ゲームに夢中
「中間試験おわった~、なのでこれからしばらくはゲームに集中しま~す」
俺は今日もルーイの配信を見る。
随分はっちゃけるようになったなあ、これが素なのか?
それとも別人格なのか?
俺には判断がつかないけど、ルーイが楽しそうにしているならいいかな。
俺も中間試験が終わったので、ルーイの配信を聞きつきベロラントを始めてみた。
FPSはやっぱり自分でやるのが一番楽しいだろ。
やったことないけど。
ああ見えて鈴木は中々の腕前だと自分で自慢していた気がする。
困ったら聞いてみるか、いやルーイに聞けばいいか。
・《モブ》俺もベロラント始めてみるわ、ルーイに追いつくぞ
・何しに見に来てるんだよ
・ルーイ見に来てるだけだろ、聞かなくても分かる
・可愛いもんな
「モブも始めるの!? 嬉しい。そのうちマッチングするといいね」
悪いかよ、可愛いから初配信もきたし、ゲームなんて二の次だよ。
よくわかんないからとりあえずチュートリアルをこなした俺は戦場へと降り立った。
むっず!
なにこれ、敵にエイム合わせるのだけで大変なんですけど。
そもそも敵がどこから来てるのか分からないで横から殺されるし、マップ? も分かんないし、これ初心者どうすんだよ……
「《モブ》、最初は死にゲーだから、死んで覚えなさい」
死にゲーね、いいよ、やってやるよ!
そこから俺は何度も死んだ。
ホントにうまくなれるのかあ?
俺は一抹の不安を抱えつつも敵にエイムを合わせる。
お、ヘッドショットで一撃でキルできた。
隠れた才能が発揮されたか?
ちらりとルーイの画面を見る。
・ダブルキルじゃん
・つよーい
ルーイがゲーム始めたの一ヶ月そこそこだよな?
上達の速度が速い、まあまあ、なんでもこなせちゃうんだろうな。
だが俺もモブとしての矜持がある。
見事なやられ役としてルーイの前に立ちはだかって見せるぜ!
そんなことを考えていると殺されてしまった。
くっ、ルーイめ。
・《モブ》ルーイに追いつくから待ってろよ
「うん、待ってる」
俺はその言葉だけで頑張れるぜ。
その日は勉強もしないでゲームにどっぷりと浸かった。
次の日は目の下にクマを作って登校した。
ちょっと熱が入りすぎたのか、ゲームに力を注ぎすぎた。
今日も下駄箱で来栖さんと出会う。
よく会うなあ。
「おはよう、来栖さん」
「……おはよう、あれ? 田臥君寝不足?」
「ちょっとね、ゲームやりすぎちゃって」
「そうなんだ、何のゲーム?」
「ベロラントっていうゲーム」
「ふーん」
あれ? もしかして俺ちょっと言っちゃいけないこと言ったか?
ボケ―っとしてたからつい答えちゃったけど、俺が《モブ》だと感づかれる可能性が……。
まあ大丈夫でしょ! ルーイって鈍感だし。
その後は特にしゃべることもなく教室に向かい、別れた。
先に座っている友人に声をかける。
「おはよ~、鈴木は補習になりそうか?」
「うーん、まあ大丈夫でしょ、俺意外と要領いいし」
そういう自称は大体うまくいかないんだよ。
俺はまあまあかな、ルーイの配信がいいBGMとなって捗ったし。
昨日のゲームはご褒美だと思えばいい。
ふと来栖さんの方を見ると、何やら女子に囲まれていた。
そのままその集団が移動したかと思うと、その後ろに来栖さんがついていく。
え? なになに。
なんか怪しい匂いしかしないんだけど。
明らかに殺気立っていた吉田が怖かった。
このクラスの女子のトップに君臨する彼女はいわゆるギャルだ。
別にトップだからといって傍若無人に振舞っているという訳ではなく、単に彼女が中心になって女子の輪が形成されているだけだ。
そんな来栖さんとは無縁の二人と取り巻き。
事件のにおいがする。
「俺ちょっとトイレ」
友人たちに適当な言い訳を済ませ、来栖さん達の後を追う。
何もないのが一番だけど、あの様子じゃそうもいかないだろう。
嫌だね、でも来栖さんのこととなると俺はちょっと過保護になってしまう。
彼女の素、なのかな。
あの配信がすべてじゃないけど、知らない一面であることは確かだ。
本当は皆と仲良くしたい、普通の女の子だ。
だからそれを脅かすようなことはあまり起きて欲しくない。
これはどういった感情なのか、俺にはまだよくわかっていなかった。
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