16.【最後の地球人♂、仙女や魔女と楽園を創るため月の海を航る。(中略) ~ルナマリアノーツ~】 和泉 健星さん

https://kakuyomu.jp/works/16817330657979526735


【最後の地球人♂、仙女や魔女と楽園を創るため月の海を航る。あと凍てついた地球の解放や帰還も目指します……え? 「船長にはわたしたちの旦那様になってもらうんだから帰っちゃダメ」? ~ルナマリアノーツ~】

が、正式なタイトルです。

サブタイトルでは文字数制限に掛かりました。


あらすじ(作品ページより引用)

「船長。いえ、だんなさま。あなたには『ここ』の長になってもらいます」


ボク、イサリは地球生まれのごく普通(?)の少年だ。

けどある日、旅行中に出逢った小さなお嬢様・ルーナと、水で満たされた蒼き月の海へ飛ばされて……。

雪と氷で閉ざされた地球を解放し、この月の海で<魔女>と呼ばれ迫害されてきた女の子たちを邪悪の輩から救うため、自称<仙女>のカグヤたちと一緒に船旅を続けてきたのだけれど……。


「あのコたちの心を射止めた責任、ちゃんと取らなきゃダメだよ?」


ふと気付けば、トンデモない状況になっていて……⁉


最後の地球人♂は、恋にバトルに航海に開拓にと大忙し⁉

蒼き月の海を航る最後の地球人(♂)と、彼を慕う個性豊かな女の子たちが織りなす「異星海」ファンタジー!



☆☆☆



第16弾です。

和泉 健星さん、ご参加ありがとうございます。

がっつりネタバレ含みますのでご注意下さい。





第一章まで読みました。

さて、本作は古式ゆかしい鈍感スーパーヒーロー作品です。

謎のスーパーパワーに目覚めた高校生が、行く先々で美女、美少女、美幼女と出会いながら、ばったばったと敵をなぎ倒していく、という感じです。

まだ一章なので、少し変わるかもしれませんが。

構成も王道です。

航海をしながら(グランドストーリーを消化しながら)、途中の港で仕事をする(イベントをこなす)、という形です。



内容としては、作者の帆船と小さな女の子への愛に溢れてるな!という印象です。

帆船の細かなパーツの名称とか、種類、乗組員の呼び方に仕事内容など、細かく書き込んであります。それでもたぶん、書きたいことの半分も書いてないんだろうなと思います。


さて、読み始めてまず気になったのが、最初の導入の詩?です。

形式が中央に揃えてあるんですが、スマホだと――私のだからかもしれませんが――行の端っこが折れてしまってます。

視覚的にずれてしまっているので、ここは直された方がいいと思います。

パソコンとか、スマホでも横画面で見ると大丈夫です。

ディスプレイの大きいスマホでも大丈夫なんでしょうか?私だけかもしれません。



そして#0の導入が結構大きなポイントになってると思います。

構造としては王道です。

先にエンディングというか、未来のシーンを見せておいて、次話で始まりから辿っていく、という形です。


この導入で受ける印象で好みが別れるんじゃないかと思います。

作者のキャラ愛の強さによるのかな、と思うんですが、私はネタなのかマジなのか分からない、という印象を受けました。


突っ込んでいいのか悪いのか?どう捉えればいいのか?という感じです。

ああもうこれは、ドーンと真ん中走ってるラブコメ(ネタ)なんだな、と読むと次に進めるんですが、あれ、これやばい人かな?(マジ)と思うと進むのが怖くなります。

良し悪しではなくて、前者が広い間口で、後者が狭い間口になります。

更に、結構な文字数も割かれているので、益々、判断しにくいかと思います。


表現としてなんですが、傍点の多さも特徴です。

フリなんだと思います。

フリを効かせたいという、こう、と思います。っていうことでしょう。

ただ、という問題があります。ネット小説と文字の詰まりは頭の痛い問題です。これは読みにくいとはまた違う視点です。


またここにも繋がるんですが、特に#4辺りまで、テンションが高いです。

これも構造上の仕組みです。


笑いの作り方の話になるんですが、ボケとツッコミ。

基本的な形です。

コメディ色が濃いので、笑いの文法で解いていきます。

この二つが何を果たすかというと、ボケというのが絵を描き、ツッコミがその絵の説明をするという役割分担です。

このボケはここがおかしいんですよ、っていう説明をすることで、聞く側が「ホントだ!」って笑うって言うのが基本的な形です。


古い話ですが、めちゃイケって番組でペーパーテストをするって回がありまして、生徒役のトンデモ回答を、教師役の岡村さんがいじるっていう形です。

これを見るとトンチンカンな解答を、その過程を説明することで笑いにしているのがよく分かります。ただ解答だけ見ても、笑えない。何書いてるか分からないんです。

それを説明してもらえると笑える。


この役割を言い換えると、ボケが燃料、ツッコミが着火剤なんです。

ボケが悪いと笑いは大きくならないんですが、ツッコミが失敗すると笑いにならない。

逆に言うと、ボケが渋くても、ツッコミが頑張ると面白いように見えるんですね。


ここで話が戻ります。

今作は、基本的に主人公・イサリのモノローグで話が進みます。

で、その中で、自分からこぼれ落ちた感想を、自分で拾って、そこにツッコムっていう形を取ってるんですね。ボケツッコミと呼ばれる形です。


本来、ボケツッコミは、『ボケて』『ツッコム』んです。

ボケるって意図的です。

しかし、今回は感想や感情なので、『ボケて』ないんです。

ボケてないんだけど、それをツッコムことによってボケに見せている。

だからツッコミが頑張らないとボケにならない。


ツッコミが頑張ると賑やかくなります。

ここも拾って、これも拾って、ここで捻って、こう繋いで、ってわーって騒ぐことになります。これはテンション高くやらないとできません。

ハライチってコンビの漫才見るとよく分かります。こちらはコンビですが、ツッコミが頑張ると賑やかいって伝わると思います。

この形が序盤、特に顕著です。


序章の中盤ぐらいに入って来ると、異世界のキャラも出てきて、イサリの常識と、異世界の常識ってギャップがはっきりしてくるので、ここまでの一人ボケツッコミも減ります。

併せてこの辺りからテンションが落ち着きます。落ちついてもまあまあ高いですが。


テンションが高いまま進むって結構難しいですよね。

難しいというか好き嫌いがあります。

大きな声で叫ぶ芸風の芸人さん、長く見てられるかどうかって感じです。


で、これはつまり、対象年齢なんですよね。

主人公が高校生で、テンションが高くてって展開だと、対象年齢は中高生向けじゃないかな?と思います。

ただここにも難しい部分があって、高校生が主人公ですし、近い世代の人が移入しやすいと思うんですが、高校生にしては少し視点が老成してるな、とも思います。


選択肢の問題なんですね。

大枠の流れを触ろうとするのが大人で、大枠の流れに流されるのが子どもです。

例えば、異世界転生がなぜ大人に受けたかというと、子どもだけど大人の価値観で動くからです。

問題に対して、その根源を探して向き合う。経済が破綻しそうな領地に転生した場合、商売を始めよう!じゃなくて、商売が反映するように整えようとします。売るのは商人を探して、自分は街道を整えて流通が起きるようにするんだ!みたいな。

その場凌ぎでは解決しないって選択肢があるからです。


対して、子どものままだと、お金が無い?無いなら稼げばいいじゃない!ってなります。屋台を曳くぞ!みたいに。

視野が狭い。視野が狭いと言うか、今自分が要る枠組みの中で活動しようとします。

何故なら、その選択肢を知らないからです。これは子どもゆえの経験値の不足です。

そして、少しずつ『視野を広げていく』物語になります。おかしいな?屋台は売れてるのに全然楽にならない……ほかに何か原因があるんじゃないのか?って、もっと大きな枠に気付く。教養小説とかって呼ばれるジャンルです。人格形成、自己成長です。

成長の物語なので、未熟から始まります。


割りとこの『未熟感』が薄い主人公です。

人格形成がすでに成っている。


ただもう私は10代の感性は分からないので、今の10代の未熟感がどのようなものかは想像できません。もしかしたら今の10代ってこれぐらいしっかりしてるのかもしれません。

ただ少し、対象年齢が少しブレてるんじゃないかな?という感想は抱きました。


序章中盤からはかなり安定してきまして、『これぞラブコメ』って感じになります。

ヒロインも現れ始めて、鈍感の本領も発揮し始めて、敵も出てきて、物語も加速していきます。


たぶんしっかりエンディングを定めて創られているかと思います。

物語がどういう風に収束していくのか、笑いながら楽しめると思います。


ぜひ一度ご一読を。

https://kakuyomu.jp/works/16817330657979526735


改めまして、 和泉 健星さん、ありがとうございました。


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