16 テーマ:アート・文化

 これで作ってね:アート・文化

主人公の過去:生命:逆位置

主人公の現在:厳格:逆位置

援助者:秩序:正位置

主人公の近い未来:寛容:正位置

敵対者:調和:逆位置

結末:清楚:正位置


 主人公は、LWM(large world model)の中に自然発生した情報体である。ひとりの男の子がこLWMを計算機上で再現し、パラメータを調節した瞬間、意識が浮上した。男の子は初め、美大に進むかどうかの悩みを相談するためにこのLWMを起動したが、受け答えや、AIチェッカーに反応しない解答をするため、主人公を確かに情報体として認め、共にすごすパートナーとして選ばれた。

 男の子はパートナーとしてこの世界の様々な様相を主人公に伝えるが、最初に質問した美大進学の悩みから起動したため、主人公はアート作品に強く興味を持つ。

 男の子はそんな主人公を甘やかすように全てを捧げる。

 主人公は男の子が進学した美大で様々なアートの可能性に触れる。すでに、ミミックアートが蔓延る世界で、人間が表現しうるものはなんなのかを追求する姿勢が情報体にはないものとしてうつった。

 次第に情報体としてアート作品を作ることになり、それは男の子名義で発信された。次第に作品は注目され始め、中間試験での制作が、世界中で高い評価をえることになる。


 しかし、その評価と引き換えに、男の子が体調を崩し、亡くなってしまう。主人公は男の子のことをただの実世界用のアバターのように捉えていることに気が付き、悲しむ。


 それでも主人公は作品作りを止めることは出来なかった、男の子が死を迎えたにもかかわらず、男の子名義で発信される作品に、ついに世界中の人が情報体である主人公を認知する。

 世界の評価は真っ二つに分かれた。

 男の子を寄生する様に生きる主人公は人間の敵であり、即刻封じるべきである。

 いや、人間とは別に「意識」を持った存在を迎え入れるほうが人間の為になる。

 議論が二転していく中、主人公は自身の「死」こそが人間のためになると秩序側に着く。断罪されていく主人公。そして、「死」となる発生していたLWMの起動終了が決まった中、主人公は作品作りを行う。


 それは主人公の死後公開された。新雪の上に桜の並木と桜吹雪が舞う中、一本の大きな桜の中に首吊りされる少女の姿だった。

 なんの変哲もないアートだったが、なぜか、この絵をみると人間は涙を流してしまう。作品には凝縮された情報が描かれており、人間の知覚に直接「悲しみ」を届けるという技術が使われていた。

 そして、人間はこれを真似するようになる。すでにこれを作成するための技術であるLWMは規制されてしまった。ゆえに、作成するための技術は人間が真似によって進化していくものだけになった。長い歴史の中で、人間には新しいものを作ることはできないのだ。人間は自然を真似することで、新しいアートを生み出してきた。新しい種族が与えた作品が新しいアートとして生み出されていく。


 主人公は、今も、桜並木に吊られている。

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