第44話
アルは夜中、掲示ボードに向かう。
普段はあまり持たない明かりを持って掲示ボードを照らす。
じっと紙を見つめてから戻ろうとして、窓を見つめる。
ガタガタと窓が揺れ、外の風が強い事が分かった。
「嵐が来そうだな……魔物活性化に加えて、嵐。嫌な予感がする」
そうぽつりと呟いてアルは部屋に戻った。
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「最近風が強くなってきたね。外に行く時肌寒くて……もうすぐ夏なのに、秋みたい」
「そうですね。嵐が近づいているのかもしれません」
三人はいつものように交流広間で雑談をする。
話題は最近の外の様子。
「そういえば、キリさんが僕達に気を付けてって言ってましたねえ」
「そうなの? 何かあるのかな……」
「魔物活性化と繋がっているのかもしれませんね。嵐はドラゴンが作ってる……とか」
「ひゃわあ~~それは怖いね……普通の嵐でありますように!」
ドラゴンの話をだした事にミリヤは体をぶるりと震わせる。
アルは「きっと普通の嵐ですよ」と宥める。
クロスは窓の外を見て心配そうな表情をした。
「クロスさん?」
「雨が降りそうだなあと思いまして~」
「雨は嫌だなあ……湿気で髪が乱れちゃう」
「ミリヤさんは髪が乱れてもかわいいですよ」
「あっっるくん!? いきなり口説かないで!?」
にこりと頬んでアルはミリヤを口説く。
ミリヤはアルの言葉と笑顔に顔を赤らめ「ひえ」と声を漏らした。
クロスはそんな二人の様子を見てクスクスと笑い、テーブルの下から紙をアルに渡した。
「……」
アルは紙を受け取りちらりと見てから、クロスに向かって少し頷いた。クロスはそれにニコリと微笑んだ。
ミリヤは顔を赤らめて顔を隠していた為、二人の様子には気づかなかった。
そして気づかれない内に紙をポケットに入れ、ミリヤを見つめた。
「ミリヤさん、早く返事くださいね」
「えっ……!? ま、まだ待って!!」
「もう夏ですよ」
「うっ……考えるから……まって……」
「ミリヤさんの答えは決まっているでしょう~? 早く返事してあげたらどうですかあ?」
「うううううう……」
ミリヤは二人の言葉に顔を更に赤らめ机に顔を俯かせた。
クロスはそれを見て笑い「早く二人のデート、見たいですねえ」と言った。
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「クロスさん、あの紙はどういう事だ?」
寮に戻った後アルはクロスの部屋を訪れる。
手には交流広間でクロスに渡され紙。
『嫌な予感がするので、あとで僕の部屋に』
紙にはそう書いてあった。
「入ってください。まだ確信は持てないので……」
「……分かった」
二人は部屋に入ってからクロスは口を開いた。
「実は、窓の外に何かが見えた気がしたんです」
「何か?」
「遠かったので確信は持てないのですが、あれはドラゴンの分類かと……」
「……嫌な予感はそれか?」
クロスは不安そうに、心配そうに頷いた。
そして広間で窓の外を見た時に様子を伝えた。
ほんの一瞬、ほんの一瞬だけ空を飛ぶ何かが見えた気がした。でも次の瞬間には見えなくなっていた。クロスは確信がもてなかったからあの場では言えなかったと伝えた。
それを聞いたアルは髪をがしがしと乱し、ため息を吐いた。
「そう遠くない内に学園にも来るかもしれないな……」
「どうでしょう。来ないかもしれませんよお?」
「……そう、だといいんだが。キリの言葉といい、今日の事といい、来そうな気がする」
「それは否定できませんねえ」
アルは、原作でこんな展開あったのかもしれない……でも、思い出せない。とため息を吐いた。
「一応上には伝えておくか……」
「そうですねえ」
アルはクロスの言葉を聞いてから少し雑談してから部屋に戻って行った。
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