第42話

「ミリヤさんがいつまで経っても僕の告白に返事してくれないんだが!!!」

「心の準備ってものがあると思うんですよねえ」

「春に告白して、もう夏だぞ……? なぜ、どうしてなんだ……」

「あ~~~流石にそれは同情します」


 クロスの部屋でアルは机に頭を打ち付けて悲しみの声を出した。

 それを見ながらクロスは紅茶を飲みながら、アルの頭を撫でた。


「脈はあるように見えるんですよねえ。あれですかね? 告白された事を忘れている~とか」

「そんな事あるか普通」

「……ないと思いたいですねえ」

「どうすれば俺のものになってくれるんだ……」

「その発言見方を変えればやばいやつですねえ。ミリヤさんの前では言わないでくださいよお」

「言わない。嫌われたくない」


 ぐすぐすと涙を流しながらアルは俯いたまま言う。

 それを見てクロスはアルに菓子を勧める。アルは頷きもそもそと菓子を食べ始める。

 アルは日課の夜回りの時間まではほぼクロスの部屋で過ごすようになった。

 クロスに完全に心を開いたアルは日々の日常をクロスを言っていた。


「今度海行きますし、その時にちゃんと告白してみては? 案外返事してくれるかもしれませんよお」

「……そうする」

「ほら、菓子を沢山入手したので食べてくださいなあ。悲しい気持ちを洗い流しましょう」

「これで僕の機嫌がよくなるとでも?」

「はいあ~ん」


 キッと睨みつけたアルの口に、クロスは容赦なく菓子を口に突っ込んだ。

 アルはんぐっと喉を詰まらせかけたが、なんとか菓子を食べ始める。

 ぱさぱさとして水気がとられていくことにアルは眉間に皺を寄せる。そこにクロスは水を差しだした。


「――許す……」

「ありがとうございます~」

「それはそうと、海ってどういう事するんだ。行った事ないから分からないんだが」

「遊ぶんですよお。海に入って泳いだり、浜辺で遊んだり」

「……それは、楽しそうだな」

「楽しいですよお。あ、アルさん水着あります?」

「ないな」


 アルの言葉にクロスはあ~と頷く。そして立ち上がり棚から一冊の本を取り出し、アルに見せる。


「なんだこれ」

「水着特集~~。この間新聞部が配っていたので、貰っておきました」

「新聞部。掲示ボードに一週間の情報を貼ってる事だよな」

「そうです。その新聞部ですよお。たま~に色んなクラスをまとめた本や外からの本を出してくれるんですよねえ。これは昨日外から届いたばかりの新刊ですよお」

「そうなのか……外は凄いな」

「外は凄いですよお。この機会に沢山遊びに行きましょう。ああでも魔物には気をつけないといけませんねえ……」


 武器は借りていきましょうかあ。とクロスは言った。

 アルはそれに頷き、水着特集を開き中を見た。


「防御力が低そう」

「水着ですからねえ。遊ぶ物ですから」

「沢山あるんだな。色んな名前があるがこれは?」

「店の名前ですよお。えーと、ここから近い店ならこれですねえ」

「ふうん……」


 アルはぺらぺらと水着を一個一個見ていった。

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