第36話
アル達が椅子に座って決闘を見ていると、背後から騒がしい声が聞こえ始める。なんだ? と振り向くとそこにはアリアとミツの姿。
「だからあの作戦は良くないって言ったんだよ!!」
「はぁ〜?? ウキウキ気分でうちの案に了承したのは誰だったけなぁ!?」
「誰なんだろうな」
「あんたやろがい!!!」
言い合いながら二人はアル達の近くの椅子に座る。
「あの、決闘に集中できないので、喧嘩やめていだけますか」
「アル君! あんたのあの魔法なんなん? 闇ではないやんな?」
「花でもどうぞ。と言ったが、詳しく教えてもらおうか」
アルが声をかけると二人は興味津々の様子でアルに問いかける。
「闇の派生ですよ」
面倒だなと思ったアルは、適当に話を誤魔化した、が。二人はありえないと言った様子でアルに詰め寄る。
「闇の派生で花魔法が使えるなんて聞いたことないで。本当のこと言いや」
「専用魔法をすでに二つある時点で何か隠してるだろ、答えろ」
「それを聞いてはいわかりました。と答える人いると思います?」
探るな殺すぞ。と圧を出しながらアルは笑みを浮かべて二人に言う。
だが二人は引き下がる様子はなく、教えろ。教えろと詰め寄る。
「秘密を探らないでください。いいたくありません」
そしてふとミツがぽつりと呟いた。
「その秘密、行方不明のペリア・リベリアとも関係ありそうだな?」
「え?」
その言葉にアルの表情は凍る。だがすぐに繕い、冷めた目でミツを見る。
「ペリアさんと僕になんの関係が?」
「ペリアが行方不明になる前、貴方と会う約束をした。という噂を耳にしてなぁ」
「はあ。所詮は噂でしょう。それに今はその話は関係ありません」
「会った事は否定しないのか?」
「会いましたよ? ですがその後普通に話して別れましたよ」
探るな、これ以上探るな。とアルはミリヤをちらりと見てから淡々と答える。
アルとって今起きてほしくないのは、ミリヤに拒絶される事。それだけは避けなくては行けない。ペリアを殺した事は隠し通さなくてはいけない。その為なら……。
アルは魔法を使おうと口を開こうとする。
「――ミツ! やめな!」
パンッと音が鳴る。ミツがアリアに頬を叩かれていた。
アリアの表情は焦りが浮かんでおり、深い呼吸を繰り返していた。
「アリア! どういうつもりだ!」
「どうもこうもない! ミツ、ちょおこっちきい!」
アリアはそう言ってミツをその場から連れて行った。
「アルくん、ペリアさんの事……」
「先ほど言ったことが真実です。あの後のペリア様は、分かりません」
「そっ、か」
ミリヤはペリアの事が心配になり、しょんぼりしながら顔を俯かせた。
アルは表情を戻し、きっと無事ですよ。とミリヤを抱きしめた。そしてアルは、いつまで隠し通せるだろうか……と今後の事に不安を覚えた。
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「アリア! さっきのはどういうつもりだ!」
ミツはアリアに向かって怒鳴る。
「あんた、うちが止めんかったら死んでたで」
「は?」
「多分何かしようとしてた。空気が変わったもん。うち、ミツを死なせとうないよ」
アリアがその場にうづくまり、震え始める。
「あれには深追いしない方がええ、こっちの命が危ない。早めに切り上げとけばよかったわ……」
「アリア……あいつは、なんなんだ」
アリアの様子を見て、ミツは汗をかきながら言葉をこぼす。
「わからん、でも、殺すのに躊躇しない人やと思う」
「……謎だらけの評判最悪のミリエル家の息子……あいつは、一体」
ミツは静かに呟いた。
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