第5話 操縦テスト

 そう、あの時は大丈夫大丈夫。任せて!って思ったんだよね。

「聞いてないよ!こんなすごいダンジョロイド使ってるなんて!」

 レベル999で、冒険者ランクSS……。詳しくない私にだって、これ、相当すごいの分かるよ!

 まぁ、天才だしな。私の義弟って。

 操作パネルでライブ配信中の映像を確認する。

 操作パネルを覗き込んでいるキャラクターの……ダンジョロイドの頭が映る。

 む?なんと、女の子キャラだよ。

 和樹がキャラメイクしたの、女の子だ。ぷふふ。しかも、猫耳っ!

 ダンジョンドロップ品の装備だから服装は勇樹の趣味とは違うだろうけど……。どんなキャラが好みなんだろう。

 パッと顔を上げて、撮影用マイクロドローンに視線を向ける。

 いや、待って、見上げると、今度はステータスの配信映像確認画面が見えないぞ?

 ……えー、鏡とかがないと無理なのかぁ!ちぇっ。

 ダンジョロイドは素体っていうシンプルに金属でおおわれている。素体のまま使うこともできるけれど、大体の人は写真やイラストを基に、3Dプリンターで作り上げたカバーで覆う。

 そうすると、かわいいダンジョロイドやかっこいいダンジョロイドなど、オリジナルのダンジョロイドが出来上がるらしい。

「”聖剣”のスターマインって名前だし、くっころとかいう女騎士みたいなかっこいい見た目かな?」

 どっちか言うと狐系?

 私のようにぽよぽよ狸系とは違うんだろうなぁ。

「うお!」

 配信映像に視線を戻すと、視聴者の人数が表示されている。

「もうすぐ1万人……み、見なかったことにしよう」

 そっとステータスを閉じる。

 さて、1時間何をしようかな。

 周りを見回す。

 恐る恐る、ダンジョンの壁に近づいていく。

 歩く動作をすると、歩いている感触がある。

「すっご!VRスーツすっご!それからコックピットもすっご!」

 ランニングマシーンみたいになってるんだよね?走れるかな?

 走ってみる。

「うわ、なんか体がいつもより軽い気がする。これもVRスーツの性能?」

 いや違うかな?ダンジョロイドの動きをVRスーツが私に伝えてるから?

 あれ?でもダンジョロイドは私の動きが伝わってる?

「……、分からないことはどうでもいっか!」

 ダンジョンは洞窟だ。ゴツゴツとした岩でできている。岩肌の色は黒とか灰色ではなくて、赤茶だ。色が分かるくらい、明るい。何の光だろう?

 それとも、ダンジョロイドの目に当たる部分に赤外線カメラとかなんか暗い場所でもはっきり見えるのがついてるのかな?

「……、分からないことはどうでもいっか!」

 体が軽く感じるのだ。走るのをやめて、体を曲げてみる。

「お、おお!柔らかい。掌が地面についた!……ような感覚が手のひらに伝わっている!」

 でも、現実の私はこんなに体が柔らかくないはずなので……どうなってるんだろうか、コックピットの中の私。

「……。まあいっか!」




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