学級委員
俺がコメントでアドバイスした翌日、さっそくクラスでの委員決めが始まった。
「じゃあ最初、学級委員やりたい人ー!」
しーんである。
皆それぞれ忙しいし、一番面倒くさそうな役割はやりたくないものだ。
そのまま誰も手を上げぬまま時間だけが過ぎていく。
すると担任の教師が何やら箱を持ってきた。
「こうなると思ってな、クジを作ってきた! 男女二つだ。この中から当たりを引いたやつを学級委員長にする。異論は認めん!」
うそー! まじでー! いやうちら部活あるんで……
そこら中から阿鼻叫喚が聞こえてくる。
他の委員ならまだいい、図書委員とか、美化委員とか、風紀委員とか。
それなりに決まった仕事をすればいい。
しかし学級委員は別だ、色々なことに駆り出され、え? こんな仕事まで? というものを押し付けられたりもする。
でもまあ、こういうのは大概俺以外の奴に決まるもんだ。
この手のくじであたりを引いたことなどこの人生で一度もない。
俺は軽い気持ちでくじを引き、開封しないで席に着いた。
「よっしゃああ外れええ」
「よかったー」
「くじとか人権無視っすよ先生」
ふふふ、皆安堵の息をついているようだな。
さて、俺もこの熟成した外れのくじを見ますかね。
俺は三角に折られた紙を広げた
当たり
俺は紙を閉じた。
おかしいな、俺疲れてるのかな?
もう一度
当たり
当たったああああああああああああああああああああああ。
こんなくじ当たっても嬉しくないよおおおおおお。
俺の平穏な高校生ライフが……。
相手は、相手の女子は誰だ。
別に誰でもやることは変わらないけど、こう俺を引っ張ってくれるような強い子がいいかな?
ダメ?
女子の方は誰も手を上げない。
くじは全員引き終わった。
「それじゃあ当たりを引いたやつ、手を上げろ!」
はあ、しょうがないよ、ひいちまったもんは。
俺はすごすごと右手を上げて、担任に知らせる。
「男子は……
俺が手を挙げた後、女子からは誰も手が上がらない。
そんな! 俺と組むことがそんなにショックなの!?
確かに俺はかっこいいとは言いずらいし、マッシュルームカットのひょろがりだけど、清潔感のある男の子だよ。
大丈夫、勇気を出して、さあ手を挙げるんだ。
俺が願っていると、ゆっくりと女子の手が上がるのが見えた。
お、誰だ。
河合さんとかだと俺的にはありなんだけど、誰かなー?
はい。
はいはいはい。
そっかー、モブなのにそう来ますかー
その綺麗に上げられた右手の根元には
あーあ、顔が引きつってるじゃん。
確かに、確かに俺は昨日、学級委員とかどうとかのたまったよ?
でも来栖さん手を上げなかったじゃん。
やる気なかったじゃん。
なのにこれは、何のいたずらかな?
俺は現実逃避したくなるような事柄に頭を抱え、先生も「大丈夫か?」って顔をしている。
なら初めからくじなんて考えるな!
人には不得手ってのがあるんだよ、無理をさせるな。
「よ、よし。それじゃあ女子は来栖だな。田臥と二人で頑張ってくれ」
ワーぱちぱちぱちとみんなの祝福という名の生暖かい目、お前ら、他人事だと思って。
いや、まあこれを機に来栖さんと仲良くなるとか、そういうことを考えるようにしよう。
だって俺みたいなモブにこんな機会は回ってこない。
なら思う存分使ってやろうじゃないの!
……で、学級委員てなにやるの?
なんかまとめる役だよね。
来栖さんに聞いてもわからなそー。
とりあえず、HRの最後に他の委員決めを俺達がすることになった。
先生の説明が終わり、俺と来栖さんが黒板の前に登壇する。
来栖さん俯いちゃってるじゃん。
そりゃ目立つの怖いよね。
仕方がない、ここはモブらしく俺が引っ張っていこうじゃない。
「来栖さん、俺が皆に聞いていくので、黒板に書いていってもらえないかな?」
「……分かった」
そう、簡単なことである。
苦手ならやらなければいい。
俺の方が若干ではあるが人前に出てしゃべることが出来る。
それならその役割を分担すればいいだけのこと。
来栖さんも俺も得するwin-winな作戦だ。
作戦ってほどのものでもないが。
「では、図書委員やりたい人ー」
すっすっと何人かが手を挙げる。
俺もやるなら図書委員がよかったー!
あーもずるい。
俺は上げた人の名前を、全員を覚えていないので、教卓にある名前表を見ながら来栖さんに教えて書いてもらう。
俺と違って来栖さんは全員の名前を把握しているらしく、確認もせずすらすらと漢字で書いていく。
田中、とか飯田、とかなら分かるけど、
そんな来栖さんの助力もあり、委員決めはスムーズに終わった。
多数になった場合は、普通にじゃんけんで決めた。
「よし、全部の委員が決まったな。二学期には生徒会の選挙もあるぞ。よく考えておくように、それじゃあまた明日」
担任の先生のあいさつでHRが終わる。
皆が部活や帰宅、ちょっと遊びにと各々の場所へ帰っていく。
俺もいつもの面子のところに帰ってきたが、なんか様子がおかしい。
「いいよなあ、役得か?」
「一概にそうとも言い切れませんよ、相手はあの来栖さんですし」
「俺は嫉妬の目が怖いよ」
そう怯えなくても大丈夫だよ。
来栖さんはクールだけど優しい子だよ。
多分。
だってルーイの時はもっとしゃべ……、ってたわけでもないわ。
今後の生活に不安を覚える一日だった。
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