第7話 おっさんの現実逃避

 ひとまず寝床が確保できたので少しだけ心に余裕が生まれる。悪友の安否を気遣いなから自衛に向けた石斧の戦闘練習をする。


 ブンブン ブンブン


 意外とこの石斧が扱いやすい。先日のゴブリンにも勝てそうな気がする。


 ブンッ ブンッ


 だが化け物としか思えない非現実な外見が無理だ。恐怖で怯えてしまう。


 ブンッ ブンッ ブンッ


 連続して石斧を振り続けているのだが疲れない。こんなに体力があっただろうか?さらに1時間ほど石斧を振り続け戦闘訓練を行った。


 ヒュン ヒュン


 もう達人のように斧を振っている。実は斧の才能があるのかもしれない。


(日が暮れそうだな。そろそろ火を起こさないと…。)

(でも木の上で寝るから意味ないか。今日は火はいいや…)


 火を起こすのが面倒になったが、今後のことを思い着火の道具を作ることにした。動画で見たのは、棒に円盤つけてクロスさせた棒に紐付けて上下に動かす道具だったな。それを作ってみるか。でも紐しか無いな。他の材料が無い。


(…うん。今日は諦めよう。)


 日が暮れだしたので行動を諦め、パパイヤを持って木上の寝床へ移動した。食べ終えた頃、日も落ちて周囲は真っ暗になった。何もすることがなくなり床に寝転がる。様々な不安要素や不可解な現象のことを思い出す。ふと傷の治る現象を思い出し、再現をするために腕へ軽く自傷して調査をすることにした。


(いてっ…。思ったより切れるなこの黒ナイフ。鞘が欲しいけど動物の皮とか無いしな)


 チクチクとした痛みを感じながら、寝床入り口から覗く"夜空"を見上げる。


「星座とか知ってたらなにか分かるのかな」

「現在位置とか、ここが地球じゃないとか…。明らかにおかしいからな。ここは。」

「佐藤と鈴木は無事かな。死んでるんかな…。他の乗客はどうなったんだろな。」

「ふぅ…ずっと独りで喋ってるな。まあ俺しか居ないし…。」

「黙ってるより少しは声に出した方が気が紛れるしな…」

「ん? 腕の痛みが…おお傷が治ってる」

「やっぱり…ここって地球じゃないのか…というか現実世界じゃない気がする…」


 薄々気付ていたのだが、頑なに認めないようにしていた。

 43歳にもなる男が異世界に転移したなど信じられるはずがない。

 だが状況証拠がその考えを全面的に否定している。

 これ以上の現実逃避は生死に関わるかもしれないと思い



【異世界転移】であることを受け入れることにした……


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