6.【その時まで、君を待つ】 スティリアのしえる さん

https://kakuyomu.jp/works/16817330664304873420


あらすじ(作品ページより引用)

取り留めのない話から始まるミステリー。

僕が巻き込まれた……? それとも僕が巻き込んだ?

観測した世界の結末は――。



☆☆☆



第六弾です。

スティリアのしえるさんがご参加です。

繋がりのある方もおられるんではないでしょうか?

ありがとうございます。


ちなみに私はこんな企画やってますが、感想書きます企画に自作は投げてません。

――だって怖いもの!笑


というわけで本題です。

がっつりネタバレ含みますのでご注意下さい。

本作は完結済みのミステリーなので、いつもよりご注意下さい。




"たぶん読みにくくて、わかりにくい作品だと思います。

ごめんなさい。でもだからこそ、読者からしたらどうかを聞いてみたいです。(コメントより)"

ということで、何やらとても弱気だなぁと思って読み始めたんですが、わざと分かりにくく書いているということで、弱気でも予防線でもなく、意図的にそうしてるんだよっていうことだったようです。

すごく物書きっぽい前フリだな、と感心しました。

後、敬語使うんだなって思いました。


さて、そんな本作ですが、読みにくいということはないです。

分かりにくいということもないです。

ただストーリーを捻って捻ってしてるので、先読みというか予想を裏切られることがあり、そういう部分で読みにくい、分かりにくいというのがあるのかもしれません。

ミステリーってこう、予想しながら読むので外れるとそうなるのかもしれませんね。


最近はミステリーもほとんど読まないし、お作法もよく分かってません。


読み始めて思ったのは、モチーフがしっかりした作品だなと。

「取り留めのない話から始まる」、ということだったんですが、取り留めるつもりがないのが、バシバシ伝わってきます。

ああ、もうオチが決まってる話だこれって思いました。


と、思ったんですが、プロットを組まずに、オチもイメージはあれど勢いに任せてというような内容が後書きにありました。

読解力に自信を失った瞬間でした 笑


大オチは確かに取って付けた感がありました。

ラッピングきれいにしといたら可愛くなるやろ!みたいな 笑

これはこれでテクニックだと思います。


ただ、ストーリーの構成で錯綜はしてないんじゃないでしょうか?

プロットという文章化をしてないだけで、そこまで迷いながら書いてる感じはありません。


ミステリーってそういうものかも知れません。

というか、そういうものでしょうね。

言ってもオチありきで書き始めないとミステリーにならないですもんね。


私の思うオチを決めてないと、しえるさんの考えるオチを決めてないの精度に大きな開きがあるんではないか?と自己防衛しています。

つまり、書き出しに迫力を感じたということですね。


では、いよいよ中身に入っていきます。


今回は「観測」がテーマになっていて、同時にトリックの核にもなっています。

シュレーディンガーの猫ってよくモチーフにされてますけど、観測しなければないのと同じで、観測したときに初めて存在が確定する。

最近は量子力学なんかも人気あります。


『姑獲鳥の夏』は観測とはまた違って、認識できなければないのと同じっていう話でしたね。

目に映ってるもののうち、欲しい情報を無意識にピックアップしてるよ、って理論で作られてました。

カクテルパーティー効果とかRASとか言いますね。これまた最近人気の脳科学です。


前振りが長くなる時は書き方に迷ってるときです。私の癖です。

今回の『観測しなければないのと同じ』理論、ミステリーとしてはどうなんでしょうか? 個人的にはあまり好きではないです。


ミステリーって読み手の想像力と作者の表現力の勝負じゃないかと思ってます。

これはスティーブンキングがグリーンマイルの後書きか何かでそんなことを書いていて、なるほどなと思ったからです。

『謎が解ける快感』がミステリーの醍醐味ではないでしょうか。


そういう作法があるものだと思ってるので、嘘ついちゃうと成立しないというか、興覚めします。

有栖川有栖と爆笑問題の太田が対談かなんかしてて、「記憶違い」とか卑怯だよねって話してて、ミステリー作家って大変だなって思った記憶があります。


ただし、嘘とミスリードの境界線も難しい部分もあり、確かに嘘は吐いてないんですけども。

この辺りの境界線は好みの話でもあるかと思います。



ただし、これをミステリーとして読まないならば、話が変わると思います。

現代ドラマとか、恋愛小説として読むということす。


ヒロインの死を認めたくない、認められないっていう主人公の心の動きとして読むと、共感度は高くなると思います。

実際、後書きにも、ミステリーとしての純度は下げているというニュアンスのことも書いてあります。


『観測』という距離のある言葉を使っているところから、すでに話が始まっており、その上で、観測が感情へと変遷していくストーリーと読むととても面白いです。


ただそうならば、ミステリー要素は要らないんじゃないかとも思うんですがいかがでしょうか。

ただ、あらすじにミステリーって書いてるんだよなあ……っていうこれは愚痴ですね 笑


後は細かい話で、ヒロインのキャラクターが妙に男が書く女感が強いなとか、ヒロインの自殺の仕方がさすがに常軌を逸してるとか、ヒロインの不幸はもっともっとぼやかしてもいいんじゃないかとか、ヒロインの家庭を詳らかに毒親として表現するなら、主人公の家庭も毒親設定にした方が後追い自殺の理由が鮮明になる気がするとか――毒親かもしれませんが――、このあたりも好みの話になるのかと思います。


あらすじをもう少し変えた方が読んだ時の違和感というか、落差が少なくて楽しみやすくなるのではないかな?と思いました。


さて、どういう心構えで読むかでずいぶん評価が変わるんじゃないかと思う今作、ぜひ、ご一読を。


https://kakuyomu.jp/works/16817330664304873420


改めまして、スティリアのしえるさん、ありがとうございました。


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