第13話 新たな出会い
魔物を討伐した俺は音を立てず静かに寝床の木へ戻る。途中、俺と同じぐらいの体躯をした白い人型の生物を発見した。地面に倒れている。寝ているのか倒れているのか判断できないが、どちらにしてもチャンスと思い、少し離れて様子を見ることにした。
その人型生物を視認できる距離まで近づき、木陰から様子を見る。姿形は人に近く、人にしては大きい体躯、まるで見た目は鬼のようにも見える。髪は無く、頭部に2本の角が見えた。どうみても魔物だろう。
脅威度を判断するためその魔物を観察していたら、こちらに気付いたのか、少し顔を起こし俺の方へ何かを言い出した。
『…イ……。キ……エ…。』
(起きた? いや起きてた? 何か言っているな)
(見たことのない魔物だな… 知性がありそうだし戦闘するのは止めとくか…)
そいつが何かを言い続けている。出血や痣などがある。死にかけているのかもしれない。
(うむ…これはチャンスかもしれない。アイツを倒してみるか…)
注意深く見ると、襲われ、負傷して倒れたと思われる。未知の魔物のリスクと経験値を得るチャンスを天秤にかけ、悩んだが倒すことにした。少しでも危ないと感じたら逃げればいいか。
深部の魔物だと大きな経験値を得られる可能性があるしな。警戒しながら魔物へ近付く。石斧を振りかぶり、そいつの声が認識できる距離まで近づいたとき…
『ハァ…ハァ… お前は…何者だ!』
「おい!? なぜ魔物が日本語を使ってるんだ?」
『ゴフッ… 私の言葉が理解できるのか?』
「は? お前が日本語喋ってるんだろ。」
『…ニホンゴ? お前は何を言っている。』
「はぁ?? お前こそ何言ってるんだ?」
「どうでもいいか、死にかけっぽいし、とりあえず死んでくれ!」
そいつが瀕死なのを確認し、勝てると確信したので、石斧を振り上げ飛び掛かろうとした瞬間
『待て!取引をしないか?』
「取引? 何の?」
『身体を回復してくれたら報酬を払う。』
「報酬? 内容は?」
『着の身着のままのため金銭などは所持していない。なので私自身が報酬となる。そしてお前の力になろう。私はオーガの変異種だが少しは戦闘に役立つ。人間族は回復呪文を使えるのだろ?』
「回復呪文? そんなのがあるのか?」
『…お前は人間族ではないのか?』
「俺は人間だ。だた呪文とか魔法は使えないけどな。」
「でも… そうだな… 回復をさせる手段はある。」
『ならば回復をしてくれないか?回復すればお前を主と認めてもいい』
「なぜそこまで生きたいんだ?」
『同族に復讐をするためだ。変異種と言うだけでこのザマだ。このまま息絶えると私の誇りが失われる。アイツらを倒し、誇りを取り戻さないと私の魂が汚れてしまう。』
「そうなのか。だがそんなことは知らん。てか、この世界は弱肉強食じゃないのか?淘汰されるのは自然の節理だろ。」
『強者に倒され糧にされるのなら悔いは無い。変異種と言う理由だけで同族にいたぶられ、しかも多勢に無勢。まだ一対一での敗北なら諦めもつく。だがこの仕打ちは受け入れられない!このまま死ぬわけにはいかない!』
「お前、日本語堪能だな… まぁ、そんなことは今はいいけど」
『頼む!回復手段があるなら助けてくれないか?』
「うーん、別にいいけど… そうだな… 従属契約が先だな。回復して襲われたら嫌だし」
『そんな真似はしないが望むのなら先に契約を行おう。私は従属する意思を持っている。後はお前が従える意思と私に名を与えてくれ。』
「名前か… そうだな… お前の名前は…」
「 シロ 」
その瞬間、白い人型生物から目映い光が発生した。
そして俺の右手の紋章が変化した。
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