介抱

 「一体、何が起きてるんだ」

 空に上がった幾多の狼煙を見つめて、ホワイトは呟いた。

 「ホワイト!」

 背中に男を背負ったエルシィが、ホワイトの家の前までやって来た。

 「ホワイト、手を貸して!」

 「その男は?」

 「ここに来る途中で倒れているのを見つけたの。この人、髪と肌の色があなたと同じよ」

 「来訪者か」

 ホワイトはエルシィに代わって男を背負い、自分の家のベッドに男を寝かせた。

 「怪我はしていない。気を失っているだけのようだ」

 「良かった」

 エルシィは胸を撫で下ろした。

 「狼煙のことを知らせに来たのか」

 「そう。あんなにたくさん同時に上がったのなんて初めてだったから、村中大騒ぎよ」

 「王都やほかの村も同じ騒ぎだろうな」

 エルシィが布切れを水で濡らし、男の額に当てた。

 「この人も悪い人なのかしら」

 エルシィは心配そうに男の顔を見た。

 「直接話を聞かない限りわからない。それより、僕は仕事へ行かないと」

 ホワイトは自身の溶けない、冷たくない氷で様々な武器を作り出した。

 革で作ったホルスターの左右に一丁ずつ銃をセットし、腰にマガジンポーチを巻き、太ももにナイフ、背中にショットガンを隠し、ローブを羽織った。

 「この人はどうするの?」

 「村へ連れて行ったら、みんなが混乱する。ここで寝かせておいたほうがいい。でも、この男が目覚めたら何かするかもしれない。君は男を置いて村へ帰るんだ」

 「大丈夫なの?」

 「ドアを塞いでいくから、僕が帰るまでこの男はここから出られない。少し可哀想だが仕方がない。それから君は、村へ帰ったら絶対に家から出るな。村の人たちにも家から出ないよう伝えて」

 「わかった。気をつけてねホワイト」

 「うん。君も気をつけて」

 エルシィは村へと戻り、ホワイトは自身で作り出した氷でドアを覆い、中で眠っている男が外へ一歩も出られないようにした。

 ホワイトが近場の狼煙が上がった方向へ向かおうとした時、イーグル王子とダモス公爵が乗った馬車が到着した。

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