第3話 どうも。いちゃこら回でござる。
あれは3日前のことだ……。
「と言うわけで、俺の代わりに1か月頼む!」
「え?私が……ダンジョロイドを操作するの?お友達に頼むわけにはいかないの?」
「ダンジョロイドは共同所有者としてDNA登録してるの、義姉ちゃんと義父と母さんだけなんだよ。おやじは仕事で忙しいし、母さんは機械音痴だろ?頼めるの義姉ちゃんだけなんだよっ!」
20歳の義弟が1か月の短期留学することになった。
機材を留学先に運ぶわけにはいかないというのは分かる。
走ったり剣を振ったりと言う動作を実際にしながらダンジョロイドを操作するのだ。そのために、全身の動きをスキャニングする?なんかすごいでかい機械が必要で、3畳もの大きさがある。空輸するにしても何日かかるのか。
「分かってると思うけど、3日に一度は1時間はログインしてくれよ?」
「はいはい。もう3回目だよ、それを聞くの」
なんでも3日間ログイン……ダンジョロイドをダンジョンで動かさないとダンジョンが死亡したものとみなすらしい。
装備したドロップ品がダンジョンに吸収され、経験値がリセットされてレベルが1になるそうだ。
ダンジョロイドは生き物じゃないから消滅しないけれどすべてがゼロからやり直し。
義弟がダンジョロイドを手に入れたのは3年前。ほぼ発売と同時に手に入れている。
ダンジョンが発見されてから義弟はダンジョンに夢中。情報を集めまとめサイトを作ったり動画投稿したり。
お小遣いとサイトの広告収入と、高校生になって始めたアルバイト代とをつぎ込み、足りない分は親に頭を下げてダンジョロイド一式を手に入れた。そこから毎日欠かさずログイン。
4歳年下の、10歳の時に父の再婚でできた義弟。それはもうかわいくてさ。
「またやってるの!」
「勉強しなさい!」
「夜ふかしは駄目!」
なんて言いたくなるよね?だって、心配だもん。私のかわいい大切な義弟が、ダンジョン廃人になって人生失うなんて、想像しただけでも心配で心配で……。
でも、うちの義弟は天才だった。
進学校の成績は常に1番。誰もが知ってる大学の難しい学部に合格。
そのうえ、ダンジョンまとめサイトの更新も欠かさず。ダンジョロイドによるライブ配信は、まとめサイトから流れてきた視聴者もいたためあっという間に人気配信者に。
広告費でより高性能なダンジョロイドに買いかえ。DNA登録型にもいち早く買い替え、大学生になってからは長期休みはほぼ1日中ログインしてた。……学生の特権だよね。随分レベルも上がったらしい。
というか……。
「本当に、留学するの?」
ダンジョロイドを手に入れてから毎日ログインしていたのに。
「なに?俺がいないと寂しい?」
勇樹が私の頭をぽんぽんと叩く。
「子供扱いしない」
「いや、子供扱いじゃなくて、なんか少女漫画にあるじゃん」
まさか、子供扱いじゃなくて頭ぽんぽんの方か!
こういうのは、恋人ができたらしてあげなさいっ!」
義弟の勇樹は、姉馬鹿目じゃなくてもイケメンに成長してると思うんだ。何度か街を歩いていてスカウトされたりもしてるし。でも、ダンジョンが好きすぎて全く今まで男女関係のことに興味がないみたいで、彼女もいたことがなかった。
「何?義姉ちゃんは恋人にこんなことしてもらってるの?」
勇樹が私の頭をさらにぽんぽんとする。
「それとも、こういうの?」
それから、顎くいっをしてきた。
くぅ、いつからこんなに私のことをからかうようになってきたんだっけか。
「やめい!って、壁ドンもやらなくていいから!」
顎くいから、壁に押し付けられてドンされた。
「はぁー……勇樹、分かってるよね?分かってやってるんだよね?
「何?壁ドンより床ドンがいいって?」
「もうっ、私の彼氏いない歴が24年だって分かってて恋人にしてもらってるのかとかからかってるでしょう!もう、もう、もーーーーっ!」
ぽかぽか、ぽかぽか。
壁ドンしてる勇樹の胸をぽかぽかと殴る。
ぎゅむっ。
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