第16話 深夜のレベルアップ

 話を終えたとき周囲は暗くなっていた。今まで一人で食事の準備をしていたのだが、今日からシロが居る。手間が半分になった喜びはあるが、やはり原始的な生活に変わりない。


「シロ、この道具を使って火を起こしてくれ。」


『主殿… この紐と木の棒が道具なのでしょうか…?』


「そうだ。こうやって上下に動かして、摩擦熱で温度を上げるんだ。この木屑から煙が出て来たらフーッって空気を送って着火させるんだ。」


『よければ私が火をお出しいたしますが…』


「火を出す? どこから? お前は火を噴くのか?」


『いえ…その…普通に魔術で…』


「普通に魔術? 魔法とは違うのか? てか普通ってなんだ? お前は魔術が使えたのか? と言うか魔術ってなんだ? 俺にも使えるのか? ほかに何が出来るんだ? ステータスとか見れるのか? そういえば回復魔法の事を言ってたよな? 魔法って魔力とかが必要になるのか?」


『主殿! 落ち着いて下さい。一度にご質問なされても困ります。』


「おぉ…すまん。魔術って聞いてちょっとビックリした。」

「そうだな魔術のことから聞こうか」


『はい。魔術とは種族固有の武技(スキル)と解釈して頂いて構いません。あくまで〝武技〟つまり〝技〟なのですから、威力には個体差があります。体力があるように〝技力(スキルポイント)〟もございます。技力が尽きれば魔術(スキル)は使えないとご理解下さい。』


「おぉ!そうなのか。どんな種類の魔術があるんだ?」


『火・水・風・土に属する魔術です。他に雷属性を有する魔族もいると両親から聞いたことがあります。どの種族が何の属性を有しているのか。私はあまり存じません。』


「シロは何属性のどんな魔術(スキル)を使えるんだ?」


『私は火属性の〝火焔纏い〟と〝火焔線〟の2つを扱えます。』


「じゃあ、その火焔何とかで、ちょっとこの焚き火を起こしてくれ。」


『はい』


 シロは手のひらを薪に向け炎を出した。すると一瞬で安定して燃え上がった。


「ほげぇぇぇぇ! すんごい便利だな。詠唱とかは必要ないのか?」


『魔術(スキル)に詠唱は必要ございません。私は見たこと無いですが、魔法は詠唱が必要だと聞いたことがございます。』


「ポチも何か魔術を使えるのか?」


『ワイは魔術〝ガブッ〟が使えるんでしゅ!この牙で相手を穴だらけにしてやりましゅ!』


「…お前それって噛んでるだけじぇねーか。」


『…』


『いや魔術でしゅ!この牙で噛んだらスライムや耳跳ねはイチコロでしゅ』


「耳跳ねって白くて耳が長くて小さな体のピョンピョン飛び跳ねてる動物のことか?」 


『それでしゅ!アイツは美味いんでしゅ。見付けたら倒して持ってきましゅ。』


「そ、そうか。まぁ待ってるわ…」


 そんな話をしながら、組み上げたフライパン石の上で残っていたオーク肉を焼いて食べる。食事を取りながら魔術の事について、引き続き質問する。


「今の魔術はどっちになるんだ?威力はこれで最大なのか?」


『先程の魔術は〝火焔線〟と言います。威力は着火に適するように調整をしております。』


「全力で〝火焔線〟を出したらどれ位の威力になるんだ?」


『オークならば5匹ぐらいは一瞬で倒せます。』


「そ、そうか。もう1つの魔術はどんな感じなんだ?」


『もう1つの魔術は〝火焔纏い〟と言いまして拳に火が宿り打撃力が数倍になります。私は変異種のせいなのか少し魔術が強い傾向にあります。』


「俺もその魔術を使えるのか?それか他の魔術はどうなんだ?」


『申し訳ありません。魔術には適正があり、使える者は突然その魔術の扱いを理解します。訓練や扱いを教わる方法などで魔術を使用できるとは思えません。主殿も適正があれば、いずれ扱える事となりましょう。』


「残念だな…あと〝技力〟って体力に似てるって言ってたよな?全力の〝火焔線〟だと何発ぐらい打てるんだ?」


『3回。無理をして4回が限度です。』


「最後にステータスって聞いたことがあるか?」


『ステータスですか? いえ、存じておりません。』


『スゲーブス? 不味そうな食べ物でしゅね』


「ポチ…。ステータスだ。能力を確認する術のことだ。」


『能力を確認する術は聞いたことがございません。』


「そっか、色々と助かった。少し仮眠してから浅部の魔物を倒しに行くぞ。」


 話が終わり俺達は座って仮眠をした。


 真夜中に起きてシロと魔物討伐の準備をした。

 ポチは熟睡している。声を掛けたが反応が無かった。


(ここから念話のみで行く。声を出すなよ。)

(承知しました。)


 浅部と深部の境目(以下中層)を主に探索する。暫くして木の根で眠るオークを発見した。シロに念話を送り、頭部へギリギリ死なない程度に打撃を与えるように指示をした。すると絶妙な殴り加減でオークは瀕死の状態となる。俺は石斧を振り上げてとどめを刺す。


(楽なもんだな。このまま見つけ次第に倒していくぞ。)

(ハッ!)


 明け方まで戦闘を繰り返し、俺は数回のレベルアップを実感した。


 そう言えば、以前、キラーアントの小さな巣を発見したことがある。

 一人なので手を出さなかったが、今回はシロがいる。俺たちは、そのキラーアントの小さな巣へ向かった。ヤツらは大きな蟻そのものだった。甲殻が硬かったがシロは難なくキラーアントの腹部を打撃で破壊する。瀕死になったところを同じく俺が叩き殺した。


 まるでゲームのパワーレベリングを行っているようだった。


(よし、今日はこれぐらいにして帰るか。明日も同じ方法でいくぞ。)

(微力ながらお力添えができ何よりです。)


 その後、俺達は寝床の拠点へ戻った。

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