第45話
数日が経ち、ある日ぎゃあぎゃあと騒がしい声と音にアルは目を覚ます。
「なんだ……?」
外が騒がしく、アルは窓の外を覗く。雨が強く外がよく見えなかった。
ガタガタと風で窓が揺れ、ゴオオオオ!! と音が聞こえる。魔物の声にも聞こえるし、風の音にも聞こえるそれにアルは、どっちだ……と思った。
部屋の外も騒がしく、アルは扉の覗き穴から外を見る。だが赤い何かで外が見えずアルは首を傾げた。
気になったアルは着替えてから武器を持って外に出る。そして騒がしさの原因を知った。
「危ない!!」
「怪我人を早く連れて行って!」
「人手が足りない!!」
倒れている人、あちらこちらにある血。煙の匂い。魔物。
アルは目を見開き武器を取り出す。
「アルさん!!」
「っクロスさん、これはなんだ!?」
「嵐に運ばれた魔物達がこの学園に来たんです!!」
クロスの言葉にアルは意味が分からないと言った様子を見せたが、すぐにミリヤの事を聞いた。
「嵐に……? いや、それはいい。ミリヤさんは?!」
「分かりません。あちらこちらに魔物がいて獣人寮にいけないんです!」
「っくそ……! 僕はミリヤさんの元に向かう! クロスさんは周りの人の補助を頼む」
「一人で大丈夫なんですかあ!?」
「大丈夫」
アルの真剣な眼差しにクロスは一瞬言葉に詰まるが、すぐに頷いた。
「分かりました。お気をつけて」
「そっちも」
アルは素早さ上昇の錠剤を取り出し噛み砕く。
じりりりと火災探知機が鳴り響く寮を走る。怪我人を治す者、魔物を倒す者、火を消す者。様々な者が対応に追われていた。
道中邪魔をしてくる魔物をアルは倒し、獣人科、エルフ科の渡り廊下がある交流広間に着く。
獣人科がある廊下に行こうとした時、アルの視界に影が出来た。なんだと思い視界を動かすとアルに向かってくるドラゴン。
「っ――!?」
突然の事にアルは立ち止まってしまい、動けず突っ込んでくるドラゴンに目を奪われる。
そして窓ガラスが割れ、ドラゴンがアルの真横に突っ込む。
煙が舞い、アルは目を閉じて咳をする。
「っげほ」
次に目を開けた時、煙の先から赤い何かが見えアルは驚く。
「っ――『シャドウ!!』」
すかさず近くに出来た影の中に潜り込む。潜り込んだ瞬間炎が視界をよぎった。
どっどっどっどっとなる心臓を押さえ、アルは目を見開いたまま呼吸を必死に正そうとする。
だが次の瞬間、どこからともなく魔物が現れた。
鎌を持った幽霊のような魔物はアルに向かって鎌を振り上げる。アルは焦って影から出る。
影の中に入る魔物がいるなんて……! アルは必死に思考を、呼吸を正そうとする――が。
上が赤くなった。
「『フラワーハピネスっ!!!!』茨よ、僕を守れえええ!!!」
そう叫ぶと同時に茨がアルを守るように現れる。それと同時に炎が吐き出される。
火と植物。相性最悪な事が分かっていても、ほんの少し、ほんの少しだけ時間が欲しかったアルは燃え出す茨を見ながら短剣を取り出したその瞬間――。
「風よ! 導け!!」
「斬り――捨てる!!!」
風が火を吹き飛ばし、ドラゴンの頭と体が分かれた。
その様子に呆然としていると誰かがアルの近くに降り立った。
「アル様! 大丈夫か!?」
「てぃ、る様?」
ティルが心配そうな顔でアルに近づいた。そしてアルの後ろからキリの声。
「怪我はない?」
「……あ、大丈夫……だ」
「危なかったな……まさかドラゴンが校舎に入ってくるなんて」
「貴方、ミリヤさんは? まだ合流してないの?」
「あ――ミリヤ、ミリヤさんっ……!!」
「ちょっと!」
ミリヤの事を思い出したアルは手を差し伸べるティルの手を払い、立ち上がって二人の制止の声も聞かず走り出した。
無事でいてくれ。頼む、頼むと願いながらアルは走って、走って、走って――――見てしまった。
「ぁ……う」
「――――ぁ」
目の前で、ミリヤが斬られた瞬間を。
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