第43話

『魔物活性化により、今年の夏は外出許可は出ません』


「え」

「うそ……」


 三人は掲示ボードの前で啞然となった。

 いつもより騒がしい掲示ボード。何だなんだと思い見ると、外出許可なしの文字。


「う、海、楽しみだったのに」

「魔物活性化ですかあ。これは……残念ですね……あ、でもプールは開くみたいですよ!!」

「海……」

「行きたかったなぁ……」


 クロスの言葉にも気にも留めず落ち込む二人に、クロスは額を押さえた。

 アルは初めての海に行けない絶望感を感じ、ミリヤは三人と海に行けなかった悲しみで。


「魔物活性化って何があったんでしょうねえ……学園に乗り込んでこなければいいですがあ。……ほら! お二人さん! 元気出してください! 仕方ないじゃないですかあ!」

「分かってるんですが、思ったよりショックが」

「可愛い水着買いに行こうと思ったのに……」

「学園の水着で我慢しましょうよお。気持ちは分かりますが……」


 落ち込む二人にクロスは慰める。

 そこに声が聞こえた。


「貴方達、そこで何をしてるの?」

「……キリさんに、ティルさん……」

「え、アル様なんで落ち込んでるんだ? というかミリヤさんも……クロス様これどういう状況だ?」

「あれですよお」

「あれ?」


 クロスが掲示ボードを指差した。ティルは指の先を追い、目的のものを見ると苦い表情をした。


「うっわ。外出許可なしか……キリとのデートが台無しじゃないか」

「魔物活性化……ね。確かに最近空気が変な気はしていたけど……ミリヤさんはそういうの感じてない?」


 キリの同じように見てから少し考え込んだ後、ミリヤに問いかけた。


「私? うーん、感じてないかな」

「エルフのあたしが感じてなくて、獣人の貴方が感じてないなんて不思議ね。まあ、用心するのには越したことないわね」


 確か、エルフと獣人は元を辿れば魔物だったよな、何か関係してるのか? とアルは思った。


「あーデートが」

「仕方ないでしょ。貴方達三人も外に行く予定があったのかしら。その様子だと」

「そうです。海に行こうと話をしていまして」

「海ねえ。ここから近い海よね?」

「そこだね~あそこ色んな店もあるから、楽しめるかなって思ってたんだけど」

「結果はこれですがねえ」


 やれやれとクロスは肩を竦める。キリはそれを聞いて悲しそうな表情をした。


「ご愁傷様、同情するわ。それじゃ、あたし達はもう行くわ。またね」

「うん、またね~」

「また機会があれば話そう」

「そうですね」


 二人はそう言って三人から離れた。

 

「学園で楽しめそうな事はしますかあ」


 クロスの言葉に二人は頷いた。

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