第五章

50話

「海~~~~!!!!」


 ミリヤははしゃぎながら海に向かって行く。それをアルとクロスはあとから海に向かう。

 魔物襲撃事件が終わった後、学園は立て直しのため全生徒を休息として宿泊施設に飛空艇で連れていった。

 暫くの間施設に泊るという事で、生徒は修学旅行だと喜び、飛空艇内は賑わっていた。

 そして宿泊施設に着いて荷物を置いてから、生徒達は施設の外へと出かけ始めた。

 近くには海もある為、そこに行く生徒も多かった。

 三人も例外でなく、現在海に来ていた。


「綺麗だな……」

「ですねえ。ところでアルさん、ミリヤさんの近くに行かなくていいんです?」

「まずは遠くであの愛らしい姿を目に焼き付けたい」

「わぁお……え、綺麗だなって海に対してじゃなくてミリヤさんに対してですか?」

「それは秘密」


 笑みを浮かべた状態でアルはミリヤを見つめる。

 はしゃぎながら砂浜をかけるミリヤにアルは嬉しくなった。三人は学園の制服ではなく、施設の近くで買った服を着ていた。

 アルは黒色のフード付きの服、ミリヤは白色のフリフリが付いた服、クロスは制服の見た目に近い服を着ていた。

 

「アルくーーーん! クロスくーーーん! こっちに来て!! もっと近くで海を見ようよ!」

「すぐ行く」

「アルさん、僕は飲み物買ってきますので、その間二人でイチャイチャしてくださいねえ! 折角恋人になったんですから、デートは必須。ですよお?」

「……助かる」


 クロスの言葉にアルは目を見開いた後、笑って頷いた。

 では、と言ってクロスはそこから離れ、アルはミリヤに走って近づいた。

 

「あれ、クロスくんは?」

「飲み物を買ってくるって」

「そうなんだ。あ、そうだアルくん、これ見て! 貝殻!」


 ミリヤは手の平に乗せた沢山の小さな貝殻をアルに見せた。

 

「綺麗だな」

「ね! これ欲しいなぁ……」

「欲しいなら瓶とかに入れるのはどうだ? 砂と一緒に瓶に入れたら見栄えもいいし、飾れると思う」

「瓶! それいいね~。あ、そうだ。アルくんの花も欲しいな!」

「ああ、分かった。見合う花を考えておく。瓶は……どこかで買うか?」

「うん!」


 貝殻をポケットの中に入れてから二人は瓶を買いに街に行こうとすると、クロスが二人の元に駆け寄ってきた。


「お二人とも~飲み物買ってきましたよお」

「あ、クロスくん!」

「ああクロスさん、丁度良かった。今から瓶を買いにいくんだが、一緒に行こう。離れ離れになったら困るし」

「おや? 僕が行ってもいいのですかあ?」

「いいよ? クロスくん何か用事あった?」

「いやぁ……ないですねえ。……お二人が言うならお供させていただきますねえ。あ、その前に飲み物どうぞ」


 クロスの言葉に抱えて持っている飲み物を二人は取る。

 そして三人は街に向かって行く。向かう最中、クロスはアルに耳打ちした。


「二人でデートすればいいのに」

「クロスさんも一緒じゃないと落ち着かなくて……」

「んんん……嬉しいですけど、僕は二人にとってお邪魔な存在なんですお……?」

「駄目か?」


 アルの言葉にクロスは「駄目じゃないですけどぉ……」と呟いた。

 そしてクロスはミリヤに話しかける。


「ミリヤさん、二人でいなくてよかったんですかあ? 折角恋人同士になったんです。二人でデートしてもいいと思うのですがぁ……」

「……えーと……クロスくんも一緒じゃないと落ち着かなくて……二人っきりも嬉しいんだけど、三人がいいなぁって……駄目?」


 同じ事を言うミリヤにクロスはスンッと一瞬真顔になってから、すぐに笑みを浮かべ「駄目じゃないですよお……」と少し落ち込んだ様子で言った。何故二人はこうなのですかぁ……と複雑な気持ちにクロスはなった。 

 



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