オーロラの雨

篝火

隠れ家喫茶 オーロラ

 ここは、何処にでもある喫茶店……。

 今日も心の疲れた方がこの店に足を向けに来る。


「マスター、どうすれば良いんだ……」

「いきなりですねww……とりあえず、お話をお伺いしても良いですか?」

 こうやってこの店に入るお客は、必ず何かしらの悩みをお持ちで訪れる人が多い。

 月に20人いれば多い方なのだか、お客さんが来ない日もざらにある程、営業は芳しくない。


 理由はいくつかある。

 まず、この店にたどり着けるお客さんがそれほど居ないこと。

 次に、営業が14時~16時までの二時間だけであること。

 最後に、営業者が私しか居ないことに由来している。


「あなたのお悩みに合うコーヒーは、粗挽きのエスプレッソですね」

「じゃ、それ一つとマスターの絶品ホットケーキを一つ頼みます!」

「かしこまりました」

 こうして、悩みに合いそうなコーヒーを入れることでお店を回している。


 チリーン!お店のドアを開けて入って来たのは、二十歳ハタチ前後の女性です。

「いらっしゃいませ!お好きなお席にお座りください」

「え……!?あの……コチラって喫茶店なのですか?」

「ええ、そうです……しがない喫茶をしております」

「あっ!すみません!……その……このお店に入らないといけない感じがしてしまい、何のお店かもわからず入ってしまったので……ごめんなさい!」


 女性の言葉に納得のいった顔をする男性客は、その女性に向けて声をかける。

「嬢ちゃんも悩みを持ってる人なんだな!安心しなココは、そんな奴らが辿り着く喫茶店なんだぜ!」


 そう、ココは悩みを持つもの達が立ち寄る喫茶店。

 人は『隠れ家喫茶 オーロラ』と呼ぶ。

ココに……この喫茶店に立ち寄るお客は、何かしらの悩みをお持ちで訪れる。

 そんな喫茶店のマスターである私の源氏名は『雨』、訪れる人たちの悩みを洗い流す様に付いています。


 今日もまた一人の悩めるお方が、このお店に辿り着いたみたいです。


               (完)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

オーロラの雨 篝火 @ezweb

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ