第2話
中に入ると少女より年が上だと伺える少年が〖白い光〗が差し込む窓際でエメラルドの森を眺めていた。
『タナトス?なにを見ているの?』
窓の外にダイヤの蝶でも居るの?と少女は見た目の年相応の好奇心を
『何も、何も無いんだよ、セレーネ。ただ、この〖エデン〗を見ることがもう少しで出来なくなってしまうと思うと少し寂しくてね』
見納めだから、そう言って〖タナトス〗と呼ばれた少年は少し寂しいような、悲しいような表情を浮かべる。
〖エデン〗それは、少年と少女のたった2人が住まう隔離された世界。
その世界を構成するものは、ほぼ全てが鉱物であり、唯一違うとしたら、あのツリーハウスのみである。
あれは〖本物〗の木材で構成されており、〖エデン〗と称されるこの世界で唯一、温もりが感じられるものであった。
どこか全てを諦めたような少年は、少女と同じ白銀の髪と瞳が窓から差し込む〖白い光〗を反射してキラキラと輝いている。
『タナトス、何でもう見れなくなっちゃうの?居なくなっちゃうの?』
やだよ、セレーネと呼ばれた少女は今にもその美しい瞳から大粒の水晶の涙を溢しそうにしならがら俯いた。
『そうだね、まだセレーネには早い話だけど、僕たちは100年に1度、1人づつ外の世界に旅立たないといけない決まりがあるんだよ。その100年がもう少しで来てしまう。次は…』
僕なんだよ、そう言おうとしたとき、ツリーハウスの中に見慣れない赤の扉が現れた。
『あぁ…』
来てしまったのか、そう言って少年はその扉に向かいながら、待って!、と手を伸ばしてくる少女に向かって声を掛けた。
『セレーネ。あと、50年程したら〖新しい子〗が来る。その子を可愛がってあげてね。そして、さらに50年したら君もこっちに来なくてはならなくなる』
その時、その子にも今、僕が言ったことを言ってあげてね、少年は少女を慈しむように頭を優しく撫でてやった。
『やだよ、やだよ………。私も付いて行く』
『駄目だよ。君には、まだ分からないだろうけどあちらの世界は、こちらとは全く違う。全てを受け入れる準備が必要なんだよ』
もう、お別れの時間だね、そう言って少女を一瞥し少年は赤の扉を開けて最後に振り返り少女に言った。
『君に会えて良かった。』
と。
少年は、最後の言葉を告げたあと赤の扉の中に消えていった。
少女はというと、目尻に溜まった水晶の涙をポロポロと流しながら少年が消えていった赤の扉をずっと見つめていた。
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