村壊滅の真相

 ホワイトは階段を上り、ラクタたち来訪者のいる部屋のドアの前にこっそりと忍び寄った。

 「リョウタ。いい加減割り切れ。俺たちにはお前の力が必要なんだ」

 ラクタは落ち込むリョウタを未だに説得していた。

 「俺が、俺がエルシィを、村の人たちを殺した」

 「何度も言うな。もうやっちまったんだから仕方ないだろ」

 「でも、俺……」

 ラクタがリョウタの胸倉を掴む。

 「うるさい!お前はエルシィとかいう女に告白した。だが振られた。その振られた腹いせにエルシィを殺し、村を全滅させたんだ。それは変えようのない事実だ。お前はもう立派な殺人鬼なんだよ。今更後悔したってもう遅い」

 「うぅ──」

 リョウタは激しく泣いた。

 「おい、イワオ。何か闘争心を植えつけるような宝具が何処かに隠されてないか?道具でこいつの精神を制御しないと俺たちの仕事がいつまで経ってもできやしない」

 「待ってくれ、攻略本で調べるから」

 イワオが攻略本をペラペラとめくる。

 「おい、これ以上泣くとお前を殺すぞ。お前がめそめそしているのを見てると、昔の自分を見てるみたいで腹が立つんだよ」

 「だって、だって」

 「強情なやつだ。少し意識改革のためのお仕置きが必要みたいだな」

 ラクタはリョウタの首を絞め始めた。

 「ぎっ……」

 「どうだ、少しは従う気になったか?ん?」

 「あ……」

 リョウタが意識を失い掛けたその時、スノーホワイトがドアを蹴破り、三人にショットガンを向けた。

 「そこまでだ。全員動くな」

 「お前、どうして!?」

 イワオが驚く。

 「ワトの役立たずめ」

 ラクタがリョウタの首から手を離した。

 リョウタが咳き込む。

 「動くなと言った筈だぞ」

 ホワイトが天井に銃を放った。

 「手を離さなかったらリョウタは死んでたぞ」

 「構わないさ」

 冷たい眼差しと冷たい声でホワイトは言った。

 攻略本を胸に抱えたイワオがラクタの前に立ちホワイトに迫った。

 「この野郎、俺らを舐めてると──」

 ホワイトはM29を懐から取り出し、右手だけで発砲した。撃った反動で右腕が上がる。放たれた氷の.44マグナム弾が攻略本を貫通し、イワオの左胸を貫いた。

 イワオは目が開いた状態で死んだ。

 「お前、全員殺すつもりだな」ラクタが言った。

 「最初からそのつもりだ」

 ホワイトは今度はラクタに銃を撃った。ラクタは咄嗟に宙に浮いてそれを躱し、右手中指に嵌めた指輪から衝撃波を出した。ホワイトが部屋から吹き飛ばされ、三十段ある階段を転げ落ちていく。

 「リョウタ、手を貸せ。スノーホワイトを殺して俺たちの野望を果たすぞ」

 リョウタは無視してしゃがみ込み、目を閉じ、口を噤んで両耳を塞いだ。

 「ちっ、一生そうしてろ」

 ラクタは捨て台詞を吐いて部屋を出ていった。

 彼はスノーホワイトを始末した後は、リョウタも殺害することにした。

 「どいつもこいつもクソばっかりだ。みんなで俺をコケにしやがって」

 ラクタは階段の終わりで倒れているホワイトを視界に捉え、再び衝撃波を繰り出した。

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