後ろを語って?
釣ール
狙われたが最期
誰かを傷つけるのがこんなに楽しいとは思わなかった。
常に見張って、粗を探す。
ふん。
最高の気分だ。
このままいい気分で自動販売機へ向かった。
値上げばかりでコインを出すのも苦痛だ。
だが、高揚とした気分で飲む飲料水は酒より勝る。
私は好きなジュースのボタンを押すと後ろに気配がした。
誰もいない時間帯。
今のところは。
「誰かを傷つけた感想はいかがですか?」
後ろを振り返ると誰もいない。
ただの疲れか。
すると目の前に腕が傷だらけの女子高校生が立っていた。
まるで私がここに来るのを待ち構えていたかのように傷だらけの女子高校生は話を畳みかけてくる。
「あなたは、自分の後ろに誰かがいるかもしれない経験を語ることが出来ますか?
それができる人間って少ないんですよ。
その話ができたらあなたを一人前の人間と認めて差し上げます。」
勿論これは嘘。
できるわけが無いのだ。
後ろに誰かがいる恐怖を語ることなど。
そんなことはこの女子高校生が知っているはずなのに!
「あなた、誹謗中傷しているでしょう?
味わいのある暴言を気に入ってしまったから。
うふふふ、あははははは、
い っ しょ に き て !」
女子高校生の力が私を引っ張り、トラックと衝突する。
「どうでしょうか?
後ろが語れないなら、前で共に居なくなれる共有の方が近代的でしょう?」
あははははは…
えっ、へへへへへ
えへへへへへ、あはははははは!
もう、狙われていたのだ。
この女子高校生に。
きっと端末なんかなくても見ることは出来るのだろう。
そして女子高校生はまた誰かを探す。
人間が不完全である限り。
後ろを語って? 釣ール @pixixy1O
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