力に溺れた者の末路

 ホワイトは銃のマガジンリリースボタンを押しながら銃を振り、その勢いで空になったマガジンが銃から飛び出して地面に落ちた。ホワイトは間髪入れずに銃に新しいマガジンを入れてスライドを戻した。

 「ほら、逃げろ逃げろ」

 シュウヤは何度も火球を放った。

 ホワイトは白いローブを煤だらけにしながら走った。

 「このまま撃ち続けても、終わりそうにないな」

 ホワイトは何発か発砲してから銃をホルスターに収めて逃げに徹した。

 シュウヤはホワイトを追い詰めることができていると思った。

 やつは逃げるのに精一杯だ。

 これなら勝てる。

 やつの伝説も今日で終わりだ。

 ホワイトが立ち止まった。

 シュウヤはホワイトが逃げるのを諦めたと思い、火球を放った。

 「死ね!!」

 ホワイトが爆炎に包まれる。

 「やった!」

 爆炎が消えた所に、ホワイトの姿は無かった。

 「肉片も残らずに吹き飛んだか!」

 シュウヤは腕を上げて喜んだ。

 「随分嬉しそうだな」

 笑い声を上げるシュウヤの背後に、氷のナイフを持ったホワイトがいた。

 「は?」

 シュウヤは後ろから首に腕を巻きつけられて身動きが取れなかった。

 「あっ、がっ」

 ホワイトは氷のナイフでシュウヤの首を切り裂いた。

 事切れたシュウヤは解放され、崩れるように倒れた。

 スノーホワイトはシュウヤの攻撃の最中、自らの能力で氷の虚像を作り出し、その虚像を走らせていたのだ。シュウヤは力を振るうあまり、ホワイトが虚像と入れ替わっていることに気づかず、ホワイト本人の接近を許してしまったのである。

 「虚像に色をつけるのに苦労したぞ」

 ホワイトはシュウヤの死体から杖を取った。

 「さて、火を消さなくちゃ」

 スノーホワイトは地面に両手を突いて瞳を閉じた。

 燃えている範囲の地面から冷気が現れ、段々と火が小さくなり、やがて火が鎮火した。

 辺りに闇が戻った。

 「危なかったな」

 「お気に入りのローブが煤だらけだな」

 先ほど逃げた二人の男──片付け屋が戻ってきた。

 「終わると出るんだな」

 ホワイトは肩の煤を払いつつ言った。

 「俺たちはそれが仕事だからな」

 「そうだ仕事だ」

 ホワイトは軽くなった金貨袋から金貨を二枚出して片付け屋に渡した。

 「今日はこれまで。コインが殆ど残ってない」

 「それは残念」

 男たちは少々残念がった。

 「馬鹿言うな。僕はもう帰る。あんたらも今日は帰ってくれ」

 「そうだな」

 「そうしよう」

 「お疲れスノーホワイト」二人が声を揃える。

 「ああ。お疲れ」

 スノーホワイトは少しくたびれた様子で、片付け屋と別れた。

 家へと帰る途中、ホワイトは回収した杖を見ながら、シュウヤの言葉を思い出していた。

 「あいつ、この杖をイワオの攻略本で見つけたとか言っていたな」

 ホワイトは、自宅で眠る男が何か知っているかもしれないと思い、馬を走らせ家路を急いだ。

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