第10話『彼女さんを助けてみた』
高橋雪菜が尾行してきている。
俺は家を出て少ししてからその事に気づいた。
というか、あれだけ禍々しいオーラを出されれば誰でも気づくだろと思うくらい、今日の雪菜は不機嫌なようだった。
「はぁ…………」
彼女が尾行してきている事に気付いても、俺は構わず出かけた。
途中で
むしろあの様子だと途中で雪菜は職質とかされてもおかしくないし、そうなったら尾行どころじゃないだろうとタカをくくっていた。
なのに――
「あぁ、なんだてめぇ!?」
「いきなりしゃしゃり出てきて。潰されてえのか? あぁ!?」
「格好つけんじゃねえぞ。お
どうしてこうなってしまったのか。
俺を尾行してきていた高橋雪菜。
彼女があまり素行が宜しくなさそうな男達に絡まれたのはすぐわかった。
それを冷静な彼女なら勝手に切り抜けるだろうと思って隣の車両から見ていたら予想外。
彼女が男達に何を言ったのかは知らないが、男達は雪菜に暴力を振るいそうな勢いで迫っているじゃないか。
さすがに放っておけず、こうして自分から出てきてしまった。
本当に……色々と台無しだ。
「拓哉……君?」
小さく俺の名を呼ぶ雪菜。
男二人に腕を掴まれている様はまるで捕らわれのお姫様みたいだ。
もっとも、お姫様にしては少しお淑やかさが足りないと思うが。
「話があるなら俺が聞きますよ? だからとりあえず彼女から手を放しちゃくれません? そっちもこんな所で騒ぎになるの嫌でしょ?」
とりあえず
こんな所で騒ぎになるのは俺も嫌だし。
そう俺は思っていたのだが。
「は? うっせぇよ。死ね」
さっき雪菜を殴ろうとしていた奴。
そいつは俺が掴んでいる腕と逆の腕で殴りかかろうとしてきた。
「はぁ……」
どうやら穏便に済ませたいという俺の願いは叶わなかったらしい。
なので。
俺は掴んでいた男の腕を思いっきり
すると当然。
「いだっ。いだだだだだだっ」
俺に殴りかかろうとしてきた男。
そいつは俺を殴るどころではなくなり、痛みから逃れようともがく事になった。
「てめぇっ!」
「コロスッ!!」
その様を見ていた残りのお二方。
奴らは雪菜の腕を掴むのをやめ、こちらに殴りかかって来た。
どうでもいいけど、沸点低すぎないか?
「よっと」
俺は捻っていた腕をパッと離し、迫る男達の拳を軽く弾いて男達の体勢を崩す。
結果、お二方の狙いは逸れ、その先には。
「あべっ!?」
さっきまで腕を捻られ、痛みに悶えていた彼らのお仲間めがけて二人の拳が突き刺さる。
手加減なしの一撃だったのだろう。お仲間の男が「うべっ」と派手な音と共に電車の床に転がる。
「はぁ!? えっ。いや。わ、悪い!! 俺達はそんなつもりじゃ……」
「だ、大丈夫か!?」
意図せずお仲間を殴ってしまったナンパ男二人。
そこでちょうど、電車が駅に着く。
「行くぞ」
「あ……」
俺は混乱している男達をよそに雪菜の手を強引に掴んで電車から降りる。
「おいコラ。待てやぁっ!」
「このままで済ますと思うなよっ!」
「ぶっ殺す!!」
なんとも物騒な男三人組。
ただし、奴らはバカだった。
「そこのお三方。少しいいかな?」
背後から聞こえる大人の人の声。
ちらっと見えたが、警官だった。
なんでこんな所に警官が居るのか。
まぁ当然か。
あれだけ電車内で暴れてたんだ。
乗客から警察に電話があったか。
もしくは
色々と考えられるが、大体そんな所だろう。
ともあれ、こっちも軽く暴力を振るってしまったし。この場に居ると面倒な事になるのは間違いない。
なので、俺は後ろを気にしつつ雪菜と共に降りるつもりのなかった駅で降りた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます