第25話『真似してみた』
そんな過去があって。
俺はかなり強引に自分が抱えていた孤独感を瑠姫姉によって粉々に破壊された。
それはもう徹底的なまでにね。
そして、そんな過去があるからこそ俺には雪菜の気持ちが少しだけ分かる。
もちろん、俺が過去に抱えてた孤独感とか悩みなんか雪菜には到底及ばないだろうけど。
それでも、欠片くらいは理解できるつもりだ。
「雪菜」
ソファーに腰をうずめる雪菜。
俺はその隣に座りながら、彼女の名を呼ぶ。
「なに?」
「いや、その~~………………すまんっ!!」
俺は悪いと思いつつガバァッと。
思いっきり雪菜を抱きしめた。
「へ? え!? ちょっ。なによ? いきなりどういうつもり? もしかしてそういうつもり!?」
いつもの余裕そうな態度が雪菜からなくなる。
当然か。いきなり抱きしめられたんだから。
けれど。
「ふ……ふふ。あらあら拓哉君。ようやくその気になってくれたみたいね?」
さすがは雪菜というべきか。
すぐに余裕そうな態度を取り戻し、自分のペースに持っていこうとしている。
もっとも、それでさっきの慌てた態度がなくなるわけじゃないけどな。
「ふふっ♪ あなたがその気なら私は構わないわ。存分に私を使って。あなたが好きな誰かにしたかったこと。代わりに私ですれば――」
不敵な笑みを浮かべているであろう雪菜。
俺はそんな彼女に構わず。
彼女の体を抱きしめたまま、その頭に手を伸ばし。
「よ……よーしよしよしよし?」
撫でた。
いつか俺が瑠姫姉にされたように。
ちょっとおっかなびっくりな感じではあるが、とりあえず撫でてみた。
「………………へ?」
再び間抜けな声を上げる雪菜。
頭を
けど、構わない。
俺は心の中で『えぇい、ままよっ』と唱えながら手を動かした。
「よーしよしよしよし」
「いや、あの……拓哉君? なんのつもり?」
疑問の声を上げる雪菜。
もっともなお言葉である。
しかし『なんのつもり?』と聞かれてもなぁ。
俺は瑠姫姉にされた事を雪菜にもしてあげなきゃと思って彼女の頭を撫でてるだけだし……。
「しばらくは彼氏としてこうしていたいんだ。ダメか?」
なんの答えにもなっていないけど、とりあえず俺は彼氏だからという事で押し切ってみることにした。
すると雪菜は。
「それは……。はぁ……。いいわよ。確かに私はあなたの彼女だし。それに、『なんだって受け入れてあげる』って前に私は言ってるものね。拓哉君の好きにすればいいわ」
そう言って。
雪菜は俺に体を預けてきた。
「ありがとう。そうさせてもらうよ」
雪菜の温かい体温。
柔らかな感触。
脈打つ鼓動。
どれも記憶の中にある瑠姫姉の物とはまた違う
それを少し心地よく思いながら。
俺は雪菜の頭を撫で続けた。
途中、ビクンと雪菜が震えたりして。
瑠姫姉だったら絶対に見せないような反応に俺は少し噴き出したりして。
それでも構わず撫で続けた。
かつて瑠姫姉が自分にそうしてくれたように。
雪菜が眠りに就くまで。
しつこく撫で続けたのだった――
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