第25話〰ファースト・センシティブ〰


※※注意!!今回のお話ではなるべくマイルドになるよう心がけておりますが、性描写の強い場面を描いております。苦手な方はブラウザバックお願いいたします!!すみません!!※※



















(うーん。詰んだ……)

とあるレトロRPGを装備変更と呪文無しで攻略する縛り企画を自分のブログで始めたのだが、終盤の無属性攻撃無効のボスがどうしても倒せない。


女忍者のボスなのだが、常に『気配遮断』の能力でうっすら半透明。普通の武器攻撃が全く効かない。属性アイテムが存在するが、あいにく手に入る数が少なすぎてHPを削りきれない。


現実の透明人間……私はむしろ物理弱点なのに、このうすら半透明はほんとインチキすぎる。絶対に倒そう。




あ、ゲームで思い出したが、ネトゲで1人女友達ができた。ボイチャで仲良くなったその人は『毒味ちゃん』ってハンネでよく一緒にオンラインゲームをしている。


声しか分からないものの結構サバサバした話好きな女性のようで、世間話がほんと面白い。

名前の由来は「親に持たされたクソマズい弁当を友達と交換し合って、自分以外全員異界送りにしたからドクミってあだ名がついたんだよ」だそうだ。

異界送りだともう友達既に死んでるじゃん…。


んで、私はネット上では『ナギ』と名乗っている。たまにタイプミスで『nagi』が『negi』になる。ナギでもネギでもどっちだっていい。




ゲームの腕は私と同じかちょっと上ぐらい。エンジョイ勢って表現がしっくりくる。


自分が女になってからいろいろ辛い、痛い体験をした。日常生活で面倒臭いことも数しれず。

毒味ちゃんのたまに話す女性あるあるは、ほとんど共感できる。もはや全肯定Bot。

毒味ちゃん「女ってほんと外出る時めんどいよね」

ナギ「それな」

毒味ちゃん「もうメイクくそダルいからマスクですっぴん隠して外出てる」

ナギ「そ、それな…」

毒味ちゃん「いっそ何もかも着飾んないで外出たいわー」

ナギ「それな!!!!」


時々返答に困る時があるが、概ね賛同。そうなんだよ、ほんとオシャレって強制されると面倒なんだよな。

毒味ちゃん「ってかさ、学校までずっと化粧すんなって言われてきて、大人になった途端化粧しろって言ってくる社会がまずおかしいって話」

ナギ「あー、確かにー……」


たまに核心を突くことも言うから驚かされる。

確かに。この社会はおかしい。全然透明女に優しくないよ。


歯に衣着せぬ物言いで、ドキッとする話題もあがる。

毒味ちゃん「タンポンのヒモ見失うと人生終わったって思わない?」


……は?

思わずフリーズした。何だそれ、全然意味わからん。

何なんヒモって…使った事ないし、形すら知らないよ。

似たようなものだとタンポポとかちゃんぽんしか聞き馴染みがない。


ネギ「うん……私使ったこと無くて」

毒味ちゃん「え!?1回も!?」

ネギ「うん。必要と思ったこと無くってさ」

毒味ちゃん「うわ、マ?走る時とかヨガとかさ、何も気にしないでやれるようになるあの魔法のグッズを?1度も?」

ネギ「う、うん……やっぱ変かな?」

毒味ちゃん「変じゃないんだけど…何か人生損して生きてるってか…。いつものナプキンだと股の辺り何か嫌な感じすんじゃん?タンポンだとアレ一切無くなるしさ」

ネギ「うっそ、マ!?」


この上ない情報だった。あの不快感から開放されるアイテムが存在するのか!?

毒味ちゃん「うん。ちょっとドラッグストア行って買ってみな。人生変わると思うぜ」

ナギ「わかった。考えておくよ」

毒味ちゃん「あ、それ絶対買わないヤツだ」



なんてやり取りをしてだらだらと時間を過ごした。

いやあ、透明でも気の置けない友達ってできるんだな。最高。





……1週間後。

デジタルタトゥーを増やし、例のブツを買った。

正直透明だから血、おりものは見えないし、出てくる穴自体が見えない。でも不快感から解放される、って聞くと、1度だけでも試してみたいと思った。



開封の儀。

何か白い筒と薄い水色の筒で構成されたそれは、ミサイルみたいな形状をしていた。これを自分に刺すの……?


簡単にやり方を説明すると…差して、押して、抜く。

あんまり口にしたくないので大まかなやり方だけ表す。


透明女化して、そもそも自分の陰部がどんな風になっているかを見たことがなく、患者さんの陰部洗浄や膣錠でしかアレの位置がわかっていない。

お風呂の時シャワーで洗ってるものの、そんなにまじまじと観察していない。泡とか付ければよく見えるんだろうけど…うーん…





寝る前トイレに座った状態で、挿入部分が見えないままタンポン片手に手探りで挿入を試みた。


(………んん?)



全然入らない。いや、先端がほんの少しだけ入っているようだが奥まで入っていかない。構造的には・―・、みたいな位置だったよな……どうだったっけ?

見えないから意味無いのに、陰部を見ようと前かがみに姿勢を変えて再チャレンジ。すると……


「ぎゃあ!!!!!!!」


勢い良く入ってしまい、全身がゾワッとした。

鳥肌がたつ感覚…ともちょっと違う感じ。うまく表せない。

ついつい潰れたカエルみたいな声出ちゃった。来世はカエルルートかもしれない。


奥まで入ったら水色の筒を押して、白い筒を抜くとの事。


(……。さっぱりわからん)


なぜいきなりすんなり成功したのかも、挿入位置が正しいかも一切分からない。まぁ何かが入っている違和感は感じないから大丈夫か?

例の毒味ちゃんが言っていたヒモがだらしなく垂れ下がっている。これが人を絶望に陥れるヒモ……。




モヤモヤしたまま寝床についた。私は寝てる間によく出血しているようで、不快感で起床することもしばしば。


(こんなんで大丈夫なのかな……?)


透明だから、視線を自分のお腹に向けると白い綿とヒモが浮かんでいるのが見える。


今はミサイルみたいな形ではなく、爆弾と導火線みたいな形状。どっちみち爆薬かい。



…………。

不安を覚えながらも、眠りについた。







翌朝。

なんだか今日は良く眠れた気がする。時計は午前9時。危なかった……仕事だったら遅刻してた。


朝一番のトイレに入って、大事なことを思い出した。

「…あ、ヒモ!!!!」

導火線を引っ張り爆弾処理。その白い綿は水分を多く含んでおり、感触が気持ち悪かったが……


ナプキンが全く湿っておらず、サラサラ!!

これはすごい。マジ神。不快感0。

毒味ちゃんありがとう……





毒味ちゃん「……んでさー、扇風機を強にしたら先生のヅラが吹っ飛んでチョークまみれ。白髪のジジイに早変わりしたの」

ナギ「ふふっ……何それー?めっちゃヤバい」



他愛ない会話が愛おしい。

無色な日常が色づいていくのを感じた。





つづく

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