中間試験前
お昼に
そして中間試験は前日に控えている。
おいおい、勘弁してくれよ。
こちとら生粋のモブだぜ?
そんな積極的に来られても話題なんてないんだぜ?
案の定、一緒に食べるという目的は達成されたが、その空気は重い。
だってそんなに会話してないもん!
誰かに、「来栖さんと友達?」って聞かれて、「う~んクラスメイト」って答えるレベルの存在だよ?
でも来栖さんが毎回俺のところにくるのは正直嬉しい。
だってあの女帝の一人だよ!?
俺なんかが関わることもないと思ってた人だし。
未だに何かの冗談かなって思うことにしてる。
「モブ~、もっと来栖さんとしゃべってもいいんだぜ、折角のお昼休みなのに」
俺達が弁当を食べ終え、来栖さんが自分の席に戻った後、赤木がこっそり声を掛けてきた。
「そうは言ってもさあ、話題がないじゃん話題」
「そんなの適当でいいじゃん、もっと軽く軽く、だってあの来栖さんだぞ。それが自分からお昼に誘うなんて、こりゃ脈があるかもな」
「な、何馬鹿な事言ってんだよ、あれだよ、同じ学級委員として親睦を深めようとだな」
「そうかな~、あの尋常じゃない顔、今思い出しても噴き出しそうになるけど」
「笑ってんじゃねーか!」
俺は来栖さんが俺を誘った意図を知っているから、そんな赤木の指摘にも俺の心には響かない。
でも確かにこのまま黙ったまま食事は悲しいよな、折角勇気を出してくれたのに。
よし、俺が何とか突破口を見出してやるぜ。
ルーイを使って。
俺はいつも通り、ルーイの配信が始まるのを待つ。
「コンコン~、ルーイです。今日も来てくれてありがとう」
うん、大分板についてきたね。
俺は保護者の気分でルーイを見守る。
彼女が配信を始めて一ヶ月あまり、慣れてきたのか、俺一人の状態だからなのか、随分ハッちゃけるようになった。
・《モブ》今日は元気だね、というか明日試験じゃなかった? 大丈夫なの?
俺も大丈夫か? というところだが、まあまだ二年の中間試験程度、モブらしい成績を収めておけば問題ないさ。
と言い訳をして、勉強をさぼっている次第である。
「私は普段から授業聞いてるし、配信以外は結構勉強してるから、問題ないかな~」
偉い。
流石と言ったところ、伊達にぼっちやってないぜ。
「あと最近はご飯を一人じゃなくて二人で食べてるんだ~」
ぎくぅ!
お、俺のことだ。
何を言われるのか。
「前に《モブ》が言ってたこと実践してみたら、成功したよ! 断らなさそうな人に一緒にご飯食べようって言ったら上手くいった。 どう? すごくない?」
うんうん、すごいね。
相手が俺じゃなければな、
俺じゃなくてさあ
異性に行くよりハードル低いよ、俺に来る方がハードル
・《モブ》よかったねー、楽しい?
・ボッチ飯卒業おめでとうー
お、俺以外にもコメントが。
最近少しずつだけど、俺以外にもコメントがつくようになってきた、さすがに一対一だと間が持たない。
ちょっと独占感がなくなって寂しい気分もあるけど。
でも来栖さんも配信をしてるんだから人が多いほうが嬉しいに決まっている。
そういえばどうして急に配信なんて始めたんだろう?
一年のボッチは耐えれたけど、二年になってこのままじゃまずいって思ったのかな?
それなら現実で実行して欲しい、俺に絡まれても嬉し困るけど。
「ありがと~、うーん誰かとお昼ご飯なんて中学校以来だけど、黙食っていうのが普通だったから、あんまりしゃべらないかな~、けど楽しいよ」
楽しいんだ、その言葉を聞いて俺は嬉しかった。
初めは俺の提案を実行しただけ、その後も気まずいから一緒に食べているだけかとも思っていた。
よかった。
俺は心の底から安堵した。
少しでも来栖さんの力になれている。
その事実だけで今日も戦っていける。
「それじゃあ、今日はここまで、またね」
配信が終わり、俺は勉強に戻った。
ラストスパート頑張るぞ!
中間試験当日、ぐっすりと寝た俺は、元気な体で学校へと向かった。
久しぶりに下駄箱で来栖さんと会う。
なんか気分がよくて、テンション高めに話しかけてしまった。
「来栖さん! おはよう、勉強出来た?」
「……まあまあ」
まあ、まあまあですって、上位十人に余裕で入るって人はさすがいうことが違いますねえ。
「来栖さんのまあまあって俺の数倍くらいありそう」
「……そうかな?田臥君も頑張ったんでしょ?人それぞれだよ」
「そうかなー、まあ結果が出ればすぐ分かることだしね」
今日はなんだか調子がいいぞ。
真面目に勉強したおかげかもしれん。
俺は自分の勤勉さに自信を持ち、中間試験へと望むのであった。
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