03 この行程は果たして必要だったのか
本来ならば、表題のことはツアー企画元の旅行会社に言うべきことだろう。でもねぇ……なんとなく、カクヨムに書きたくなった衝動が止められなくって(滝汗)。まあ、いっか。
(あとで、エブリスタさまに転載しました)
昼食は倒木からみのタイムロスで、だいぶ遅くなりましたが結構よかったですよ!
んで昼食前に添乗員さんから「ガイドさんが入ります」云々とアナウンスが。
ん? と思ったけど。わたし個人的には、このあとの玉置神社参詣が控えているので聞いたときは気にしてなかったのね。
ちな、昼食会場に着いたころには大雨。
食事が終わり「世界遺産・
あくまでもわたしの推測だけど、旅行会社から日当もらっているのかもしれないね。ガイドさんの「世界遺産を紹介したい!」という情熱は理解できるんだけど。 十津川村の老人ホームは、あの屋根の建物で入居者は39人で、などという類いの情報は果たして要るのだろうか。
昼食会場から少し離れた急な坂道でバスは停まる。ガイドさんはツアー参加者を引率しながら歩きつつ「この樹の名前は知ってますか?」などなど、教えてくれた。雨は、どんどんどんどん激しくなっている。標高が高い現地からは、そびえる緑の山々に雲がかかって風に流れていく光景がとても美しく見えた。
ガイドさんはわたしたち参加者を、なんとしても昔ながらの古民家がかたまる果無集落に連れていきたかったようだった。それはありがたいのだが。彼女の情熱は理解できるのだが。
ガイドさん先頭に、でこぼこの石段を下っていく。その途中で事件が起きた。
石段に使われている石は凹凸が激しく、大小の水溜まりが出来ている。それが果てしなく下方へと続いているのだ。いやな予感がした。
わたしのすぐ目の前にいた女性が、踏みしめる足を滑らせた。「あっ」と声を上げた女性は傘を持ち、カバンを下げたままで石段の脇にひっくり返った。
仰臥の姿勢でバタバタ動いている女性の前にいた黒ワンピース女性と、すぐ後ろにいたわたしはひっくり返って起き上がれない彼女にそれぞれ手を伸ばした。転倒女性は、わたしの手を引きながら、よいしょ……と言ってから。のろのろと態勢を立て直した。
黒ワンピの女性には「ありがとうございます、すみません」って言ってた。わたしには完全にスルーだった(悲しい……)(そんな振舞いをされて、とてもショックだったのよ、わたし)(他人に親切にするのも、だめなことなのかと小一時間ほど真剣に悩んだ。礼を言われたくて手を差し伸べたわけではないのですよ、断じてそれは違います)。
「すみませんけど、止まってくださいー」と、ずんずん進んでいく集団に声をかけたけれども転倒者近辺以外は、誰にも聞こえていなかったみたいだった。お婆ちゃんだから耳が遠いから、仕方ないよね。
かなり気をつけて歩いていたつもりだったが、スニーカーはかなりの度合いで湿っていた。まさか、こんなに降るとは思わなかった。
そして、めざしていた場所に着いたガイドさんはとても得意そうな表情で、有名なポスターに使われた民家の説明をしてくれた。あいにくの雨で古民家の扉は閉ざされていたが。
ガイドさんは「足元が悪いですけど、もう一か所。(あそこへ)行きましょう!」と言った。めまいがした。
わたし個人的な話になるけれども、今年の一月の大寒波の翌日。凍結した横断歩道で転倒して背骨を圧迫骨折しているのだ。なかなか完治してくれないのよ圧迫骨折って。さっき転倒者が発生した石段よりも更にでこぼこしていて、水溜まりばかりの石段を歩きはじめた途中で聞こえた会話。
「雨の中で行く意味あるんですかね」
「こんな時間よりも、玉置神社で過ごす時間に宛ててほしい」
迷ったけれども添乗員さんに「すみません」と声をかけてしまった。冬場に転倒して圧迫骨折になったこと、滑りそうな道だと歩くのが怖いと言って、わたしだけバスに戻ってしまった。
すみません、ほんと。滑ったり転んだりするの怖いんです。今でこそ、背筋や大腰筋を鍛えるために水泳やアクアビクスをがんばっていますけれどもね。
そこらへん少しでも整えておかないと、立っていられないほど背中や腰が痛くなっちゃうんですよ。
バスに戻ると運転手さんが「どうしました?」と声をかけてくださった。
「目の前で水溜まりだらけの石段で滑って仰向けにひっくり返った人がいらして。わたし、今年の冬に同じように転倒して圧迫骨折になっちゃったんです。ガイドさんの情熱はわかるんですけど。あれを見たらトラウマよみがえっちゃって。怖くなって、もうついていけない」
「あはは。今日のメインは玉置神社だからね!」
そんな風に仰っていただけて、ほっとしました。
ちなみに古民家に向かう途中で転倒してひっくり返った女性、なにごともなかったようで。やれやれ。
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