襲撃者
カンタを始末したホワイトの所に、二人の男が現れた。
「こいつか」
「こいつかね」
二人が訊ねる。
「いや、この男は今日こっちに来たやつじゃない」
ホワイトはホルスターに銃を収めた。
「今日だけで何人殺した?」
「何人だ?」
「この男で二十人目だ。また頼むよ」
男たちに金貨を渡す。
「今日は大収穫だ」
「また酒が飲める」
「その前に僕のコインが無くなりそうだよ」
ホワイトは小さくため息をついた。
「ホワイト」
男二人が同時に彼の名前を呼んだ。
「どうした?」
「新しい来訪者だ」
二人が口を揃えて言った言葉を聞き、ホワイトは収めたばかりのリボルバーを再び構えた。
「お前がスノーホワイトだな」
三人の前に一人の男が現れた。
「俺はシュウヤ。お前と同じ、異世界から来た者だ」
シュウヤは杖を手にしていた。
「また来た」
「また来訪者だ」
「あとは任せたぞホワイト」
「またコインが増える」
二人の男はカンタの死体の手と足をそれぞれ掴み、闇夜に消えた。
「ホワイト、お前の存在だが、正直鬱陶しいぞ」
シュウヤは杖を振りかざし、激しく燃える火球を発生させてホワイトに放った。
ホワイトは後ろに避けた。
直前までホワイトのいた地点が爆発し、草花に火がつき、その火が辺りを照らした。
「すげぇ。イワオの攻略本で見つけた杖は強えぞ!何がスノーホワイトだ。この杖で燃えカスにしてやる」
ホワイトはリボルバーをしまい、もう片方のホルスターから氷で作ったオートマチックの拳銃──ベレッタM92FSを取り出した。
「おいおい、ダーティ・ハリーの次はリーサル・ウェポンか?お前、この世界に来ないほうが良かったんじゃないのか」
シュウヤは気味の悪い笑みを浮かべていた。
「氷なのによく判別できるな」
「それだけバレルが出てりゃわかるさ。俺の前の世界の趣味はサバゲーだったんだ」
ホワイトはシュウヤへと銃を放つが、シュウヤが着けている黒いマントに弾をはじかれてしまった。
「俺は」
「会社の」
「新事業を」
「パーにして」
シュウヤは一語喋る毎に杖を振り、火球を放つ。
ホワイトはその度に躱し、銃を撃つ。
「窓際に」
「追いやられ」
「同僚の彼女に」
「振られて」
「線路に飛び込んだんだよ!」
カンタのアジトに火がつき、一気に燃え上がった。
「俺を追いやったクソ上司も」
「俺を振ったクソ女も」
そこでシュウヤは攻撃を止めた。
「今の俺を見てどう思うだろうな。たとえあいつらに悪かったと言われたってもう遅い!俺はこの世界で王になってやる!!ハハハハハ!」
何故、異世界転生者は皆、力に溺れるのか。
虐げられた者が突如として強大な力を手にした時、精神すらその力に飲み込まれてしまうのか。
笑うシュウヤをホワイトは冷淡な目つきで見据えた。
めらめらと燃え盛る炎が二人を照らした。
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