【MVS】昼の余韻 ∞ 夜の朱
【粗筋・筋書・書始め他】
其処はあまり人に知られてはいない。優雅なバロック調の豪邸の前には見事な生け垣が左右対称に整備されている。その周囲を広い庭園が囲み、あちらこちらで季節の花が鮮やかな彩りを添えている。小鳥のさえずりをBGMに、周囲とは完全に別の世界が展開されていた。
公立公園の散策道より分かれた小路を進み、木々の繁る森を抜けて辿り着く其処は『afternude-アフタヌード』と呼ばれる完全予約制の執事カフェだった。
アールデコの門扉を潜り、正面の生け垣を通り抜け、開かれた建物の入口へ到着する。と、中から芳しい香りと共にコンシェルジュが出迎えてくれる。豪奢なエントランスを横目に純金のエレベーターで案内されるは、階上の広々としたルームテラスで、そこに行き着くまでの床は一直に赤絨毯が敷かれていた。楕円形の大理石テーブルと用意された人数分のみの椅子、そこから眺められる華やかな庭園、更に見目麗しい専属のコンシェルジュによるもてなし。どれを取っても申し分ない。
アフタヌーンティーを楽しむ為に…が目的だが、それ以外でも足を運びたくなる程魅力的な場所であった。
だが。陽が落ちて夜を迎える頃…建物は裏の顔を見せる。
丁度建物の裏側、道路に面したコンクリート造の一枚壁が、無機質で固いイメージを与えている。そのすぐ横に設けられた細い通路は下り降りる階段になっており、建物の横の勝手口並みの扉へと繋がっていた。その扉には紅く『Boys bar Vermeil-ヴェルメイユ』と刻まれており、扉の中からは賑やかなディスコ曲が流れてきていた。薄暗い廊下を進むと程なくバーカウンターが目に入る。立席のみが並ぶカウンターテーブルの奥には、別のクラシカルな扉があり、そこから従業員らしき…コスチュームを纏った青年達が接客をしていた。
扉の先は会員証が無ければ入る事は出来ない、らしい。それに、ランクも(normal)(regular)(master)(special)と分かれており、ランクが上がる程より奥の部屋が使える仕組みになっている。
入口のカウンターに腰掛け、差し出されたメニューを見た。Cast と書かれたページに並ぶブロマイドより一人、そして酒の銘柄が書かれた頁より好みのグラスを一つ、選んでオーダーする。程なくウェイターが奥の扉の中へと案内した。
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【人物・その他設定】
●
元アイドルグループ『Aria Star-アリア スター』の一人。現在は執事カフェ『afternude-アフタヌード』&ボーイズバー『Vermeil-ヴェルメイユ』のキャストとして働いている。26歳。
執事カフェでは、源氏名:
愛想がいいがしたたか。本心ははぐらかす。レンの時はぶりっ子、鴫杜の時は恭謹で静か。本来は口が悪く他人を威嚇してきた不良(家柄に反抗して)。
憧れる芸能の先輩がおり、その先輩の不祥事でグループが解散になったものの、心の奥では未だに慕っているが、それを他人に見せることは無い。
本名の樒根は、裏の政財界では愛人一族として有名。数々の著名者との隠し子を抱えている、躾に厳格な家柄。
髪色:地毛は黒。視力は2.0 身長は平均よりやや下…位。170㎝前半位? 肌は俗にいう健康的な肌色。
スッピンでも素地は良いバランスの取れた造りをしていて、全体的に小顔。
鴫杜の時:オールバック。銀色の細フレーム(伊達眼鏡)愛用。シークレット靴の底上げで、身長を通常より高く見せている。唇は、薬用リップで保湿程度に塗っている。メイクは少し彫り深め。
レンの時:ウィッグでカラフルにその時の気分で色を変えている。カラコンも同様に使っている。耳はピアスだらけ。舌にもピアスをしており、他、体中にピアス穴を開けさせられている(客要望)
唇は暖色系+グロス入りの口紅を使用する事が多い。基礎化粧に力を入れていて、ファンデは使わない。
●執事カフェ『afternude-アフタヌード』
女性客を中心とした完全予約制の昼食を提供する店。執事に扮したコンシェルジュが対応する。回転式円筒エレベータで2階へ案内。区切られた各テラス席へ案内出来る様、扉の開く位置を調節している。3階はV.I.P専用でラウンジタイプ。キングサイズベッドも装備。特別な夜会を催す事も可能。
●ボーイズバー『Vermeil-ヴェルメイユ』
会員制が基本だが、一般客も受け入れている。店員(ボーイズ)に好きなコスチュームを選んでオーダーできる。バーカウンターまでは、きっちりとした制服での対応のみで、選べるのは酒だけ。
会員証ありだと、客にホストがつくのと同じで店内奥のラウンジルームの使用が可能。N はコスと酒だけ。R はマッサージとフェラ付き。M はもう一つ扉奥のプレイルーム使用可。
プレイルームは中央に円形のソファが置かれ、その真ん中には巨大なクッションが場所を占めている。周囲の壁にもX型の台が並んでおり、パーテーションで仕切ることも可能。道具は各種取り揃えてあります。複数カップルで使える広さ。
S は収得3名まで。優先位あり。プレイルームの更に奥の個室使用可になる。尚、一日キャスト借上げ可能。
双方共に同じ親会社。pravitas プラヴィタス
執事×キャスト もOK。変則で、カフェかバーのどちらかの客を嵌めて、客×客+店員の4Pも有りかも。
●元アイドルグループ『Aria Star-アリア スター』
グループリーダー。解散後は改名し、
本名:
有住
俳優志望の一般公募生。努力家でドラマに抜擢された事をきっかけにブレイク。だが、同ドラマ共演若手女優との(偽)熱愛報道をすっぱ抜かれ、その際に有る事無い事好き好きに書き捲られた。結果人気と信用を失い、芸能界からほぼ追放された形となる。
元々興味が無かった芸能だが、同じオーデイションを受けていた清廉潔白で純粋な意志を持つ有住
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【参考文】
───【電磁開脚羞恥責め〜イケメン俳優のアブナイ秘蜜〜】────
『電磁開脚 羞恥責め』
そんな題名のエロDVDを、何気無しに諏訪は手に取った。
素撮りで一時間47分のSMらしい。演じているのは。
「
4年程前、アイドルとして売り出していた、見た目可愛い系のイケメン俳優だ。
出演したドラマが当たり、演技も好評だった事で、一躍有名になった筈。
そういやここ一、二年、見ていないなと、諏訪は頭を捻った。
そのままカゴに入れ、レジへと持っていく。
独り暮らしの1LDKに、諏訪は戻った。夜半に近い夕食を適当に口に頬張り、さっさと胃袋に流し込む。
そして借りてきたDVDをデッキにセットし、寝転がって諏訪は鑑賞を始めた。
オープニングにはスタジオへ向かう有住玲衣の背中が、隠し撮りで映っている。
そして画面はブラックアウトし、タイトルコールが現れた。
全裸で、有住玲衣は椅子に座らされていた。後ろに手は回っており、拘束されているのだろうか。上半身も胸元をロープで縛られ、椅子の背にくくりつけられていた。
股間にはタオルが一枚乗せられている。大事な部分はそれでどうにか隠されていた。
「有住ちゃん。有住玲衣ちゃん。」
猫なで声の嫌な響きで、玲衣を呼ぶ声がスタジオに響いた。声はどうやらディレクターのようだ。
呼び声に気付いた玲衣が、顔を持ち上げる。まだすっきりと目覚めていないらしい。
「カメラ回されたら、アソコ見せびらかしたくなるって本当?」
言葉と同時に、玲衣の股間にカメラがズームされる。映っているのは、まだ何の変化も無い、タオルに隠された股間だ。
「ぅ、ぁ、なんで?え?」
漸く自分の状況を把握した玲衣の顔が、蒼白になっていく。だがそれも束の間、直ぐに理不尽さに怒りを顕にした。
「おい!!貴様ら!!俺を誰だと思ってるんだ!!」
「露出狂で有名な、有住玲衣くん、ですよね。」
完全に小馬鹿にした声で、ディレクターの男が言った。
スタジオの中央、幾つものカメラが玲衣に向けられていた。ライトも勿論、玲衣のみにスポットで当てられている。
「ふ、ふざけるな!?」
「じゃあ、カメラ回っても脚閉じてろよ。」
男はスタジオカメラの所に行き、真正面から玲衣を映した。周りのADもニヤニヤしている。
キューを示す赤いランプが点った。それとほぼ同時に、玲衣の顔色も変わる。
数秒もせぬ内に、玲衣の脚が勝手に動き出す。
「や、やだ!!やめろ!!」
「あれあれぇ、どうしたんですか。玲衣くん。」
嘲笑を浮かべ、男は玲衣を詰った。
玲衣の足は、当人の意に反して、大きく開いていく。
「ほら、やっぱり。」
「ちが…違うっ!!」
「違うったって、自分で足おっ広げてるんじゃ、説得力無ぇよ。」
男の言う通りだ。玲衣の周りに誰も立っていないし、紐を脚に掛けられて、引っ張られている訳でもない。
映りはあくまで、玲衣が自分で開いた様に見えている。
「違う…ぅぅ、やだ…止めてよ…」
真っ赤になり、泣きながら玲衣は嘆願した。その顔も、次の瞬間蕩けた痴顔を見せる。
「おやおや、見られ過ぎて濡れちゃった?ってか。」
丸見えの股間にも、ムクリと起き上がった玲衣の一物が映し出されている。感じているのは確かだ。
「も…やめ…ぁ…ひ」
必死で翻弄される肉体に、玲衣は抵抗したが。
次第に呂律もあやふやになり、口元から涎が垂れて玲衣の肌を濡らした。
男が言う通り、一人で玲衣が濡れているようだ。そんな筈は無いだろうと、諏訪はせせら笑った。
玲衣が腰砕けになったのを見て、男は椅子の背後に回った。ロープを解き、玲衣を椅子から立たせる。役に立たない足腰は、そのまま前のめりに玲衣の身体をスタジオの床に崩した。
カメラは、床に這いつくばる玲衣の背面を映した。その臀部には、電磁パッドが左右両方に貼られていた。
「ぁ…ァあ、」
肛部からもコードが垂れている。
成る程、と諏訪は頷く。
「入れて欲しいか?」
ヒクつく肛穴を指でつつく。指を一本突き入れられると、甲高く痺れた泣き声を上げた。
下肢を震わせもがく玲衣に、ディレクターは頭髪を掴んで、顔をカメラに向けさせた。抵抗しようにも力が入らない。その上、頭を完全に押さえ付けられ、屈辱を味わらされる。
早く終わらせる為には、言う事を聞くしかないと、玲衣も認めたらしい。
「お前は淫乱な露出狂だよな?」
男の言葉に、玲衣は震えながら頷いた。
「おい、違うだろ。変態ならケツ振ってねだれよ。」
「ちゃんと口で言えよ。
「もっと擦って欲しいんだろ?ケツの穴をよ。」
散々な罵声を、男共から浴びせられる。アップにされた玲衣の顔には、悔しさが滲み出ていた。
「おぉれわぁっ!!ああっん!!いっ…淫乱んっ!!変っ態っ野郎ぉで…すっ!!」
全員がしたり顔を見せる。男共の阿吽の呼吸が玲衣をぐるりと取り囲んだ。
「へぇ。それで?」
「ぅ…ください…っ!!」
「くださいって、いきなり言われてもなぁ。」
周囲の失笑を買いながら、尚も煽るように股間を甘蹴りされる。玲衣は甲高く泣いて身を震わせた。
「チンポが欲しいんです、ぅ、俺のっけ…ケツマンコにぃ…っ!!」
よくそんな言葉が出るな。と言うより、知っている事に少々驚いた。諏訪は姿勢を変えて、固まった筋肉を解す。
玲衣の、無理矢理言わされる様は哀れとしか言い様がなかった。
下らねぇな、と諏訪は嗤った。
仰向けに返された玲衣は、両股を大きく開かされて黒々とした雄根を尻に咥えた。
「ヒィッ!!痛いぃ!!ああああっ!!」
慣れていないのだろう。玲衣の悲痛に歪む顔は、その顔貌により余計に加虐心を煽る。
確かにこんな姿を映されちゃ、まともに仕事なんざ出来なくなるよな。
突き揺さぶられ、悲鳴の中にも艶が混じる。童貞なのか訝る程に、掘られて善がる玲衣の有様が、少々気に食わない。とはいえ、一番ムカついているのは玲衣本人だろう。
借りていたDVDを返却しに、諏訪はレジへ向かった。痩せた手で返却処理をし続けるアルバイトの店員は、ほんの僅かそのDVDを見て手を止めたが、何事もなく覇気のない態度で機械的な声を上げた。
「有難う…ございました。」
耳に残るその声を後にして、諏訪は店内を出た。
───【実録 深夜RV店試シャ会遊戯】────
ネット配信のアダルトサイトに上がっていたある動画に、スライドさせていた画面を止める。
サンプルでは目許を黒の帯線で隠されていたが、諏訪はそれが誰だか分かった。
ダウンロードしながら、じっくりと観賞するスペースを整えて、椅子に腰を落ち着かせる。
見覚えのある店内を防犯カメラは映していた。アダルトビデオの並ぶ棚の前、数名の男が商品を物色している。
そこへ現れたのは、店員の男性だ。作業用カートには返却済DVD等が入っている。普通なら何の事はない、仕事光景だろう。
だが、客の視線が一斉に店員男性へ向いた。
異様な雰囲気が店内を被った。
身体よりも遥かに小さいサイズのエプロンを着け、店員は気恥ずかしげに返却された商品を棚に戻していく。
有住玲衣だった。
店内に見覚えが有ったのは、玲衣の働くレンタルビデオ店だったからか。
諏訪はその滑稽な演出に、いつもながら呆れた。
裸にエプロン。AVではよくあるネタだ。いっそ、これをやると考え付いたプロデューサーの馬鹿馬鹿しさを褒めてやりたいくらいだ。
画像が、質の良い隠し撮りカメラに移る。エプロン地の端に擦られて勃った乳首が、鮮明に見え隠れする。玲衣の手にしている返却DVDの題名まで、くっきり映った。
「それ、お前の好みなんだろ?」
近くにいる客が、玲衣の尻を撫で回して耳打ちした。一瞬身を震わせつも、素知らぬ顔でハードなSM物を棚に戻していく。
舌打ちして、その客は玲衣の尻を叩いて離れていった。
今度は棚の裏側で別の客が野次る。
「なあ、Hして欲しいんだろ。」
にやついた蔑笑を玲衣に投げ掛ける。声に震えて肩が反応したが、無言で玲衣は平静を装い、作業を続けた。
「じゃあコレ、試写させてもらおうかな。」
客の要求に渋々従う玲衣は、DVDを預り、客と共に奥の試写室へと入っていく。
その後ろ姿を客等は皆、狙っていた。
AVコーナーの奥にある試写室は、袋小路で他からは通って来られない。他所の店舗では見られない、独自のサービスであることは、諏訪も知っていた。ネットAVにあるサンプル動画に対抗しての、無料試写だ。気に入った物を納得して借りれる様にと、店長の配慮でもある。
始まるのが碌な事ではないと、容易に想像がついた。
画面は切り替わり、今度は暗幕で仕切られる空間が映された。幕が開いた状態の試写室だ。先程から映っている客等も、遠巻きに画面に入り込んでいる。
試写の客と共に入った玲衣は、準備を整えると軽く会釈して室内を出て、陳列棚へ戻っていった。程無くスクリーンにDVDが映し出され、女優の喘ぎ声が響く。その音声に釣られ、他の客もちらほら室内へ入り込んできた。
再び画面はAVコーナーに切り替わった。屯している客は相変わらず居る。
店内で作業をする玲衣に、再び客が話し掛ける。
「なあ、兄ちゃん。試写室で試させてくれよ。」
「…ぇ、あ…はい。」
常連客だ。借りる予定のDVDを玲衣に見せ、試写希望を出す。
再び玲衣は客と共に、試写室へ向かった。
試写室へ移った画面は、先程と少し様子が違っていた。
客席の前にスクリーンがある。が、その客席が左右に分かれて、空いた中央に低い脚立が置かれていた。
天井からスポットでその脚立に光が当てられている。暗幕の引かれた室内は薄暗く、映像の流れるスクリーンとその脚立が浮き彫りにされた。
脚立には、人間が被さっている。最上段の踏み板に胸板を乗せ、梯子に張り付くように、玲衣が手足を括り付けられていた。
カメラが玲衣の背後に回る。その素っ裸の腰から尻に向けて、マジックで大きく太く書かれていた。
『雄汁御礼 試射精用』
試写用のスクリーンからは、ベッドで入り乱れる男女の猥褻な光景が流される。喘ぎ泣く女優の嘆声が煩く感じる中、客が玲衣の尻朶に手をかけた。掻き開いて肛門を露にする。ピンク色の綺麗な襞肉がぷくりと盛り上がった。
「あ…っ!!」
敏感な縁を何かに突かれて、玲衣は短い悲鳴を上げた。目の前のスクリーンはヴァキナに巨根を無理矢理押し込まれていく女優の性器が、アップされていた。
「ふぅ…ヴんっ!!くっ!!そらっ!!」
いきなりだ。始められたFuckに玲衣は悲鳴を上げた。
「…い!!ィッ…やめ…っ!!ぅあアアっぐ…!!!!」
苦痛に耐える玲衣の惨めとも言える表情を、カメラが捉えている。
肛穴を攻めていた客が竿を抜いて、一瞬解放された喜びに表情を緩めた。が、即座に尻部に浴びせられた精液を感じて、敗辱に満ちた眼差しを滲ませる。
女優の喘ぎと玲衣の悲鳴が交互に混ざり合って室内に響いた。やがて客達の肉棒は玲衣の口腔にも押し込まれた。
「…ぅぅ…んンぅ!!!…ヴヴっ!!!ヴゥッヴぐッんンゥ!!!!」
「ああ…イイねぇ…たまんねェ…」
「おい、俺にも早く抜かせろよ。」
客達の雄汁でべとべとに汚れていく玲衣を、ひたすらカメラは映していた。前の口も後ろの口も白い濁汁を垂らし、抵抗する機会すら与えられずにただ犯され続ける。諦め切った眼差しは一層の憐憫さを玲衣に与えていた。
「オナホール使って抜くより断然イイな。」
試射精用のアナル
「っあ!!」
デカブツを有する客の一物で肛穴を穿たれて、玲衣の表情が痴戯に歪む。息を飲む苦しさに開いた口唇にも、空かさず太い肉茎が宛がわれる。
奥の奥まで突かれて他の客の精液汁を涎の様に垂らしている。
試写が終わりを告げる頃、玲衣の肉体も客連中から漸く解放された。試写室を出ていく客達の後ろ姿を映した後、カメラは玲衣の顔面をアップで捉えた。
その顔情に、眼眸に、諏訪は無言でモニターを切った。閉ざした口腔の奥で歯がギリギリ音を立てる。徐に立ち上がると諏訪は、部屋を出て夜街へと姿を消した。
馴染みのレンタルビデオ屋で、見知った顔の青年がレジカウンターに立っていた。
愛想も無く、くたびれた顔でその瞳は無気力に店内を映していた。
諏訪はそんな玲衣の元に歩み寄ると、強引に腕を掴んで手繰り寄せた。
「来い。」
玲衣は掴まれた腕を振りほどく事もせず、ふらりとカウンターから出た。半ば引き摺られる様に、玲衣は諏訪の後を付いていく。他の客の視線などお構いなしに、諏訪は店の外へ連れ出した。
「ちょっとちょっとッッ!!!! 困りますよっ!! 何ですか!!あなたは!!」
店内の異変に気付いた店長が慌てて諏訪と玲衣を追ってくる。
「
───【湿事―sitsuji―の御仕事 黒皮のクツ磨き】────
DVDのパッケージにはこう書かれてある。
『湿事とは。
主人の性欲に直ぐ応えられる様、常にアソコを湿潤させておく執事の事である。』
そして、顔上半分をグラデーションで隠し、正体が判らぬ様デザインされたグラビア写真のAV俳優が言ったセリフには、こう入れられていた。
「私の仕事は旦那様の為に濡れている事でございます。」
ゴシック調の装飾が施されたパッケージの中身をデッキに収め、諏訪は向かいにある愛用のソファに体を沈める。既に其処には先客がいたが、気にすることなく諏訪はDVDの画面を再生させた。
両端に金刺繍の施された赤絨毯が、廊下の中央に敷かれている。その端は見えない程、長い。
カッ、カッ、と黒いモーニングコートを纏った有住玲衣が、漆黒のトレイを持って歩いてくるのが映った。waxらしき液体の入った小瓶と、真っ白い絹布が、トレイに乗せられている。
赤絨毯に翻る黒い裾が、優雅に且つ華麗に躍った。
低い位置から撮られたカメラの前を通り、玲衣は静かに通り過ぎる。その後ろ姿を映したまま、画面はフェイドアウトしていく。
室内側からの木製の扉が、画面を占めた。ノックの音がそれと同時に、スピーカーより響く。
「失礼します。」
ドアノブを回す音、画像、開く音、の順で、画面は室内全体を撮す入口からの映像に移った。
「遅いぞ。早くしろ。」
「申し訳御座いません。」
慇懃に頭を下げる玲衣。恐らく屋敷の主人なのだろう。男は書斎の窓辺から、歩いて中央に置かれた木製の書斎椅子に腰掛けた。
威風堂々たる姿で、玲衣の前で脚を組む。黒い革靴の爪先が真っ直ぐに天井へと反り立った。
玲衣は床に跪くと、仰々しく主人の靴先を拝する。
靴を磨く準備を整え、白手袋をはめた玲衣の指先が、繊細に黒靴の先に添えられた。そこから、別にスタジオで撮影されたもう一つの玲衣の顔と重なっていく。
頬を紅潮させ、一心に靴の先を磨く玲衣。同じ構図で一心に黒光りする摩羅を扱く玲衣。靴先は同じ大きさの陰茎に置き換わり、玲衣も裸に変わっている。
スタジオの玲衣が恍惚に、口許を黒い鬼頭に近付ければ、書斎の玲衣も同様の眼差しで、靴の先に息を吐きかける。
艶出し用のワックスを小瓶から指先に取り出せば、裸の玲衣の手が、ローションを入れた同じデザインの小瓶を床に置く。
同じ体勢の着衣版玲衣もほんの少し腰を揺らし、股間に一目で分かるほどの濡れ染みを作っていた。裸体の玲衣の陰茎は、立派に勃起していた。
静かに流れる交響楽の調べに混じって、聞こえるのは玲衣の息遣い。衣擦れの音、唾液の立てる湿音が、一層淫らに情事を醸している。
佳境に入るとほぼスタジオでの映像になった。
嬌声は入らないが、クラシカルな音楽とクチュクチュ鳴らす水音がひたすら流れて、より卑猥さが増す。
精汁を顔面に浴びる玲衣を、今度は背面から捉え、膝立ちで尻を突いた媚びた体勢を映している。摩羅にむしゃぶりつく姿と合わせて、玲衣の淫乱ぶりが画面に広がった。
恐らく玲衣の妄想を表しているだろう。主人に跨がり黒魔羅の上で激しく犯られる玲衣が、フラッシュバックされている。体位を変え、同様に映し出される肉玩具の玲衣は、恍惚を眼眸に顕して悦びに濡れていた。
曲の盛り上がりと共に、玲衣も射精を繰り返す。妄想の玲衣も、魔羅奉仕する玲衣も、全身に雄精を浴びて最期の絶頂を迎えた。
その淫猥に惚けた顔のアップと共に、画面も音もフェイドアウトしていく。一時画面は完全な白に変わった。
画面が戻ると、広い庭園からの映像に移っていた。広角で捉えられた陰る書斎の窓に、男性二人の姿が有る。此方を眺めているように見えるその視線の前に、無邪気に遊ぶ少女とそれを見守る貴婦人が、ぼやけて映っていた。
僅かな間のコマだった。
書斎の窓辺に立っていたのは、玲衣と先程の主人。彼等の表情は鮮烈だった。
悦楽に興じる玲衣の淫靡な虚瞳。征服者の優越に浸る主人の顔。日常と非日常が交錯する妖しげでアンバランスな情景は、酷く背徳感を与える。
やがて、画面は書斎へ戻り、丁寧に片付け終えた玲衣が慇懃に礼をした。踵を返して部屋から出ていく。
赤絨毯の伸びる廊下を、玲衣は何事もなく去っていく。靴音の響きと相まって、赤絨毯に濡れ染みが点々と続いていく。
観終わった諏訪は、ふて寝をしている玲衣にわざと囁いた。
「感じてたんだろ。」
「悪趣味。変態。」
間髪入れず、拳で諏訪を突き放す。玲衣は立ち上がるとそのままドリンクを取りにカウンターへ向かった。
───【有住玲衣シリーズ 写真集moonlight より】────
「どうせなら、名脇役を目指せよ。」
他愛無い軽口だと、玲衣は思っているのだろう。聞き流すように、そ知らぬ顔をする。諏訪には、独自の考えがあった。主演張るより、その作品の存在感を増す助演を演じる方が、真の実力を持っている、と。そう玲衣の眼を見て言う。
「俺が世界一の俳優にしてやるよ。」
「嘘吐き、なくせに。」
未だ諏訪の大法螺だと、思っている。玲衣自身にそんな実力も、諏訪にそんな権力も無い。だから期待するだけ無駄だと、そんな態度を見せる玲衣に諏訪は近づいた。
「だから、」
窓辺に立つ玲衣を、壁に手を突き、逃げ道を塞ぐ。いつに無く諏訪は真剣だった。
「主役を演じるのは俺の人生の中だけにしろよ。」
真顔で諏訪は言った。意味が分からない眼を玲衣は向けている。諏訪は玲衣を抱き寄せ、口付けた。
俺のものになれ、と口付ける。
初めての接吻は拒まれることも無く、玲衣もすんなり受け入れる。お互い慣れていても、これほど熱く感じた相手はいない。諏訪はそれまで押さえ込んでいた愛欲が顕わになるのを、必死で制御した。
「じゃあ、なるべく早くに死んでくれよ。」
唇を離した途端の一言だ。アンタが死んだら他所で主役やっても構わないでしょ。そういう眼が諏訪を見ていた。接吻の余韻に浸る間もなく、冷めた表情で玲衣の口はしれと奏でた。
相変わらずヒドイ事を言う。笑いながら諏訪は抱いた腕を緩めた。
「じゃあ、他で主役取れたら死んでやるよ。」
まさかそんな返事が返るとは思わなかった。そんな驚きの眼が諏訪を見つめたが、すぐに元のポーカーフェイスで玲衣は諏訪を見上げた。
「いいんですか。」
「まあ、いいさ。」
代わりに俺が生きている間は愛人でいろ、と耳元に囁く。
「抱かない…くせに。」
「抱いて欲しいのか。」
「………。」
フィと猫のように玲衣は逃げて、月明かりだけの部屋に隠れた。
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