送り主を確認する。
───【櫓×藤見会長 BLもどき】────
「馬鹿野郎!! 何考えてやがる!! テメェは!!」
櫓の下に敷かれて、藤見は真っ赤な顔で怒鳴った。櫓の手は藤見を囲うようにして、辛うじて自身の体を支えている。はらりと落ちた黒髪が藤見の頬を撫でた。
真っすぐに藤見を捉える櫓の双眸には余裕が感じられない。冷静さを欠く櫓が、どうにも藤見には許せなかった。
チリチリと肌を焦がす臭いが立ち込める。熱を持った櫓の体が次第に藤見へと近づいてくるのを、慌てて止めに押し返した。が、それどころでは無いことは重々承知していた。
「攻撃を受けても俺に影響はねぇ、ってテメェが言ったんだろうがっ。」
荒い吐息、鬼の鋭い蒼眸が縋る様に藤見を映す。このままじゃ二人諸共やられ兼ねない。だのに。
「だ…いじょう…ぶだ。」
そう櫓は言った。無茶をした、と櫓自身わかっていた。だが、藤見の体が呑まれるその光景に耐えられぬ衝動が、咄嗟に肉体を突き動かした。
「何が『大丈夫』だ。老いぼれていても、俺ァまだまだやれるぜ?」
昔取った杵柄もあるしよ?と、櫓に向けて不敵に笑う。そんな藤見にフッと口元を緩めるとそのままぼそりと呟いた。
「…百歳年下の若造が。」
「テメェも鬼の寿命と人間の寿命、並べて比べんじゃねぇよ。」
互いの軽口に二人の間の緊張が解れる。失いたくない相手だからこそ、お互い負けてはいられない。
再度気合を入れて、櫓はその身を引き起こした。櫓が退いた事で藤見も体を起こし、立ち上がる。
「後は俺にまかせろよ。」
そう言い、振り返ることなく藤見は櫓を背にして立ち、神木刀を構えた。
───【
『キヨラ、キヨラ、』
小さな体で息急き切って呼ぶ声が、微睡むシロタヘの脳裏に浮かんだ。真っ黒で円らな、愛らしい双眸。しっとりした黒い肌。短い手足で五本の指をしっかり開いて、するすると駆けていく。白く乾いた肌の、鋭い金泥の眼を持つ自分とは正反対。そんな朋殻の彼女が大好きだった。
「ホムラ…」
そっと彼女の名を口にしてみる。
『ねえ、キヨラ。彼方に水辺があるよ。』
そう言って指し示すように進む彼女の陽炎を、気だるげに目で追う。意味の無い事を、と思いながらもそれは微かな希望の灯のように、もしかしたら今裏側の陰理に彼女が存在しているかもしれない、と。くだらない妄想にシロタヘは目を閉じ、顔を逸らした。
例え、本当に居たとしてももう、自分は彼女には逢えない。
あの時。あの狗が現れなければ。
あの狗がホムラを捕まえなければ。
ヤツがその醜い爪をか弱き彼女を傷付けなければ。
陽狩の世界の雑路の片隅。シロタヘは長い髪を揺らし、白衣を纏った腕の無い体を震わせた。
あの時の光景は未だにシロタヘの心を抉っている。
「キヨ…ラ、たす…け…て……、」
潰えた躯から命の光粒が浮き上がる。それらは意思があるように界天にいるキヨラの所へ集まってきた。ぷつぷつと肌に触れては弾け、キヨラの中へ流れ込んでくる。
『行って、キヨラ。キヨラなら越えられるよ。』
それはホムラの声だった。遺されたホムラの想い。キヨラはホムラを潰したヤツを睨み付けると、吠えるように叫んだ。
「ホムラァァァァッッー」
絶対に私は生きる。そしてヤツを殺すー
そうして、キヨラは界を越えた。
そうして。界を越えたキヨラは…四肢を持たぬ、蛇に似た一つ眼の弔、
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