ミリヤの思い

 歓迎会の日、彼に引き止められて言われた言葉に、私は訳がわからなかった。

 太陽の貴方。そう、初対面の人に言われるなんて思わなかった。

 その後に凄く嬉しそうな顔をして微笑んだ。その顔を見て、どうしてそんな顔をするの? 私と貴方はまだ数回しか話たことないのに。と

思った。

 そうして数日がたって彼とまた出会った。そしてその日のうちに告白された。

 返事ができなくて、恥ずかしくて戻ろうとした後、ミリヤ。と呼び捨てで呼ばれた。

 それがなんだか嬉しくて、恥ずかしくて、どうにかなりそうだった。

 多分、あの時に私も好きになってたんだと思う、一目惚れ、なのかな。

 でもあのあとはミリヤなんて呼ばれなくて、少し寂しかった。

 どんな時でも、ミリヤさん、ミリヤさん、ミリヤさん。

 あの時だけに呼ばれた呼び捨てが恋しくなった。

 いつ彼は私を呼び捨てで呼ぶんだろう。と思ったけど、いつまで経っても彼は私を呼び捨てにしない。

 じゃああの時だけ呼び捨てで呼んだのはなんだったんだろう。

 そのモヤモヤを抱えたまま日々がすぎる。

 返事ができないまま、ずるずると……。


 ――彼が校舎から落ちていく。

 

「キリ!? 何してるんだ!?」

「ドラゴンだけを吹き飛ばせる訳ないでしょ!? 仕方ないじゃない!!」

「なんとかできんの!?」


 ――駄目、駄目、駄目!!

 私は気がついたら校舎から飛び降りていた。

 彼は諦めたように俯いていた。

 だから、私は叫んだ。


「アルくーーーーん!!!!」


 アルくんに近いて思いをぶちまけた。返事ができないまま死ぬのは嫌だった。なら、返事をしてから死にたい。

 死にたくないけど、アルくんを一人で死なせるのも嫌だった。

 それにまだ、まだ、ミリヤって呼ばれてない!!! もう一度だけでいいから、呼ばれたい!

 

「ミリヤさん……」

「――アルくん、ミリヤって呼んで? 君にはそう、呼ばれたい」


 アルくんは私の言葉に少し考え込んでから、言った。


「……ミリヤ」

「――うん! なぁに? アルくん!」


 君が何であろうと、私は受け入れるよ。

 だって、私は、アルくん自身を好きになったんだから。

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