52話
ミリヤと別れたアル達は、自分たちが泊まる部屋に向かい、部屋の扉を開ける。
「おかえり!」
「おかえり、それなんだ?」
部屋には片方の二段ベッドの二階から顔を覗かせているミツと、一階部分で本を持った状態で二人に視線を向けているティルだった。
「飴です〜。一つ食べますかぁ?」
「飴! いいな、くれるのか?」
「沢山ありますので。ところで貴方方は何をさしていたんですか」
アルとクロスは荷物を近くに置いてから、荷物の中から買った飴を取り出した。
それを見てティルは本を閉じて二人に近づき、ミツも二階から降りて二人に近づいた。
「俺はアリアと海に行ってた」
「俺も。キリと泳いできた……凄く楽しかった」
「僕達もミリヤさんと海に行ったんですよぉ。その後飴を買って〜って感じですねえ」
「そうなのか。それにしても色んな飴があるけど、どこで買って来たんだ?」
「この近くに街のミーティアという飴専門店で買いました」
そう言いながら、アルは大きい飴玉を二つ取り出し二人に渡す。
クロスは苺の飴を二人に渡し、自分はりんごの飴を食べ始めた。
「果物の飴まであるのか……」
「わっ、美味しそう〜二人共、ありがとう!」
ミツは明日アリアと買いにいくか……と呟きながら食べ、ティルは少しの間飴を見つめてから、味わうように食べ始めた。
アルはミツがいたベッドとは反対の二段ベッドの二階に行き、そこにつけてあったカーテンに手をかける。
「少し寝ます」
「お風呂はどうされます?」
「あとで入ります」
そう言ってアルはカーテンを閉めてベッドに寝転がった。
そのままアルは眠りについた。
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「……さん……アル……さん」
「ん――?」
クロスの声が聞こえ、アルは目を開ける。そして少し寝ぼけたまま、カーテンを開けると、クロスが「おはようございます」と笑ってそこにいた。
「クロスさん……?」
「お風呂に行きませんか? そろそろお風呂が閉まるようで……」
「あぁ……行く。――結構寝てた?」
「寝てましたねぇ」
「そうか……」
二階から降りて着替えを取り出し部屋の外に出る。クロスも着替えを持ってアルに着いていく。
部屋の外は静かで人っ子一人出歩いていなかった。部屋でもティルとミツの姿はなく、見えたのは閉めてあったカーテン。
「クロスさんは風呂に行かなかったのか?」
「ええ、アルさんと行きたかったので。友達とお風呂に入りながら語る……いいですよねぇ」
「……それならもっと早く起こせばよかったと思うんだが」
「二人っきりで話したいこととかあるじゃないですか。ほら、僕達の秘密話。とか」
「あぁ……そういう」
二人で話しながら、静かな廊下を歩いて風呂に向かった。
服を脱いで風呂に入るとそこは大浴場で、奥には外が見れる風呂場まであった。
体を洗ってからかけ湯をして、二人はお湯に浸かった。
「あ〜いいなこれ……疲れが取れる……」
「いいですねぇ。あぁそうだアルさん、あの花について聞きたいんですが」
「あれは魔法だって言っただろう」
「ふぅん……? それならそれでいいんですが」
「もし花に何か秘密があっても、僕は話せない」
お湯をパシャパシャと手で弾きながらアルは言う。そしてちらりとクロスの方を見て口を開く。
「それより、僕はクロスさんのその体の傷について聞きたいんだが」
「それはアルさんにも聞きたいことですねぇ」
「暗殺者一族だからこうなるのも仕方ないだろ、クロスさんの傷はもしかして奴隷時代の?」
「そうですよぉ。今の家ではこんな事されてないのでご安心を!」
「ならよかった」
ニコリと微笑んで視線を逸したアルにクロスはじっと見つめて、「何か考えてましたね?」と笑った。
それに対しアルは知らん振りをしてお湯をパシャパシャと手で弾いた。
クロスはそれ以上何も聞くことなく、天井を見上げてふぅ。と息を吐いた。
その後は普通に出て部屋に戻って就寝し、この日は終了した。
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