第14話 新たな出会い2

 白いオーガの変異種と契約が終えたそのとき


『ゴフッ… すまない、身体が…』


「わかった。少し待て。」


 俺はリュックからパパイヤを取り出し、黒曜石のナイフでブロック状に切り分けた。そのパパイヤを白いオーガの口に運んで食べさせた。


『ハァハァ…疑う訳じゃないが…こんな果実でどうにかなるのか?』


「いいからグダグダ言わずに喰え!」

「すぐには治らないが半日もしたら回復すると思う。これでも治らなかったら諦めてくれ。他に手段は無い。」


『そうか… その時は天命として潔く諦めよう…』


「そうだな。無理なものは無理だしな。」

「じゃあ俺は寝床に帰る。回復する頃にまた来る。もしお前が死んでたら、ここに埋めてやろう。」


『すまない 迷惑を掛ける。』


「じゃあな まぁ頑張れ…」


『あぁ…』


 俺は倒れている白いオーガを放置して寝床に向かった。従属契約をしたのに薄情な気もするが。だが治るまで待っていられない。しかも出会ったばかりの魔物を気にしても仕方が無い。


(俺的には努力をしたからいいか。夜が明けそうだな。寝床に帰って少し眠るか。)


 寝床の木に到着したときには空は薄明るくなっていた。ポチはまだ眠っているようだ。俺も昼過ぎまで仮眠するか。太い枝の上に寝転がり紐で身体を縛る。そして眠気に耐え切れず意識を失った。


『主、もう朝でしゅよ。まだ寝るんでしゅか?』

『主、起きるんでしゅ』


「チッ…五月蠅いな。さっき寝付いたところなんだ。起きるまでほっといてくれ!」


『でしゅか。じゃあワイは適当に探索でもしてきましゅ』


 正午を過ぎたあたりだろうか、今朝の出来事を思い出しながら目が覚める。


「あ゛~よく寝た。白オーガは生きてるかな?後で様子を見に行かないとな。」

「ポチは…いないな。まだ探索に行ってるのか。アイツ探索って言ってもスライムにしか勝てないのに何しに行くんだ?」


 寝床から地面へと飛び降り、食事の準備をしようと考えていたら、今朝のオーク肉を思い出した。これを焼いて塩を振り食べることする。まいぎり式で火を起こし焚火を作る。オーク肉を切り分け食べやすいようにする。そのオーク肉を数個、適当な落枝に刺し、焚火から少し離して炙る。


(魚より焼けるの時間掛かりそうだな。フライパンが有れば楽なんだが…)


 串刺しオーク肉が焼けるのを待ってる間に石を割って薄石のフライパンを作る事にした。丸い石は薄石加工に向かいないと思い、四角い石を探すことにした。河原には丸石しか見当たらなかった。そのため密林へ探しに向かった。


(良さそうな石は無いけど、とりあえずこの石でいいか。少し大きいな。持つのは無理か…)


「うぉ! 持ち上がった!! 俺すげーパワーじゃん!!」


 今朝の戦闘でレベルアップした恩恵なのか信じられないほどの膂力があった。

 そして、その角ばった石を密林から河原へ運び、思い切り地面にぶつける。大きな石が半分に割れ、少し薄くなった。その半分になった四角い石を加減しながら石斧で叩く。石斧が壊れないか心配したが問題は無さそうだった。


(この石斧すごい頑丈だな。かなり強く叩いたが全然問題ないな。)

(よし…こんな感じでいいか。少し形が微妙だが使えそうだな。平らな面はあるし。)

(あとは適当な石を焚火の周囲に置き、高さを調整してフライパンもどきは完成だな。)


 河原から寝床付近の焚火まで戻る。ほかに色々としている間に串刺しオーク肉が焼けた。

 フライパン石を焚火の横に置き、串刺しオーク肉をひとつ取る。


 その肉を食べようとしたそのとき


『主、いい匂いがするでしゅ。ワイも欲しいでしゅ。』

『あれ?これってオーク肉とでしゅよね?夜中にオークを倒したのでしゅか?』


「そうだ。オークが寝てるとこをぶっ殺した。」


『うわぁ… 主… なんか卑怯でしゅ』


「そんなことを言うなら、この肉はやらん!俺一人で食べる。」


『冗談でしゅ。ワイも食べたいでしゅ』


「まぁいい。お前の分も焼いてる。」


『うま!!! この肉うまっ!!!』


「本当だな! マジで旨い!塩振ったらさらに旨い!お前も塩いるか?」


『塩でしゅか? ワイはこのままでいいでしゅ』


「あぁ~、犬は味の濃い物はダメだったな。」


『失礼な! ワイは孤高のホ…』


「今朝に新しい魔物を従属させた。瀕死だったから生きてるか知らないけどな。」

「夕方には様子を見に行くつもりだ。お前も来るか?」


『新しい従魔でしゅか? 種族はなんでしゅか?』


「オーガの変異種らしい。知ってるか?」


『オーガ? 知らないでしゅ。浅部の魔物でしゅか?』


「いや深部の魔物と思う。自分で少しは戦闘に役立つって言ってたし。」


『ほぇ~エラい自信でしゅね。ワイが先輩として教育するでしゅ。』


「お前、秒殺されるんじゃないか?アイツが生きてたらだけど。」


 串刺しオーク肉を食べ終えたので、フライパン石を焚火にセットする。

 少し苦労したがギリギリ食材を焼けそうな形には組めたと思う。

 そうしているうちに日が傾いてきた。


「そろそろオーガを迎えに行こうか。アイツは変異種の特徴なのか白いんだ。」


『なんて名付けたんでしゅか?』


「シロって名にした」


『……でしゅか』


「なんだ?」


『いえ 別になにもないでしゅ…』


 ポチを連れオーガを迎えるため出発した。道中にポチから『そのオーガとどうやっての意思疎通したんでしゅか?』と聞いてきたのだが、俺も日本語が通じた理由がわからないので、死んでなければ色々と話を聞こうと思う。そのオーガと出会った場所近くに差し掛かったとき、白い体躯の魔物が見えた。


「たぶんアイツだ。なんか腕組んで立ってるな…何してるんだろ?」

「まさかずっと立って待ってたのか?」


『アレでしゅか? めっちゃヤバそうなヤツでしゅね… ワイ、震えてきたでしゅ』


「お前は弱いからな… 仕方がないだろ。ゴブリン相手に逃げるぐらいだからな」


『アレは逃げたんと違うんでしゅ! 戦略的隠密行動でしゅ!』


「お前、変に言葉詳しいな…」


 互いに視認出来る距離にまで近づいたとき、白オーガが片膝を付き、頭を垂れる姿勢をとった。


『此度の件、誠に感謝いたします。主殿に私の命を救って頂き、また復讐の機会を与えて頂いたこと。生涯を以て、誠心誠意報いる所存でございます。この御恩は、一身を…』


「あぁ…。もういい…。お前喋り方が堅いな。聞いてるだけで疲れる…」

「とりあえず立て」


『オイ!コラ! ワイが大先輩のポチ様じゃ!訳わからん言葉を話すなや!』


『む! 貴殿は主殿の従魔なのですか?』


『そうじゃ! 孤高のホワイトウルフのポチ様じゃ!』


『ホワイトウルフ… ですか…』


『なんじゃ!! 文句あるんか!!』


「ポチうるさい。しかも言葉遣い変わっているじゃねーか!」

「おいシロ。お前なぜ日本語を話せるんだ?ポチは念話だからまだ理解できる。だがお前は日本語を喋ってるじゃないか。」


『主殿、私はそのニホンゴとやらが何か知りません。言語の一種なのでしょうか?』


「そうだ。俺の国の言葉だ」


『申し訳ありませんが、私は魔族語を話しているつもりです。主殿が魔族語を理解なされているのでは?』


「は? 魔族語ってなんだ?えらいファンタジーな言語だな。そんな言語知らん。ポチ、魔族語って何か知ってるか?」


『聞いたこと無いでしゅ…』


『ふむ 低俗な魔物には簡単な言語しか存在しないと聞く。恐らくポチ殿は魔族語を従魔のパスにより理解していると思われます。』

『主殿よ、魔物と魔族は異なります。似て非なるもの。個体差はございますが魔族は知性がありコミュニティを形成します。』

『魔族は種族の違いで敵対する事はありますが、全方位に敵対する訳ではありません。他種族ともコミュニケーションを行うこともございます。』

『つまり、魔族語は魔族における共通言語です。当然、言葉だけは無く、文字もあり、拙いながらも文化が存在します。そもそも我々の文化とは……』


「もういい!堅苦しい言葉を聞いてたら頭が痛くなる。学校の先生に説教されてるようだ!」


『主殿、ガッコウノセンセイとは一体何を指してい…』


「もういい。少し黙ってくれ…」


『ハッ!申し訳ございません』


『ワイは…低俗じゃない…… 孤高のホワイトウルフでしゅ…』


「……」


『…申し訳無い』


「つまり俺が魔族語を理解してるってことだな」


「そういや…ポチと会った時、コイツ俺の言葉理解してたよな…」

「言語チートを俺が持ってるってことか?」

「異世界やし、コイツらみたいな化け物もいるし。傷はすぐ治るし、パワーアップとかする…」


『……』

『……』


「いやスマン。化け物は言い過ぎたな。ゲームのようだが考えても仕方ないか。」

「お前ら とりあえず拠点に戻るぞ。」


 『ハッ 承知致しました』『でしゅ』


「そうだ、シロ、お前は人間族は回復魔法を使うとか言ってたな。魔法ってあるのか?」


『はい。ございます。種族固有の魔法もありますが共通魔法も存在します。』


「そっか、また後で色々と聞く。とりあえず拠点に向かう。」


 シロを新しい仲間を加えた一行は中層の拠点へ戻ることにした。

 道中、シロにオーガ族の住処と深部に生息している魔物や魔族を聞いたのだが、よく分からなかった。拠点に戻ってから改めて質問しようと思った。

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