第12話 第2の拠点
ポチの情けない戦闘に呆れながら探索を進めていく。途中、スライムが現れたが難なくを撃退して先に進む。この小川は川幅が5mぐらい。広いところで8mぐらいだろうか。これまでに魚影は確認している。食用の可否は不明だが少し安心する。
「ポチ ホワイトウルフの仲間と会話って出来るのか?」
『もう無理でしゅ。従属するとワイは同族のカテゴリーから外れるんでしゅ』
「じゃあ契約をしてなかったら会話出来るのか?」
『簡単な意思疎通はできましゅよ』
「他のホワイトウルフに遭遇したらどうなるんだ?」
『たぶんワイ…襲われると思いましゅ…』
「ふーん。この密林は魔物(モンスター)の生息状況ってどうなってるんだ?」
『ワイは浅部で暮らしたんでしゅ。そこに限ってなら分かりましゅけど、中央の山岳付近やその麓は知らないでしゅ』
「それでもいいから教えてくれ」
『まあ浅部はこんな感じでしゅ』
・スライム
・ホワイトウルフ
・ゴブリン
・オーク
・キラーアント
『キラーアントが一番厄介でしゅ。ゴブリン程度の強さでしゅが群れるのがヤバイっしゅ』
「浅部はこの5種類しか生息してないのか?」
『魔物と呼ばれるモンスターは、知ってる限りではこれぐらいでしゅ』
「じゃあ、動物とかは?鹿とか兎、鳥や猪とか熊は?」
『動物は普通に生息してましゅ。種類はよく分からないでしゅ』
「浅部と深部の違いって分かるのか?」
『行けば分かりましゅ。浅部は木々が多く密林みたいでしゅ。深部は林みたいに木々が減り魔物も大きくなるんでしゅ』
「この場所って島になってるのか?それとも大陸なのか?」
『ちょっと言ってる意味が分からないでしゅ…』
「そっか…」
ポチにこの場所の事を色々と聞いてみたのだが、知識量の違いなのか通じない用語があった。浅部に生息している魔物の情報は聞けた。おおよその脅威度も理解出来た。深部の魔物は不明だが、ゴブリンとは比較にならない脅威であることは理解できる。しかし、この場所が島なのか陸続きなのかは不明であった。この場所が島なら脱出は絶望的であろう。人工的な形跡が無いため人里が存在するとも思えない。陸続きなら人里を発見し、助けを求めて文化的な生活を行える可能性がある。
「オークってどんな魔物なんだ?」
『そうでしゅね…人族に身体は似てましゅ。主より背丈が大きく体は太いでしゅ』
『それにオークは食べれましゅ。昔に一度だけ食べたことがありましゅ。美味しいでしゅ』
「そ、そうか…ポチはオークと戦って勝てるのか?」
『無理無理!ワイはゴブリン相手でギリギリ負けましゅ!』
「じゃあ、何相手にに勝てるんだ?」
『スライムとワイより小さな動物でしゅ』
「お前、野犬みたいだな…」
『失礼な!!ワイは孤高のホワイトウ…』
「そのネタはもうええ!」
などとポチ相手にグダグダと話しながら進んでいると周囲の環境が変化している事に気付いた。
「おい、ポチ、これって深部との境目か?」
『でしゅ。この先の密林ですけど木が少なくなってるでしゅ』
「そうだな、今日はこの付近で野営して少し様子を見るか」
「お前は深部に入ったことがあるのか?」
『いや、ないでしゅ。深部の魔物と遭遇したら絶対に死にましゅ…』
「え! じゃあ俺もヤバイ?」
『でしゅ。間違いなく死ぬと思いましゅ』
「なんでそれを早く言わんねん!!」
『ワイ 主に着いてきただけでしゅ』
「……まぁ、行こうと決めたの俺だしな…」
「とりあえずヤバくなったら逃げる。勝てそうならレベルアップのために戦う。お前もレベルアップとかするのか?」
『ラベルマップ? なんでしゅかそれ?』
「…えっと 進化とか成長とかするのか?」
『ワイらはワイらでしゅ 孤高のホ…』
「そうか、もうええわ」
魔物にレベルアップや進化が存在するのか不明のままだが、このまま深部を進むのは、非常にリスクが高いことは理解した。スライムやゴブリンには勝てる。ホワイトウルフにも問題無く勝てるだろう。あとはオークとキラーアント相手に無難に勝てるようになれば深部を進める可能性が出てくる。
「ともかくこの付近で今日は野営する。お前も一緒に木の上で寝るぞ。」
ポチから様々な情報を聞き出していたら、周囲は薄暗くなりだしていた。
小川の拠点近くに存在した「都合の良い寝床の木」がこの付近にないか見渡した。
「………」
「やっぱりあったな…」
「ここは浅部と深部の境目やから中層とでも呼ぶか」
都合よく就寝可能な枝のある寝床の木を発見した。今日は小屋を作るのを諦めた。
この付近を第2の拠点として深部に進む準備をする。水はこの小川がある。食料はパパイヤを数個持っている。川魚も食べれるだろう。強くなるために、まずオークと戦い、己の力量を計る。オークとの戦闘に問題がなければ、キラーアントと戦う。集団戦闘の訓練も兼ねて。
「ポチ 今日はもう寝るか。あの木に登れるか?」
『木登り? 無理でしゅ』
「しゃーないな、ちょっとコッチ来い。お前をリュックに縛って登るから」
『グェ 主苦しい…』
「お前はいちいち五月蠅いな」
ポチを担ぎながら、寝床の木に登る。木の上でパパイヤを食べて食事をとる。
辺りが真っ暗となり、夜が訪れる。
「ポチ 夜行性の魔物っているのか?」
『あまり知らないでしゅ』
『ワイら夜は寝ましゅ。オークやキラーアントも寝てると違いましゅよ』
「それってチャンスと違うのか?」
『なんで?』
「お前 ちょいちょいタメ口になるな…別にええけど」
「寝てる間に魔物を倒せたら安全だしな。弱点さえ見つけたら楽だろ?」
『でしゅか』
「なんや 気のない返事だな」
『夜は寝るもんでしゅ。ワイ眠くてもう動けないでしゅ…』
「そうか、なら俺一人で探索してみる」
それから数時間が経過した夜中に動き出した。一応、ポチに声を掛けてみたが反応は無く熟睡しているようだった。
(本当に夜中は魔物が活動しないなら、これって強くなるチャンスだな)
(今日はあまり無理せず、一度だけ寝込みを襲ってみるか…)
リュックを持って静かに寝床の木から降りる。そして音を立てないように周囲を探索する。迷子にならないよう、目印に木の枝をそっと折る。しばらく周囲を探索したところ、ゴブリンが1匹、木の根で寝ているのを発見した。
(こいつなら万が一、目が覚めても勝てるな)
静かに寝ているゴブリンに近づき石斧を振り下ろした。
『ゴギャ!!』
一瞬、ゴブリンが叫んだので警戒したが一撃が見事に決まり絶命した。
(これなら楽勝だな)
(もう少し探索して魔物を倒してみるか)
思惑通りに倒すことができて少し安堵する。
ゴブリンを倒した場所から離れ、さらに魔物を探索したとき
(!)
(デカイのがいる! あれはオークか?)
巨漢のデブに豚の頭を取り付けた外見だった。例えるなら豚人間そのものだ。オークも木の根で寝てる。人間に例えて弱点を考えるなら頭部である。しかし一撃で倒せない場合、反撃がどの程度の脅威となるのかが不明だった。
(日中に遭遇するよりマシか。これで倒せなかったらどのみち無理だし)
覚悟を決めて、音を立てずにオークに近付く。
震える体を精神力で押さえながら石斧を振り上げ、全力で頭部へ振り下ろす。
『フゴォォォォォ!!!』
(チッ… 浅かったか! もう一撃!)
痛みでのたうち回るオークから少し距離をとり、もう一度石斧を全力で振り下ろす。
ズガン!
(やったか!まだピクピクしてるな。もう一撃与えるか。)
生命力の強そうなオークでも、不意打ちの一撃と止めの一撃を受けて絶命した。ゴブリンを何度か倒しているためか、血肉に対する耐性も向上しているように感じる。
その時、身体が熱くなるのを感じた。レベルアップと思われる現象である。いつもより熱く感じるのだが数回のレベルアップを体験しているためか動揺はない。むしろ強くなっている実感がして、心地よくすら感じるようになっていた。
(オークは食べられるって言ってたよな。少し解体して肉を取ってみるか)
(オェェェェ… くっ…でも肉食べたいから頑張るか…)
吐き気に耐えながら、食に適していると推測した部位を解体する。50cmほどの肉塊を剥ぎ取り、リュックから拾った衣類を出す。その衣類に包んで肉塊をリュックに収納した。
(おぇっ… もう寝床に帰るか)
思惑通りの戦闘で肉を手に入れて満足した俺は、寝床に向かって静かに歩き出した。
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