スノーホワイトが手にした異能

 ラクタの放った衝撃波がホワイトに襲い掛かろうとする寸前、ホワイトは全身の痛みを堪えながら身体を起こし、間一髪で衝撃波を躱した。

 「タフなやつだ」

 ラクタは浮遊しつつ、ホワイトに接近する。

 ホワイトが発砲した。

 氷の銃弾がラクタの腹部に当たり、ラクタが悶える。しかし、ラクタは死ななかった。

 「痛え。撃たれた衝撃ってのは結構痛いんだな。でも弾は俺自身には当たってないぜ。ヨウマのシールド化能力で服と皮膚をシールドにしてあるんだ」

 ホワイトは次にラクタの頭部目掛けて撃つが、ラクタは一度仰け反っただけですぐに体勢を戻した。

 「あー痛え、けど俺は死なない」

 ラクタが攻撃を再開しホワイトが吹き飛ばされる。

 「この指輪も、イワオの攻略本で見つけた物だ。おまけに、お前が殺ったシュウヤの魔力増幅能力で威力を増強させてある。俺はお前よりも強いんだよ」

 「他人の……力、でな」

 脇腹をおさえ、ホワイトは立ち上がった。

 「なに?」

 「戦えばわかる。お前自体は大したことない。それでも来訪者たちを従わせ、力をつけた。どうしてやつらはお前に従ったのか。それは心理的誘導だ」

 「どういう意味だ?」

 ラクタの動きが止まり、地面に着地した。

 「お前は多分、来訪者の前に現れる時、必ず浮遊した状態で姿を見せるだろう。来訪者は場所も時間もわからない所にいきなり転移して気が動転している。そんな状況で宙に浮いた人間が目の前に現れ、余裕のある話し方で喋れば、誰だってそいつが強大な力を持っている異能者だと思い込んでしまう。そしてお前は力で屈伏させるのではなく、相手に同情して、あくまで自分も虐げられた者の一人として親身に接した。そうすることで、たちまち相手はお前にすがり、力を提供する。さぞかし扱いやすかった筈だ。社会経験の乏しい人間なら尚更な」

 「言わせておけば……!だが、そういうお前はどうだ?その氷を自在に操る力はこの世界に来て手に入れたんだろ?お前だって戦闘経験のない人間に容赦なく異能を振りかざし、殺戮を繰り返してきたじゃないか。所詮お前も同じ穴の狢だろうが!」

 ラクタは衝撃波を起こそうと、指輪を嵌めた右手を前に出した。

 ホワイトがラクタの右手に銃を撃った。

 指輪が砕け散る。皮膚をシールド化させていなければ、指がちぎれ飛んでいたことだろう。

 「くっ──」

 ラクタは右手を抑え、ホワイトを睨みつけた。

 「違う。僕のこの氷の力は、ここに来る前から持っていた」

 「じゃあ、お前がこの世界で手に入れた物は一体なんだ!」叫ぶラクタ。

 「僕が手にしたのは」

 ホワイトは撃鉄を起こし、言葉を続けた。

 「心だ」

 ラクタが浮遊したタイミングにホワイトが銃を撃ったため、弾丸がラクタの股間にヒットした。

 激しい激痛がラクタを襲い、ラクタは地面に落ちて、のた打ち回った。

 ホワイトは駆け出してラクタの上に伸し掛かり、首を捻ってラクタの息の根を止めた。

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