ルーイ
別に、期待してた訳じゃないんだからね!
嘘です、ちょっとはお話出来たらなーって思っただけです。
相変わらず俺は気の置けない友人達と騒いでいる。
ちらりと彼女の方を見る。
興味はなさそう。
いつもスマホ見てるけど、なにしてるんだろう。
恐れ多くて近づくことのできない俺に知ることは出来ない。
授業が終わり、いつもの面子で帰宅していると、友人の一人鈴木が趣味の話をしてきた。
「最近ハマってる配信があってさあ、Vtuberなんだけど、話が面白くて、しかもゲームもうまくてさあ」
あー他人から言われると見たくなくなるパターンなんだよな。
動画とかでもそうだけど、他人に面白いって勧められて見るものって変なバイアスが掛かって面白さのハードルがあがっちゃうんだよね。
俺は普段配信はmetubeで見てるから、あんまり他のサイトを知らない。
彼が教えてくれたのはmetubeじゃなくてtwotchだった。
知ってはいた。
ゲーム配信が活発なサイトだ。
でも俺はやっているオンラインゲームなんてないし、特に食指が動かなかったので登録だけしてスルーしていた。
そうだな、たまにはマンネリ解消の意味も込めて行ってみるか。
「そこまでいうなら見に行ってみるよ、あとでURL送っておいてくれ」
「まじおススメだから、見てみな」
「はいはい」
家に帰ってから鈴木から送られてきたURLを開く、そこには右下にVtuberの顔、真ん中にドーンと銃が写っていた。
「FPSか」
FPS、ファーストパーソン・シューティングゲーム、日本語だと一人称視点シューティングゲームだ。
「あんまり好きじゃないんだよね」
確かに敵を倒すのは爽快だし、銃をぶっ放すのは楽しいだろう。
でもそれを他人目線で見たら?
爽快感は薄れるだろう。
確かにこの男の話はリアクションと共に面白い。
それは認めよう。ゲームも多分上手い。
オンラインゲームで対人戦を行っているようだが、流れるように敵を倒している。
「鈴木の言葉に偽りはなし、けどタイプじゃないんだよなあ」
俺は割と
内面? そんなの後付けていいんだよ。
人間みんな外見気にしてるだろ。
それだけ第一印象ってのは大事なの。
俺は鈴木に勧められた配信を切り、twotchのサイトトップに戻る。
「ふ~ん、こんなに一杯あるんだあ」
今まではmetubeでおススメで出てきた配信を登録して見たり、ザッピングしていたが、Twochtはまずサイトの作りがすごくいい。
貴方におススメのゲーム、今熱い配信者、上には注目の配信がズラリと。
「視聴者に優しいサイトだなあ」
俺は感心しながらぶらぶらと配信を移り見る。
大半が結構ふざけたもので、リアクション芸といった感じで楽しませようと配信しているのを見る。
そんな中で俺の目にすごく可愛い絵がついた配信を見つけた。
ご丁寧に
「初配信」
と書いてある。
掘り出し物か?
絵がいいってだけで人くるからね。
俺はその配信をクリックした。
視聴者は俺含めて十人くらい。
右下にいる真っ白の髪をして、頭には狐のような耳、狐人っぽいVtuber、名前は……ルーイ!
ルーイちゃんね、可愛いじゃん。
コメントでも可愛いが連呼されている。
・可愛い
・かわよ
・草
・処女?
下劣なコメントに少し嫌な気分になったが、まあ不特定多数に向けて配信している以上避けられることではない。
しかし、反応がない。
あれ?これ配信ついてるよね、ゲームも動いてるし。
ちなみに、ゲームは先程鈴木から紹介されたゲームと同じようなものをやっているようだ。
ゲームに夢中で見えてないのか?
それはそれで配信者としては致命的だと思うのだけど。
そして恐らくこの子は弱い。
なんか見ると死んでる。
死んでから暇なのに一言もしゃべらない。
・一言もしゃべんないんだけど
・コメント見てる?
・止まってたりするかも
・不具合かな?
・しかし弱いな
無言、爽快感のないゲーム、そして無言、
視聴者がまた一人、一人と減っていく。
俺も正直離脱したかったが、この絵をした子がどんな声を出すのか気になって、最後まで残ってみることにした。
最後まで残っても何も言わなかったらそれまでだ。
そして配信の視聴者は俺一人になり、ゲームも終わってしまった。
当然彼女のチームは負けた。彼女でいいよな、これで男だったら俺は怒るぞ。
・お疲れ~
俺は精一杯考えて、無難な一言にした。
だっていきなり変な事いって変な目で見られたらいやじゃん!
「……ありがとう、最後まで見てくれて」
可愛い! 声もカワイイ!!
最後まで残ってよかった。
でもどっかで聞いた気がする声だなあ。
「それじゃあ……今日の配信はここまで……またね」
・またね~
こうして俺とルーイちゃんの二人っきりの配信は終わった。
今度配信あったら見に行こ!
フォローしとこ、俺が一番だ! なんかファンクラブの会員番号0001みたいでかっこいい!
俺は上機嫌になりながら勉強に戻った。
明日もやってくれるかなあ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます