56話
二人は子供の元に行き、ミリヤは子供――女の子に話しかけた。
「ねえ、君、大丈夫? どうしたの?」
「ひっぐ……おかあさん、どこぉ……」
「お母さんとはぐれたの? お姉ちゃんたちが一緒に探してあげる! お母さんの元に連れて行ってあげるよ」
「……ほんとぉ?」
女の子は泣きながらミリヤの顔を見た。ミリヤは手を差し伸べ、「本当だよ」と微笑んだ。
アルは周囲を見渡して母親らしき姿を探してから、女の子に近づいた。
女の子はミリヤに抱き着いてから近づいてきたアルを見て首を傾げる。
「……お兄ちゃんも?」
「はい、探してあげます。だから、泣かず、笑ってください。お母さんと再開した時笑っているとお母さんは安心しますよ」
「そう、なの?」
「はい」
アルは他人向けの笑みを浮かべながら言った。
女の子はアルの言葉に涙を払って、うん。と頷いた。そしてミリヤから離れて「よろしくお願いします」とお辞儀をした。
「私はミリヤ、こっちのお兄ちゃんはアルくん。君の名前は?」
「リーシャ」
「そっか! リーシャちゃん! じゃあ、一緒にお母さん探しに行こう!」
ミリヤはリーシャの手を繋いで、「どこまでお母さんと一緒にいた? 場所は覚えてる?」とリーシャに問いかけて一緒に街中を歩いて行く。
アルは二人の傍を歩き、周囲を注意深く見渡し何かを必死に探している女性の姿を探す。だが人が多すぎて探すことが難しく、アルは眉間に皺を寄せた。これだと、探すのに困難しそうだ。とアルはミリヤに向き合って、小声でそのことを伝えた。
「……分かれて探す?」
「それだと合流が厳しいと思うが」
「でも、それだと一向にリーシャちゃんのお母さんは見つからないよ?」
「……分かった。ならミリヤはあのミーティアでリーシャさんと一緒にいて。その間に僕が探しに行く」
「分かった。頼んだよ、アルくん」
ミリヤの言葉に頷いたアルは二人から離れ、先程リーシャが言っていた場所を探しに行く。道中地図板があった為、それを見て正確な場所を確認する。
リーシャがいた場所と、母親と一緒にいた場所はそう遠くなく、まだここに母親がいるなら探し出せる。とアルは目的の場所に向かって走り出す。
頭の中でミリヤに危険がないといいな。と心配と不安に胸がざわついた。
目的の場所まで行くとやはり人が多かった。
「探しにくい……」
辺りを見渡し探すが、人が多すぎてまともに探すことができなかった。
アルはこのままじゃ埒が明かないと思い、端の方に行き目を閉じ、声で母親を探すことにした。
「ねえ! 次はどこいく?」
「夜は何を食べようかねえ……。ご馳走でも食べますかあ」
「最近出来た店があるの! よかったら行かない?」
「――どこ、どこにいるの!? 返事をして!」
「…………見つけた」
誰かを探してる女性の声が聞こえ、アルは目を開ける。そして聞こえてきた方向に向かって走ると、女性が周囲を必死に見渡しながら誰かを探してる姿だった。
アルはその女性に駆け寄り声をかける。
「失礼ご婦人。リーシャという女の子をご存知でしょうか」
「っ、リーシャ!? 貴方、リーシャを知ってるの!?」
「はい。リーシャさんは今保護させていただいております。この近くにあるミーティアで待って貰っています。ついてきてくださいますか?」
「ええ、ええ、行くわ」
女性は焦った様子で息をきらしながらアルに掴みかかる。それにアルは女性を落ち着かせ、ミリヤが待つミーティアまで同行するように頼んだ。
女性は保護の言葉に安心したようで、深呼吸を何度かしてから強く頷いた。
アルはそれを聞いてから女性をミーティアまで案内を始めた。
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