第15話 深部の住人達

 寝床に戻った俺達は、次の行動に向けて話し合う。現在の目的は中央に見える山の麓に向かう事だが、シロの復讐が新たに目的に加わり、俺のレベルアップがより重要となってきた。


 アイツは1人で戦うつもりだろうが、また同族に囲まれ打ち倒されるだろう。従属契約をしているので当然助けるつもりだ。だが、今の強さではオーガの集団に勝てるとは思えない。優先事項としてレベルアップと戦闘訓練をする事にした。


「シロ。お前の復讐を手伝う事にする。反論は受け付けない。だが、オーガの集団相手に俺の力量ではちょっと心許ないから、先にレベルアップをしたい。」


『主殿…感謝いたします。』


『ワイも手伝うでしゅ』


『ポチ殿まで…』


「レベルアップは夜間戦闘で検討している。ポチに聞いたが、シロ、魔族も夜中は眠ってるのか?」


『主殿、一つお伺いしても宜しいでしょうか?』


「なんだ?」


『レベルアップとは、何を表す言葉なのでしょうか?』


「あぁ…お前も分からないのか。自己の力量が向上したのを自覚出来る瞬間のことだ。端的に言うと "階位が上がる" が近い表現だろうか。」


『階位(レベル)ならば、我々魔族は生まれの血色により階位が決定致します。階色(ランク)とも呼ばれます。他は進化による位の上昇が存在すると聞いたことはあります。それ以外の位については存じません。』


「そうか、まぁ気にするな。それより睡眠の件だ。」


『私達魔族も眠りはしますが、簡単に討たれるほど愚かではありません。不穏な気配を察知すれば、目覚めますし、即反撃を行う事も可能です。』


「そうか。シロと出会った時、離れてたのに気付かれたのは、そう言う事なんだな。」


『はい。そうです。瀕死の状態とは言え、意識はございましたので。』


「じゃあ、魔族相手に寝込みを襲うのは厳しいか。先日と同じく魔物を狙うとする。シロは夜中も起きていられるのか?」


『問題ございません』


「ポチは…拠点で寝てるほうがいいか」


『そのほうが良いと思います』


『……なんか気に食わないでしゅけど、仕方ないでしゅね』

『オイ! コラ! シロ! ワイは大先輩じゃ、なんか文句あるんか』


『ポチ殿…私は何も申し上げておりませんが…』


『ケッ! いい子ブリやがって』


『……』


「…ポチ お前って性格悪いな」


『主ぃ ヒドイでしゅ。ワイは1番従魔でしゅ。後輩にケジメつけてるんでしゅ。』


「今夜からレベルアップ戦闘をしてくる。ポチはちゃんと留守番しとけよ。」


『この寝床はワイが守るでしゅ。安心して行ってくだしゃい。』


 今夜から魔物の寝込みを襲い、効率良くレベルアップをする。どの程度でオーガに対抗出来るかは未知数だが、シロと模擬戦闘すれば推測は可能だろう。


「シロ さっきも聞いたが、もう1度深部の魔物や魔族の事を教えてくれ。歩きながら聞いてたからあまり覚えてない。」


『はい。深部には我々オーガの他に

 ハーピー、サイクロプス、ケンタウロス

 グリフォン、オルトロス

 そして、ケルベロスが生息しております。

 オルトロスとケルベロスは

 あくまで伝承として聞いた程度なので

 実在するのかは、定かではありませんが…』

 

「魔物は生息してないのか?」


『キラーアントが浅部から侵入する程度です。

 深部は魔物の生息に適さないため、基本的に存在していないと思います。』


「魔族の強さはどうなんだ?オーガを100として数値で教えてくれ。」


『一概に単純比較は難しいのですが感覚的に各種族を数値化した場合


 ハーピー ・・・・・ 50

 オーガ ・・・・・・ 100

 サイクロプス ・・・ 200

 ケンタウロス ・・・ 200

 グリフォン ・・・・ 400

 オルトロス ・・・・ 不明

 ケルベロス ・・・・ 不明


 キラーアント ・・・ 5

 オーク ・・・・・・ 20

 ゴブリン ・・・・・ 5

 ホワイトウルフ ・・ 2

 スライム ・・・・・ 1


 こんな感じになるかと思われます。』


「そうか、表層の魔物は問題ないけど深層の魔族はキツイな。」

「しかしポチは弱いな…」


『ワイは弱くないでしゅ!こんな評価は嘘っぱちでしゅ!ワイは孤高のホ…

「シロ、オーガの住処は分かるな?どれ位の距離だ?」


『片道で半日ほどの距離です』


「シロには親兄弟は居るのか?間違って攻撃したらダメだしな。」


『いえ、両親は他界しております…兄弟はおりません。』


「そっか…」


 シロから様々な情報を聞き、今後の対策を検討する。

 深部を抜けて山の麓に向かうのは非常に危険だと認識した。


 ならば安全な浅部で留まるのが良策と理解はしているのだが…

 麓に向かい、周囲を探索し、何も無ければ山に登る。周囲を一望して人間に会える可能性を模索したい…。人に会い、助けを求め、文化的な生活を送る。


 危険は承知


 木の上で寝て

 石のナイフを使い

 焚き火で調理する。

 こんな原始的な生活、もう無理だ。


 悪友の安否も気になるが、この生活から抜け出したい想いに支配されていた。

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