オーロラの雨

夕日ゆうや

オーロラの雨

 オーロラって綺麗だよね。

 そう言ったのは柚希ゆずきだったと思う。

 俺と柚希は仲の良い恋人だったと思う。

 そういられたと思う。

 少なくとも、あの日までは。


あさひ~」

 俺に抱きついてくる柚希。

「もう、なんだよ。甘えん坊だな。柚希は」

「えへへ。だって私だけの旭だもの!」

 甘えた声が耳朶を打つ。

 優しい雰囲気を纏った柚希はいつも笑顔だった。

 柔和で元気な彼女はいつも俺の隣にいた。

 隠れ家的な存在の、古民家がやっているカフェに入ると、いつも通り柚希と一緒にデートプランを考える。

 今度はここの公園に行こうか?

 そんな可愛らしい言葉が飛び交う。

 高校生で安く済ませるなら、公園デートもありだ。

 そんなに背伸びをしなくていい関係に、俺も満足していた。

 柚希も満足そうに頷く。

 オーロラは見に行けないけど、でもそれでもやれることはあると思う。

 彼女の言った言葉はどういう意味なのかも知らずに……。

 それでも俺は無邪気にデートのプランを考えるのだった。

 俺はその日の夜にを調べ、とあるプレゼントを用意した。それも彼女の誕生日、6月18日に合わせて。

 雨も降るし、いいだろう。

 そんな甘い考えでいた。

 6月18日はいつも通り、高校からの帰り道だった。

「これ、プレゼント」

 雨が降っていたのはちょうど良かった。

 俺が渡したのはオーロラの色をした傘だった。

「わたしがオーロラ好きなの、覚えてくれていたんだ!」

 感極まった柚希は俺に抱きついてくる。

「あー。俺と結婚しよ、か……?」

 俺は目の泳いだ顔で応じる。

「ふふ。強がり」

 柚希は俺の唇に指を当てて、そっとなぞる。

 そのあと、じんわりと涙をこぼす柚希を見て、俺は空を見やる。

 オーロラの傘に雨粒がボタボタと落ちてくる。


 オーロラの雨が降り続ける。

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オーロラの雨 夕日ゆうや @PT03wing

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