第39話

 アルは夜の校舎を歩く。安静にしろと言われていたが、安静にするのが落ち着かなくなり、気分転換として出歩いていた。

 短剣を上に投げて遊びつつ、周りの警戒を怠らず歩く。

 頭の中でぺリアの事を考える。学園内で死体を処理するのは不味かっただろうか。噂がこれ以上広まるかどうか。噂の元は何処なのか。アルは掲示ボードに向かいながら考える。


「……気にした所で、もう無駄……だろうか」


 はぁとため息を吐きながら掲示ボードを見る。決闘祭が終わった為、前は沢山紙が貼ってあったが、今は数えれる程の数まで減っていた。

 じっと紙を見ながらぺリアの噂が貼られてない事を確認する。ぺリアの事が書いてない事に安堵し戻ろうとした時、ふと気になる紙を見つけた。


『小さな校舎の夜な夜な聞こえる物音について調べてください』


「……物音?」


 じっと紙を見つめ、明日物音について調べてみるか。と頭の片隅に置きつつ寮に戻った。


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 次の日の夜、アルは寮から出て小さな校舎に向かう。

 あの校舎には用具とか部品や何個かの部屋が置いてある場所だったよな……と前回来た時の事を思い出しながら歩く。


「その前に……僕の後ろにいる人は誰だ」

「――バレましたかあ」

「……クロスさん?」


 振り返るとクロスが寝間着の状態でそこにいた。


「アルさんが部屋から出ているのを見かけましてえ、追いかけた感じですねえ。ここに何かあるのですかあ?」


 小さな校舎を見ながらクロスは言う。

 アルじはまさか出ていく所を見られていた事に気づかず、更にその相手がクロスだった事に言葉が一瞬でなくなった。


「えっと、実は……」


 一瞬言葉に詰まったが、すぐにアルはクロスに状況説明をした。

 クロスはうんうんと頷き、話を聞き終わったあと、口を開いた。


「物音、ですかあ……いやですねえ……怖いですねえ……」


 そういう声は少し震えていた。アルは怖いのだろうか? と思った。


「怖いなら戻りますか?」

「い、いえ! 大丈夫ですよお。それに一人で部屋に戻りたくないですねえ……」

「そうですか……では、行きますね」

「はい。ああそうだ、手を繋いでもらっていいですかあ?」


 クロスの言葉にアルはいいですよ。と頷いた。クロスは安心した様子を見せてアルの手を掴んだ。


「不審者がいるのですかねえ……」

「まだ調べていないので分かりません。案外、物音の正体が猫かもしれません」

「それならいいんですがねえ。早く解決しましょう!」


 二人は話しながら校舎の中に入って行った。


 

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